ビックダディ

ビックダディさんにお金のことをアレコレ聞いてみた

連載マネーぶっちゃけトーク

まねーぶディレクター最上天晴が、あんな人やこんな人の<お金>にまつわる本音にとことん迫る、直撃インタビュー! 今回登場するのは、ビッグダディこと林下清志さん。長年に渡ってテレビ朝日系の人気ドキュメントバラエティに家族ぐるみで出演、決してタレントではないにもかかわらず、日本一有名な一般人と評されることもある。そんなビッグダディが語る、マネーについての驚愕の体験談。そこから生まれた哲学とは?

最初の給与は3万円の「お小遣い」だった

最上天晴
最上天晴
2020年1月に、四女の都美さんが出産されたとお聞きしました。
おめでとうございます。お孫さんは現在、何人おられるのですか?
ビッグダディ
ビッグダディ
ありがとうございます。孫はまだ2人めなんですが、年内にあと2人くらいは増えそうですし、子どもたちも20代半ばにさしかかってきてますので、ここからはどんどん大量生産されていくのかなと(笑)。
最上天晴
最上天晴
そうなってくると、おじいちゃんとしてはお年玉とか、なかなか悩ましいことにもなりそうですが。
ビッグダディ
ビッグダディ

いっさい考えてません。最初からそのように子どもたちにも言ってあります。お年玉もお祝いも何もしないじいさんで行くぞと(苦笑)。

私自身、11人兄妹の10番目でして、たとえば自分の最初の子のことを親と電話で話してる時「ほら、名前なんつったっけお前のいちばん上の子?」とか「あれ? 上の子は男だっけ女だっけ?」とか言われてしまうような感じだったわけです。

だからまあ、平等に接することができないなら、初めから何もしない、と決めておくほうがいいなと。

最上天晴
最上天晴
お子さんたちも、そのあたりは納得して。
ビッグダディ
ビッグダディ
ウチの親父は、逆さまにして振っても何も出てこないって、子どもたちは肌で理解してますからね。そもそも子どもが親に頼るのは、頼れる親って前提があるからでしょ(笑)。
最上天晴
最上天晴
では、子育て真っ最中のころ、お小遣いはどうしておられたのですか。
ビッグダディ
ビッグダディ
いや、当時は小遣いなんて、私自身もゼロですからね! ははは。皆さん勘違いしてますけど、あれだけ番組で露出してたらお礼とか報酬も相当あっただろうって言われることもあるんですが、当時、120円で缶コーヒー買うか小麦粉1kg買うか、迷ったあげく小麦粉を選ぶ、なんてことがごく普通の日常でしたから。考えてみれば、私は人生を通じて、お金ってちゃんと持ったことないんですよねえ。
最上天晴
最上天晴
いちばん最初に稼いだお金というのは、国家資格を持っておられる、柔道整復師としての接骨院などでの給与ということになるのでしょうか。
ビッグダディ
ビッグダディ
1986年、21歳で内弟子に入った接骨院で最初にもらった給料が3万円でした。高校を卒業して、専門学校に通って、そこを出て内弟子。ご飯も寝る場所も保障されていました。でも給料とは言わずに「ハイ、今月のお小遣い」って3万円をもらっていた。2年目で倍、3年目で3倍で9万円ほどいただいて。その時点で24歳だった。
最上天晴
最上天晴
世の中はバブル景気に向かっていた時代かと思います。失礼ながら、なんというか、その給与の額に納得感はありましたか?
ビッグダディ
ビッグダディ
当時、通いの外弟子さんたちは従業員扱いというか、20万円近くもらっていたはずですが、師匠が弟子として扱い、教えてくれるのは内弟子だけ。本当に住み込みの弟子ですから、そういうものだと思ってましたし、給料が少ないとか考えたこともなかったし、プライドも持ってましたよ。ただ、最初の「お小遣い」は税金や健康保険料でほぼ消えちゃった記憶があります(苦笑)。
最上天晴
最上天晴
よく、それで納得していましたね(汗)
ビッグダディ
ビッグダディ
たまーに喫茶店でコーヒーを飲むのが贅沢というくらいで、自由になる時間もなかったわけですから。庭掃除なんかを終えて、師匠の奥様から「ご苦労さま、お茶代ね」といただく2000円、3000円の有り難みも教えてもらえました。
最上天晴
最上天晴
弟子として、その接骨院では仕事に対する誇りまで教わったということですね。
ビッグダディ
ビッグダディ
世の中のことなんて何も知らない若造が、きちんと仕事と社会というものに接したわけですから。いろいろ幅広く教わった、というか生活の中で身に付けさせてもらいました。女性に対する考え方なんかも含めてね。
最上天晴
最上天晴
そうなんですね(笑)。ちなみに、それはどのような考え方だったのですか?
ビッグダディ
ビッグダディ
女性に対して一生懸命になれない奴が、仕事に一生懸命になれるはずがない、という本質的なこと。女好きは男なんだから良いとしても、女にだらしないのはいかんとか。そういう基本的なことですね。当時はよく納得できない部分もあったのですが、やはり30歳過ぎるあたりに、確かにその通りだなあと思い当たるような出来事もあったり。だから、人生の先輩が語る内容に対しては、まず黙って聞いてみることも本当に大事なんですよ(笑)
最上天晴
最上天晴
その接骨院には、全部で何年くらい在籍したのですか。
ビッグダディ
ビッグダディ
いや、なんか偉そうに語ってしまいましたが、実は3年目に逃げ出してしまいました。師匠の大事な一人娘に手を出してしまって、ほぼ夜逃げです(苦笑)。師匠は仕事に対して非常に厳格で評価も高く、その接骨院は「柔整師の虎の穴」とか呼ばれている恐いところだったのですが。いやあ、若い男って凄いというかどうしようもないというか…。

年収4000万円なのに借金も4000万円?

