【2020年 夏ボーナス調査】平均支給額39.5万円、昨対比は14.7%減
- みずほ総合研究所の発表によると、2020年夏の民間企業の一人当たりボーナス支給額は前年比9.2%減と予測されました。その背景には、新型コロナウイルス感染症対策として営業自粛や休業が続き、業績低迷や雇用悪化が深刻化していることが挙げられます。
全国正社員800人を対象に「2020年夏ボーナス調査」を行い、支給額と昨対比の結果から企業が受けたコロナショックの影響を明らかにし、今後の景気回復の兆しと経済再開に向けた課題について監修者のFP吉野裕一氏に考察していただきました。
調査回答者の属性(n=800)
- 性別:男性54.8%/女性45.3%
- 年代:20代26.4%/30代39.8%/40代23.4%/50代8.0%/60代2.5%
- 役職:一般社員・職員74.6%/主任・係長14.9%/課長・次長8.0%/部長・本部長2.0%/代表取締役社長0.5%
- 業種:建設業3.0%/製造業17.4%/電気・ガス・水道業1.5%/交通・運輸業3.0%/情報通信業11.9%/卸売・小売業7.0%/金融・保険業5.0%/不動産業3.5%/飲食業2.0%/宿泊業0.5%/生活関連サービス業11.4%/教育・学習支援業3.5%/医療・福祉17.4%/公務・団体6.0%/その他7.0%
- 勤続年数:新卒2.5%/1年以上~3年未満21.9%/3年以上~5年未満15.4%/5年以上~7年未満15.9%/7年以上~10年未満12.0%/10年以上~15年未満13.9%/15年以上~20年未満8.5%/20年以上~30年未満7.5%/30年以上2.5%
調査1:2020年度 夏ボーナスの支給有無
全国正社員800人(業種・企業規模問わず)に、2020年度の夏ボーナスの支給有無について調査したところ、「支給あり」が73.1%(585人)であり、対して「支給なし」が26.9%(215人)と、4人に1人が支給されていないという結果でした。
支給なしの理由として、「会社の業績が悪いため(コロナによる経営悪化含む)」が66.5%で突出し、次いで「企業規模が小さいため」14.9%、「固定給・年俸制のため」13.0%と続きました。
ただ、支給無しの理由として「会社の業績が悪いため(コロナによる経営悪化含む)」が66%以上あり、外出自粛や緊急事態宣言で業績が悪化している企業が多くあることが分かります。
調査2:2020年度 夏ボーナスの支給額
2020年度の夏ボーナスの支給額について、支給対象者のみ(585人)の平均値は39.5万円、中央値は30万円という結果でした。支給額の内訳では、「10万円以上~20万円未満」が15.9%と最も多く、50万円未満が半数以上を占めています。また、支給なしを含めた全対象者(800人)の平均値は28.9万円でした。
本調査結果での最高支給額は200万円(情報通信業/勤続年数20年以上~30年未満)、最低支給額は1.1万円(製造業/勤続年数3年以上~5年未満)でした。
2020年度 夏ボーナスの支給額
0円(支給なし) | 26.9% |
10万円未満 | 3.0% |
10万円以上~20万円未満 | 15.9% |
20万円以上~30万円未満 | 12.4% |
30万円以上~40万円未満 | 12.9% |
40万円以上~50万円未満 | 10.5% |
50万円以上~60万円未満 | 6.0% |
60万円以上~70万円未満 | 3.5% |
70万円以上~80万円未満 | 1.0% |
80万円以上~90万円未満 | 3.0% |
90万円以上~100万円未満 | 0.5% |
100万円以上~150万円未満 | 3.0% |
150万円以上 | 1.5% |
また、減少率では大企業はマイナス6%ですが、本調査の対象企業では冒頭で記述されている通り昨年よりマイナス14.7%と減少幅が大きく、大企業より中小企業のほうが今回のコロナの影響が大きいことが分かります。
調査3:昨年(2019年度)夏ボーナスとの比較
2019年度の夏ボーナスの支給額について、昨年支給対象者のみ(681人)の平均値は39.1万円、中央値は32.5万円であり、昨対比は85.3%(14.7%減)という結果でした。
