なぜ利用しない?電子マネーを拒む理由~キャッシュレスの波に乗らない人の認識とは~
- 2019年10月~2020年6月末までの9か月間に限り、経済産業省主導で「キャッシュレス・ポイント還元事業」が実施されます。同施策は増税に伴う消費者負担緩和だけでなく、“消費者の利便性”と“事業者の生産性向上”といった観点も含め、キャッシュレス化推進の一環といえます。
事業者側は加盟店の拡大やサービス・キャンペーンなど多様化している一方で、消費者側は未だ現金主義でキャッシュレス決済を利用しない人も多く、日本のキャッシュレス普及率は諸外国と比較してもまだまだ低いのが現状です。その原因・理由を明らかにし、キャッシュレスへの認識を見直す機会となるよう本調査を実施しました。
1.過去1年以内の電子マネーの利用有無
(クレジットカード/デビット/プリペイドによるカード決済、交通系ICでの交通機関運賃支払い)
全国消費者1000人を対象に過去1年以内の電子マネー利用について調査をしたところ、「利用なし(276人/28%)」と約4人に1人が電子マネーの利用をしていないことが明らかになりました。また、利用なしと回答した消費者の普段利用する決済方法として、「現金(195件/71%)」、次いで「カード決済(81件/29%)」と、“現金派”が多くみられました。
こういった方が「カード決済より電子マネー決済の方が自分にとってお得である」と感じられた場合に、電子マネー決済を利用するようになるのではないでしょうか。
2.電子マネーを利用しない理由
電子マネーを利用しない理由として、「セキュリティが不安・信用していない(291ポイント/18%)」が最も高く、スマートフォンの紛失や盗難時のリスク、情報流出や不正利用などの懸念もあり、利用に対する不安は増加している傾向です。
次いで、「現金で支払いたい(252ポイント/15%)」、「面倒くさい(246ポイント/15%)」、「使い方・登録方法がわからない(174ポイント/11%)」、「使える店舗が少ない・限られている(174ポイント/11%)」の順に回答が多く、上位5項目で7割近くを占める結果となりました。
また、その他に「小銭をきれいに使いきれない事がストレスだから」、「利用しないまま放置していると無効になりそうで不安」といった意見もあり、非利用者にとって現金に対する安心感・信頼感が強いことが伺えます。
不正利用のリスクや登録方法がシステムによってまちまちでわかりづらい、といったセキュリティや利用しやすさといった面ではまだ発展途上の技術と言えます。反面、使い過ぎへの心配についてはチャージ金額を一定にすることで対処可能です。
また、利用可能な店舗についても今後の普及によって、どんどん拡大していくのではないでしょうか。
3.「電子マネー」と聞いて思い浮かぶサービス
「電子マネー」と聞いて思い浮かぶサービスには、昨年12月に実施された“100億円還元キャンペーン”が話題を集めた「PayPay」を挙げる声が圧倒的に多く、電子マネー非利用者にとっても同キャンペーンの印象が強かったとみられます。また、交通系ICとして2001年に誕生した「Suica」もメジャーな電子マネーとして認知度が高いといえます。
しかし、2番目に票の多い「Suica」と並んで「思い浮かばない」という回答が上位に入り、非利用者にとって電子マネーへの関心が低いことも伺える結果となりました。
発行手数料/年会費 | |||
利用可能店舗数 | |||
決済方法 | カード スマホ読み取り機にかざす | スマホアプリ画面のバーコードを提示 | カード スマホ読み取り機にかざす |
利用額の支払方法 |
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ポイント還元率 | |||
サービス代表例 | Suica、nanaco、WAON、楽天Edy | PayPay、楽天ペイ、LINE Pay、d払い | iD、QUICPay |
運営会社 | PayPay株式会社 |
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サービス開始日 | 2018年10月 |
対象年齢 | 全年齢対象 |
入会金(発行費)/年会費 | 無料/無料 |
利用可能店舗数 | 100万店 |
利用限度額(1ヶ月あたり) | 200万円※チャージ残高利用の場合 |
ポイント還元率 | 1.5% |
キャッシュレス・消費者還元制度対象 | 〇 |
