【2019年 家計調査】一般世帯の半数が消費税増税後に家計負担が増したと回答
- 令和元年である2019年は、消費税増税など家計負担に影響が生じる改正があり、消費低迷や景気対策に課題が残る一年となりました。
消費税増税以降の家計負担の変化を探るべく、FP益山真一氏監修のもと全国の一般世帯(二人以上)800件を対象に2019年の家計調査を実施し、家計収支からみる今年の景気状況と昨年との比較、そして負担減のための家計の努力を明らかにしました。
調査回答者の属性
- 世帯主の年代:20代12.5%/30代44.5%/40代30.1%/50代7.5%/60代5.4%
- 共働き・専業主婦(主夫)世帯:共働き世帯58.1%/専業主婦(主夫)世帯41.9%
- 世帯人数:2人35.4%/3人30.1%/4人24.4%/5人8.4%/6人以上1.8%
- 居住形態:持ち家(戸建て)43.3%/持ち家(マンション・分譲)7.5%/賃貸(戸建て)3.4%/賃貸(マンション・アパート)44.4%/社宅・寮0.6%/その他0.9%
- 居住地:北海道2.3%/青森県0.4%/岩手県0.3%/宮城県1.0%/秋田県0.1%/山形県0.3%/福島県0.9%/茨城県1.8%/栃木県3.4%/群馬県1.3%/埼玉県4.3%/千葉県7.3%/東京都14.0%/神奈川県7.6%/新潟県1.3%/富山県0.5%/石川県0.6%/福井県0.0%/山梨県0.5%/長野県2.5%/岐阜県0.0%/静岡県1.8%/愛知県3.5%/三重県1.5%/滋賀県1.4%/京都府1.4%/大阪府13.5%/兵庫県5.3%/奈良県0.3%/和歌山県0.5%/鳥取県1.9%/島根県0.0%/岡山県1.3%/広島県4.4%/山口県0.3%/徳島県1.3%/香川県0.5%/愛媛県1.3%/高知県0.4%/福岡県6.3%/佐賀県0.3%/長崎県0.6%/熊本県0.1%/大分県0.9%/宮崎県0.1%/鹿児島県0.6%/沖縄県1.0%
調査1:世帯の年間収入
全国の一般世帯(二人以上)800件を対象に、2019年度の家計調査をしたところ、世帯年収(総額)は以下の通りで、割合が最も高かった回答が「500万円以上~700万円未満」26.0%、次いで「700万円以上~900万円未満」23.9%と、およそ半数が500万円以上~900万円未満を占める結果でした。
また、世帯年収の平均値は761.9万円(7,619,590円)、中央値は690万円(6,900,000円)でした。
世帯年収
300万円未満 | 5.0% |
300万円以上~500万円未満 | 16.8% |
500万円以上~700万円未満 | 26.0% |
700万円以上~900万円未満 | 23.9% |
900万円以上~1,000万円未満 | 6.8% |
1,000万円以上~1,200万円未満 | 7.8% |
1,200万円以上~1,400万円未満 | 9.1% |
1,400万円以上 | 4.8% |
世帯年収には、世帯主収入、配偶者収入、副業収入を含めており、内訳は以下の通りです。
世帯主の年収
300万円未満 | 8.4% |
300万円以上~500万円未満 | 35.4% |
500万円以上~700万円未満 | 30.5% |
700万円以上~900万円未満 | 14.8% |
900万円以上~1,000万円未満 | 1.8% |
1,000万円以上~1,200万円未満 | 4.9% |
1,200万円以上~1,400万円未満 | 4.0% |
1,400万円以上 | 0.4% |
配偶者の年収(共働きの場合のみ)
100万円未満 | 15.9% |
100万円以上~200万円未満 | 26.2% |
200万円以上~300万円未満 | 17.2% |
300万円以上~400万円未満 | 23.0% |
400万円以上~500万円未満 | 11.2% |
500万円以上~600万円未満 | 1.9% |
600万円以上~700万円未満 | 3.2% |
700万円以上 | 1.3% |
世帯の副業年収(世帯主・配偶者問わず)
10万円未満 | 21.7% |
10万円以上~20万円未満 | 18.9% |
20万円以上~30万円未満 | 13.7% |
30万円以上~40万円未満 | 10.8% |
40万円以上~50万円未満 | 8.0% |
50万円以上~80万円未満 | 13.7% |
80万円以上~100万円未満 | 5.2% |
100万円以上 | 8.0% |