<※昨対比の2020年平均値は、昨年支給対象者681人の回答値(0円含む)にて算出>
また、本年支給額との増減内訳では、「増額」24.7%、「同額」30.5%、「減額」44.8%であり、最大増額は40万円(情報通信業)、最大減額は79万円(製造業)であることが明らかになりました。
本調査結果での昨年最高支給額は215万円(製造業/勤続年数30年以上)、最低支給額は2万円(公務・団体職員/勤続年数1年以上~3年未満)でした。
特に最大増額となった情報通信業では、在宅勤務(リモートワーク)の普及によりインターネットの利用者が増えた影響もあり、業績が良くなっていることが分かります。逆に昨年の最大減額となった製造業は、コロナの影響を受けて業績を大きく落としていることも見えてきます。
調査4:2020年夏ボーナスの使い道と昨対比
2020年夏ボーナスの使い道では、「貯金」が53.5%と突出し、昨年の48.1%から5.4ポイント上昇しています。
続いて、「ローン返済」、「投資・金融商品(貯金除く)」、「保険・税金支払い」といった固定費や投資が微増傾向にあり、対して、「遊興費(外食・レジャー費等)」、「被服費(服飾・宝飾品等)」といった趣味・娯楽は微減傾向となっています。
2020年夏ボーナスの使い道 上位5項目
貯金 | 53.5% |
生活費(生活雑貨・日用品 等) | 12.5% |
ローン返済 | 8.6% |
遊興費(外食・レジャー費 等) | 7.7% |
投資・金融商品(貯金除く) | 5.2% |
投資信託協会が公表している投資信託概況では、今回のコロナ禍でも投資信託への流入超が続いているようで、資産運用の長期投資意識も高まっていると感じます。
逆に趣味や娯楽へお金を回す人が減っているのは、“老後2000万円問題”や“人生100年時代”と言われる現代、少しでも将来に備えようと節約志向の人が増えているのではないでしょうか。
調査5:2020年の夏ボーナス支給額に対する評価
2020年の夏ボーナス支給額に対する評価については、「納得できる」35.4%、「やや納得できる」30.4%を合わせて65.8%が納得と回答し、その理由として、「コロナ禍で不安定な中でも供給されたから」が378人と突出し、次いで「昨年の支給額よりも高いから」76人、「査定内容・基準が明確だから」60人と続き、コロナショックによる経済悪化で業績にも影響がある中、支給されるだけでありがたいという人が多く見受けられます。
一方で、納得できないと回答した3割強の理由として、「自身の努力・成果に見合ってないから」が92人、次いで「昨年の支給額よりも低いから」76人と続き、自身の活躍とは裏腹に業績に左右される賞与に不満を感じている人もいます。
しかし、ボーナスの支給額が多くなっている情報通信業の方などは、コロナ禍でも仕事が多くなり、「自身の努力・成果に見合ってないから」と思われた方も多かったのかも分かりません。
調査6:2020年冬ボーナスに対する期待度
2020年の冬ボーナスに対する期待度については、「期待できない」31.4%、「あまり期待できない」38.8%を合わせて70.1%が期待薄と回答し、その理由として、「コロナ不況はこれから本格化すると思うから」が279人と最も多く、次いで「会社業績が不振だから」259人と続き、業績への影響はこれから顕著になると考える人が多く、それが冬ボーナスの期待度に直結しています。
一方で、期待できると回答した3割の理由として、「会社業績が好調だから」が92人、次いで「経済活動が本格的に再開すると思うから」68人と続き、今後の景気回復に期待を寄せる人もいます。
ただ、情報通信業など在宅勤務(リモートワーク)などによる働き方が変化する中で、景気回復は進んでいくと思われ、新たに伸びる業種のボーナス支給額は増えてきそうです。
監修者プロフィール
FP事務所MoneySmith
吉野 裕一
FP事務所MoneySmith
代表 吉野 裕一
人生設計を叶えるための資金計画を幅広い知識でサポートする『FP事務所 Money smith』。代表の吉野氏はローンや年金、資産運用などの資格を多く保有し、相談者の夢や希望に寄り添い、投資からリスクマネジメントまで分かりやすく解説。家計・保険の見直しや教育資金など一人ひとりの状況に合わせて無理のない資産計画を提案する。