支払いタイミング | 前払い(銀行口座・セブン銀行ATM・ヤフーカードなど) 後払い(クレジットカード) |
決済方法 | モバイル決済 |
公式サイト | PayPay |
運営会社 | 東日本旅客鉄道株式会社 |
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サービス開始日 | 2001年11月 |
対象年齢 | 12歳~(小学生を除く)※但し小児用Suicaあり |
入会金(発行費)/年会費 | 500円(カード返却時返金)/無料 |
利用可能店舗数 | 47万店 |
利用限度額(1ヶ月あたり) | なし |
ポイント還元率 | なし |
キャッシュレス・消費者還元制度対象 | 〇 |
支払いタイミング | 前払い(駅券売機、コンビニ、セブン銀行ATMなど) |
決済方法 | カード払い/モバイル決済 |
公式サイト | Suica |
4.10月の消費税増税によるポイント還元事業の認識度
実施期間 | 2019年10月1日~2020年6月30日(9か月間) |
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還元率 | 5%(中小小売/飲食/宿泊 等) 2%(コンビニエンスストア/外食/ガソリンスタンド 等) |
対象店舗 | 「CASHLESS」のマークがついた対象店舗 出典:キャッシュレス消費者還元事業 |
決済方法 | キャッシュレス決済 クレジットカード/デビットカード/電子マネー(プリペイド)/QRコード 等 ※本事業に登録されている決済サービスのみ対象 |
キャッシュレス・ポイント還元事業は、2019年10月1日の消費税率引上げに伴い、需要平準化対策として、キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便性向上の観点も含め、消費税率引上げ後の9か月間に限り、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援するものです。
出典:キャッシュレス・ポイント還元事業の概要-経済産業省
5.今後、電子マネーを利用したいですか
10月から9か月間施行予定の「消費増税に伴う、キャッシュレス・ポイント還元事業」について調査したところ、「知っている(123人/45%)」、「聞いたことはあるが内容はよく知らない(99人/36%)」と、およそ8割が認識しているにも関わらず、「今後電子マネーを利用したい」と回答したのは3割以下という結果でした。電子マネー非利用者へ推進していくには、調査2で挙げた「セキュリティ対策」、「現金よりも利便性がある」、「利用店舗の拡大」の課題をクリアしていく必要が大きいといえます。
6.現金とキャッシュレス決済どちらが便利だと思いますか
調査5において、「今後、電子マネーを利用したい」と回答したのは3割以下にもかかわらず、現金とキャッシュレスどちらが便利がという問いに対しては「現金(105件/38%)」、「キャッシュレス決済(108件/39%)」と同等の結果となりました。
やはり、2020東京オリンピックを目前に政府がキャッシュレス化の推進をしているだけあって、時代の波を感じている方も多いのではないでしょうか。消費増税に伴うポイント還元事業をきっかけに、キャッシュレス決済は普及していき、その利便性も浸透していくと思われます。
この機会に、“現金派”である非利用者も電子マネーに向き合い、自身のお金の流れを可視化して効率の良い“お金”の使い方をしてみてはいかがでしょうか。
FP監修コメント
しかしその反面、不正利用の問題がたびたび話題となり、電子マネー決済がもつセキュリティ面の不安が大きくクローズアップされています。
予めお金をチャージし速やかに決済ができる電子マネーは、支出管理のしやすさとその決済スピードから、今後も利用者が拡大してくものと思われますが、決済手段の主流となるには現在の利便性は損なわないまま、不正利用されにくい仕組みを導入するなど、セキュリティ面の向上が最大の課題となります。
保険や証券、不動産等の金融商品は一切販売しないファイナンシャルプランナー(FP)会社。2019年9月現在、さまざまなバックボーンを持つ10名以上のFPが所属している。家計の相談、執筆監修、セミナー講師、法人向けコンサルティング等、実績多数。FP会社で数少ない中小企業庁認定 経営革新等支援機関。
【HP:FPサテライト株式会社】