また、副業収入がある世帯が多いことも大きなポイントです。金額は多くはありませんが、今後の生活不安の高まり、働き方改革の波を受け、週末起業や副業を始める人が増加する傾向は今後も続くのではないでしょうか。
調査2:世帯の年間消費支出
世帯の年間消費支出については、300万円未満から700万円未満の回答まで大きな差はなく、平均値483.8万円(4,838,853円)、中央値455.3万円(4,553,000円)という結果でした。
消費支出を左右する世帯人数ですが、本調査回答者の割合では、2人世帯35.4%、3人世帯30.1%、4人世帯24.4%で9割を占めており、平均3.12人の消費支出額となります。
世帯の年間消費支出は以下の通りです。
世帯年間消費支出
300万円未満 | 16.8% |
300万円以上~400万円未満 | 17.8% |
400万円以上~500万円未満 | 21.9% |
500万円以上~600万円未満 | 17.6% |
600万円以上~700万円未満 | 14.4% |
700万円以上~900万円未満 | 5.9% |
900万円以上~1,000万円未満 | 1.5% |
1,000万円以上 | 4.3% |
調査3:家計の年間収支(黒字・赤字額)
世帯の年間手取り収入から年間消費支出を引いた家計収支については、全体の91.6%が黒字(プラス)収支、2.0%が分岐(プラスマイナスゼロ)、6.4%が赤字(マイナス)という結果でした。
割合が最も高かった回答が「黒字100万円以上~1500万円未満」20.1%であり、家計年間収支の平均値は黒字125.3万円(1,253,859円)、中央値は黒字100万円(1,000,000円)でした。
世帯の家計年間収支は以下の通りです。
世帯の家計年間収支
80万円以上 | 1.4% |
50万円以上~80万円未満 | 0.9% |
10万円以上~50万円未満 | 3.1% |
10万円未満 | 1.0% |
分岐(プラスマイナス0) | 2.0% |
10万円未満 | 2.8% |
10万円以上~30万円未満 | 11.9% |
30万円以上~50万円未満 | 8.4% |
50万円以上~70万円未満 | 15.0% |
70万円以上~100万円未満 | 3.4% |
100万円以上~150万円未満 | 20.1% |
150万円以上~200万円未満 | 12.5% |
200万円以上~300万円未満 | 9.3% |
300万円以上~500万円未満 | 5.0% |
500万円以上 | 3.4% |
9割以上が黒字収支という結果でしたが、昨年と比較して家計状況はどのように変化しているのか次項(調査4)で調査しました。
調査4:昨年と本年の家計状況比較
昨年との家計状況比較について、最も割合が高かった回答が「変わらない」46.9%であり、「昨年より大幅黒字」4.3%、「昨年よりやや黒字」22.9%と、全体の74.0%が昨年対比で同等以上との結果でした。
対して、「昨年よりやや赤字」16.8%、「昨年より大幅赤字」9.3%と全体の26.0%が昨年対比で赤字であり、前項(調査3)の家計収支では赤字収支の割合が6.4%にもかかわらず、およそ4世帯のうち1世帯が昨年と比べて赤字という実態が明らかになりました。
調査5-1:消費税増税前後の家計負担比較
今年10月に施行された消費税10%への増税前後での家計負担比較について、「負担が非常に増えた」8.8%、「負担がやや増えた」47.8%と合わせて全体の56.5%が負担増加と回答し、次いで「変わらない」41.0%と続くも、消費低迷の緩和施策として導入されたキャッシュレス・ポイント還元事業などで「負担がやや減った」との回答はわずか2.5%に止まりました。
調査5-2:消費税増税前後の家計改善・見直し
さらに消費税増税後から家計改善や見直しについて調査したところ、「家計改善・我慢している」6.8%、「家計見直し・努力している」42.1%と全体の48.9%を占めており、およそ半数の世帯が増税前よりも努力していると回答しました。
対して、「変わらない」42.8%、「無駄遣い・浪費している」8.4%と残り半数が増税後に家計改善や見直しをしておらず、10月の増税からまだ3ヶ月しか経過していないため家計の努力は二極化している傾向です。
今回の増税を契機に、経済対策・キャッシュレス決済の普及を目的に、ポイント還元等が実施されており、積極的に利用している人も多いことでしょう。ただし、デビッド・クルーガー博士の調査によると、現金払いに比べて、キャッシュレス決済になると約23%支出が増えるそうです。
