かんぽ生命(郵便局)の学資保険は安心して加入できるって本当?評価はどう?
郵便局のグループ会社であるかんぽ生命の学資保険(はじめのかんぽ)は、2016年8月に引き続き、2017年4月にも保険料が値上げされ返戻率が低下しています。
「はじめのかんぽ」は郵便局の窓口で加入できるとあって、一時は学資保険における契約件数1位を誇っていました。
しかし、販売元が日本郵便であるという安心感があるものの、ほとんどのプランで返戻率が100%を下回り元本割れする商品です。
今回はかんぽ生命の販売する学資保険『はじめのかんぽ』が安心とされてきた理由、保険内容についてみていきます。
かんぽ生命の学資保険の人気の秘密は?どこが安心なのか
貯蓄が目的の学資保険において、多くのプランで元本割れをしてしまうにも関わらずかんぽ生命「はじめのかんぽ」が人気である理由は、加入ハードルの低さと会社の保険金支払い能力の高さです。
かんぽ生命は近所の郵便局窓口で加入できる
かんぽ生命の最大の強みは、郵便局窓口で加入手続きが行われているため、勧誘費を抑えながら多くの顧客を確保できることです。
近所の郵便局で説明してもらえるので、民間の保険会社に比べて強引な勧誘も少なく、分からないことも直接窓口で聞くことができ、ネット上や書面だけのやりとりよりも安心して加入することができます。
しかし、郵便業務自体へ民間企業が参入しつつある現在以降、郵便局へ訪れる人の数は減少していくことが予測されます。
また、インターネットの普及でさまざまな保険会社の商品と比較できるようになったため、現在では返戻率のよい他社の学資保険商品に人気が押されてきています。
かんぽ生命は保険金支払い余力が高い
いくら返戻率が高くても、その契約が満期になる前に保険会社が倒産してしまっては意味がありません。
そこで、学資保険や終身生命保険のような長期の払込をする保険を契約する際に確認しておきたいポイントが、引受保険会社の財務状況です。
保険会社の財務状況をチェックする指標の一つにソルベンシーマージン比率というものがあります。
これは保険会社に今後予想を超えた自体が起こった場合にリスク対応できる支払い余力がどれだけあるかを判断するための指標の一つとなっています。
このソルベンシーマージン比率は数字が大きいほど支払い余力が大きいとされ、この数値が200%を下回ると金融庁から早期是正措置命令が出されます。
生命保険協会に掲載された決算情報から平成28年度末の各社におけるソルベンシーマージン比率を比較してみました。
各社のソルベンシーマージン比率(2016年度末) | |
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かんぽ生命 | 1,458.0% |
アフラック | 956.1% |
AIG富士生命 | 1,212.7% |
富国生命保険相互会社 | 1.214.8% |
損保ジャパン日本興亜 ひまわり生命 | 1,573.0% |
かんぽ生命のソルベンシーマージン比率は1,458.0%となっており、学資保険を販売している他の生命保険会社と比べても財務状況は健全と言えます。
評価はどう?「はじめのかんぽ」の3つのコース
かんぽ生命の学資保険『はじめのかんぽ』では、保険金の受け取り方によって以下の3つのコースが設定されています。
契約の大きさを表す基準保険金額は、すべてのコースで50万円から設定することができます。
今回は基準保険金額を200万円としてそれぞれのコースを解説していきます。
また、どのコースを選んでも、保険期間中に契約者(基本的には子どもの両親)が死亡した場合にはその後の保険料払込は免除され、学資祝金と満期保険金が受け取れます。
そして、被保険者(子ども)の死亡時には死亡給付金(死亡保険金)として既払込保険料相当額が支払われます。
①大学入学時に集中して受け取るコース
「大学入学時」学資金準備コース | |
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満期 | 17歳、18歳 |
払込期間 | 12歳、17歳、18歳 |
加入年齢 | 0~12歳 |
受取りパターン | 満期保険金:100% |
18歳の1月に200万円の満期保険金が受け取れる、大学の初年度納付金を準備するためのもっともシンプルなコースです。
最近ではAO入試などで高校3年生の秋に入学金などの支払いを求める大学もあるので、満期を17歳の1月に設定することもできます。
■返戻率〈契約者:30歳男性、被保険者:0歳男性、満期保険金200万円の場合〉
払込期間 | 月額保険料 | 払込保険料総額 | 保険金受取総額 | 返戻率 |
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18歳払込 | 9,760円 | 211万円 | 200万円 | 約94.8% |
12歳払込 | 14,320円 | 206万円 | 200万円 | 約97% |
②大学入学時+小中高入学前に受け取るコース