手軽な決済は便利ですし、ポイント還元は有利な制度ですが、無意識のうちに支出が増えてしまっては大変です。
クレジットカードやスマホ決済の利用明細等を確認して、無意識な支出が増えていないかを定期的にチェックしましょう。
家計も健康診断と同じ。定期的にチェックすることで問題を早期発見でき、急激な家計悪化、無意識の赤字拡大も回避しやすくなります。毎月の目標黒字(貯蓄)を決め、残ったお金を使うルールにすると更に効果的です。
調査6-1:節約・削減した支出項目(複数選択可)
前項(調査5)にて「家計改善・見直しをしている」または「変わらない」と回答した733世帯を対象に、節約・削減した支出項目について調査したところ、1位「食費」で375世帯が選択、続く2位の「固定通信費(スマホ料金)」と3.7倍の差をつける結果でした。
また節約だけでなく、「フリマアプリ」や「ポイント活動」といった収入で捻出した回答も目立ち、並々ならぬ家計の努力が伺えます。
節約・削減した支出項目の上位5項目と平均捻出額は以下の通りです。
節約・削減した支出項目と平均捻出額(上位5項目)
1位:食費 | 89,404円 |
2位:固定通信費(スマホ料金) | 87,692円 |
3位:フリマアプリ(収入) | 52,154円 |
4位:水道光熱費 | 39,286円 |
5位:ポイント活動(収入) | 48,750円 |
調査6-2:節約・削減して浮いたお金の使い道(複数回答可)
節約して浮いたお金の使い道については、1位が「貯金」と回答者の約7割が選択するという結果でした。続いて2位に「食費」が入っていますが、平均振分額をみると35,455円であり、節約した捻出額89,404円の半額以下という結果から日ごろ節約してたまに贅沢している姿勢が読み取れます。
金額別で見ると、貯金に続き4位の「教育費」が平均振分額61,538円で2番目に高く、人生の三大資金である「住宅資金(ローン)」「教育資金」「老後資金(貯金)」に振り分ける堅実な家計の資金繰りの実態が明らかになる結果となりました。
節約・削減して浮いたお金の使い道と平均振分額(上位5項目)
1位:貯金 | 74,400円 |
2位:食費 | 35,455円 |
3位:娯楽・交際費 | 47,895円 |
4位:教育費 | 61,538円 |
5位:へそくり | 45,714円 |
また、意識改革・我慢を伴う見直しより、契約の見直しや設備投資を優先しましょう。
何故なら意識改革・我慢を伴わない分、長続きしやすいからです。
具体的には、今回の調査で上位にあがっている通信費や水道光熱費の料金プランの見直しのほか、保険の見直しの見直し等も効果的です。契約の見直しはお金もかかりませんし、一度取り組めば、効果が長続きします。
また、LEDや省エネ家電、節水設備の購入は一時的な出費はありますが、ランニングコストが下がります。
食料品や日用品等は普段からコスパがよいものをという意識をお持ちだと思いますので、必要に応じて「頻度、単価、質」のうち、優先順位が低いものを無理がない範囲で下げることが長続きするポイントです。
今回の調査では、収入を得る手段への取組みも見られます。節約で作りだしたお金を貯蓄に回すほか、自分磨きに使うことも選択肢。「稼ぐ力」を高めることも生活防衛には効果的です。
家計も健康診断と同じ。定期的にチェックすることで問題を早期発見でき、急激な家計悪化、無意識の赤字拡大も回避しやすくなります。毎月の目標黒字(貯蓄)を決め、残ったお金を使うルールにすると更に効果的です。
監修者プロフィール
CFP認定者
消費生活アドバイザー
益山 真一
益山 真一(ますやま しんいち)
CFP認定者、消費生活アドバイザー
人生の3大資金である教育資金、住宅資金、老後資金を効率的に手当てし、人生を楽しむお金を生み出すことをテーマとして、日々、相談や執筆、講演活動を展開。FP資格取得・継続教育、高校・大学の講義のほか、金融機関等の社員研修、投資家向けセミナー、参議院や内閣官房内閣人事局人事局主催のキャリアデザイン研修講師まで幅広く務め、セミナー・研修・講義は2019年12月時点で約3000回。活動理念は「心、カラダ、キャリア、時間、お金」の5つの健康のバランスを考えた最適提案。お客様のライフプランや価値観に基づき、メリット・デメリット・リスク・注意点を伝えながら、1つでも多く「改善できるヒント」を提供するべく活動している。
- 調査方法:インターネット調査
- 調査期間:2019年12月9日~2019年12月15日
- 調査対象:全国一般世帯(二人以上世帯)800件
- 調査監修:FP益山 真一