「小・中・高+大学入学時」学資金準備コース | |
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満期 | 17歳、18歳 |
払込期間 | 12歳、17歳、18歳 |
加入年齢 | 0~3歳 |
受取りパターン | 祝金: 小学校入学前:満期保険金の5% 中学校入学前:満期保険金の10% 高校入学前:満期保険金の15% 満期保険金:100% |
大学入学時に満期保険金を受け取るのに加えて、小・中・高の各学校への入学前の12月に学資祝金を受け取れる、各進学ごとの学資金を準備するコースです。
学資祝金は基準保険金に比例して決定されるので、大学入学時に200万円を受け取るプランでは、小学校入学前に10万円、中学校入学前に20万円、高校入学前に30万円を受け取ることになります。
加入可能年齢は子どもが3歳になるまでです。
■返戻率〈契約者:30歳男性、被保険者:0歳男性、満期保険金200万円の場合〉
払込期間 | 月額保険料 | 払込保険料総額 | 保険金受取総額 | 返戻率 |
---|---|---|---|---|
18歳払込 | 12,740円 | 275万円 | 260万円 | 約94.5% |
12歳払込 | 18,720円 | 270万円 | 260万円 | 約96.2% |
③大学入学から4年に分けて受け取るコース
「大学入学時+在学中」学資金準備コース | |
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満期 | 21歳 |
払込期間 | 12歳、18歳 |
加入年齢 | 0~3歳 |
受取りパターン | 祝金:18歳・19歳・20歳それぞれ25% 満期保険金:25% |
子どもが18歳・19歳・20歳に達した時に学資祝金を、21歳のときに満期保険金を受け取る、毎年の授業料や下宿代など学生生活の諸費用の準備に適したコースです。
大学入学時から4年間、毎年50万円を受け取ることになります。
加入可能年齢は子どもが12歳になるまでです。
■返戻率〈契約者:30歳男性、被保険者:0歳男性、満期保険金200万円の場合〉
払込期間 | 月額保険料 | 払込保険料総額 | 保険金受取総額 | 返戻率 |
---|---|---|---|---|
18歳払込 | 9,700円 | 210万円 | 200万円 | 約95.2% |
12歳払込 | 14,240円 | 205万円 | 200万円 | 約97.5% |
医療特約『その日から』
かんぽ生命の保険は、特約として医療保障を付加することができます。
この医療特約『その日から』では、子どものケガや病気による入院と、入院中の手術に対して以下のように保障されます。
〇入院保障 120日まで
〇120日を超える入院は一時金支払いあり
『その日から』の基準保険金は、本契約である学資保険の基準保険金が限度額となります。
例えば本契約の満期保険金が300万円なら、
〇入院 1日4500円
〇手術 2万2500円~18万円
〇長期入院一時保険金 9万円
となります。ここから減額することはできますが、増額はできません。
少ない保険料で気軽に保障が得られる点は評価できますが、先進医療に対応できるような保障額ではありません。
保障内容が希望とマッチしないなら、多少割高でも別に医療保険を組んだ方が満足度は高くなるでしょう。
当然、学資保険『はじめのかんぽ』に医療特約『その日から』を付けると、保険料が上がり返戻率は下がってしまいます。
なお、自治体によっては出生~学齢期の子ども医療費を無償化しているところもあります。
そういった地域に住んでいるのなら、医療保険を付加する必要性はありません。
かんぽ生命「はじめのかんぽ」学資保険としての評価は低い
かんぽ生命「はじめのかんぽ」では3つの全てのコースにおいて、保険料払込期間を子どもが18歳(または17歳)になるまでと12歳になるまでから選択できます。
毎月の支払保険料を抑えたいときには18歳までを、返戻率を高くしたいときには12歳までを選ぶと良いでしょう。
学資保険は保険料の払い込みを早く終えるほど、また学資の受け取りを先に延ばすほど返戻率が高くなります。
ちなみに、加入時の子どもの年齢が高くなればその分返戻率は低くなるので、早めに加入したほうがお得です。
とは言っても、3つのコースで比較した表をみてみるとどのコースを選んでも返戻率が100%を割っています。
たしかに、かんぽ生命は会社としての財務状況がしっかりしており保険金支払い能力はありますが、貯蓄目的が強い場合は進んでかんぽ生命の学資保険を契約する意味は低いと言えます。
子どものための教育費の貯蓄が学資保険加入の目的であるのなら、返戻率の高い他社の貯蓄型学資保険の方がおすすめです。
医療保障を付けた学資保険に加入したい方には、医療特約『その日から』の保障内容が希望とマッチしているなら、検討してみても良いかもしれません。
その場合には、くれぐれもかんぽ生命をかつての国営事業だったころのイメージで信用せず、冷静な目で他社と比較することをおすすめします。