最上天晴
最上天晴
逃げ出した先は、どこだったのですか。
ビッグダディ
ビッグダディ
とりあえず新幹線で上野駅まで逃げました。手元に残ったのは400円で、学生時代に200円が5000円になった経験からパチンコ行ったら、もうあっというまに無一文。仕方がないから駅で寝てたら、いわゆる手配師に声をかけられまして、仕事あるし着るものも貸すし寝るところも飯もあるぞ、という話で。何も考えずについて行った先が、これまたいわゆるタコ部屋でした。
最上天晴
最上天晴
うわあ。逃げた先がタコ部屋ですか…。
ビッグダディ
ビッグダディ
とにかく劣悪な環境で、一日工事現場で働いて1500円。額面上は8000円とかあるんでしょうけど、布団レンタル料とか食事代とかでどんどん引かれるわけです。それでも自分は酒を飲まないからまだ1500円でしたけど、飲む連中は毎日ほぼ残金ゼロ。
最上天晴
最上天晴
そんな状況であっても、なかなか脱出するのは難しいんですよね?
ビッグダディ
ビッグダディ
逃げるまでに、結局半年ほどかかりました。そこも夜逃げというか、もう脱走状態ですけどね(苦笑)。そこから先輩に頼み込んで、どうにかまた柔整師の世界に戻れました。静岡で、2人目の師匠につくことができた。ま、その師匠が億という単位の借金を背負っていたりもしたんですけど。
最上天晴
最上天晴
えええ? どういうことですか。
ビッグダディ
ビッグダディ
とにかく借金があってですね。だから接骨院を私の名義にして任すということで。だから当時、私は毎月、300万円から400万円の収入があることになっていたんですね。実際は18万円しかもらってませんでしたけど(苦笑)。
最上天晴
最上天晴
残りはその2番目の師匠のものに?
ビッグダディ
ビッグダディ
ですから生涯で最高の収入を得ていたことになりますね。あくまで数字上は、年収で4000万円超えですからね。クルマ買いたいなあと銀行に相談に行ったら、即貸してくれましたからね。実際は生活はトントンで厳しいのに、銀行からしたら、かなりの大口顧客なわけです。不思議な感じはしましたね。でも、結局その師匠に、保証人のハンコを捺させられて、借金をドーンと背負うことになってしまったんですけどね。
最上天晴
最上天晴
ああああ。ちなみにいくらくらいの額ですか?
ビッグダディ
ビッグダディ
4000万円。月々36万円ずつ10年ほどかけて、ちゃんと返しましたよ。書類上は私の借金になっている、なるほどじゃあこんなもんは働いて返していけばいいか、と。若さもあったんで、そんな感じで深刻にならずに。また実際に、けっこう稼げましたから。
最上天晴
最上天晴
なるほど・・・
ビッグダディ
ビッグダディ
でも、返済し終えた時点で、もうこれからは経済活動は必要最小限にしようと思ったんですね。食っていければいいや、と。あとはゲップが出るくらい、とにかくちゃんと子どもたちと一緒に過ごそうと決めた。
最上天晴
最上天晴
返済し終えるまでの間、がんばって働きすぎて、なかなかお子さんたちとの時間が取れなかったということですか。そういう意味では、実はお金に振り回されていた期間も長かったなあ、ということになりますか?
ビッグダディ
ビッグダディ
客観的に見たらそうなのかもしれません。でも苦労したとは正直あまり思っていないんですよ。どこか因果応報というか、ええっいいの?という思いもしてます。仕事を辞めて、当時の嫁の親から生活費援助してもらって食いつなぐような時期もありましたが、そういう時に患者さんの建設会社の人が、じゃあ仕事場作ってやるよ、って何の保証も取らず、口約束だけで500万円かけて治療室作ってくれて、医療機械の業者さんも、輸送量だけで入れてくれたりね。

思わぬ火事で失った現金600万円で知ったこと

最上天晴
最上天晴
先ほどもチラリと話に出ましたが、テレビ番組が始まってから、出演料はどのくらいだったのですか。
ビッグダディ
ビッグダディ
これはテレ朝さんに確認してもらってもいいのですが、出演料はもらってないんですよ。一銭も要らないから、オレに一切命令しないでくれよ、という約束でやってましたから。なぜかと言えば、子どもたちに舐められたくなかった。金のために親父がペコペコ言うこと聞いてる様子なんて見せたくなかったんですよね。
最上天晴
最上天晴
なるほど、そうだったんですか! なんともかっこいい親父さんですね!
ビッグダディ
ビッグダディ
ただし、番組は8年続いたんですが、最後の2年はお金もらってました(笑)。今まで全然違う人生を歩んできた美奈子という新しい嫁の人生まで公開することになる、という理由があったからです。でも、番組1本につき50万円。それ以上もらうと、やっぱり気持ち悪いよな、という判断でしたね。
最上天晴
最上天晴
でも、番組で知名度や人気が上がったことから、著書での収入や、講演会、トークショーなどでの収入も生まれてきたかと思います。
ビッグダディ
ビッグダディ
本はぶっちゃけ12万部ほど売れて、ある日突然、1000万円が口座に振り込まれてきました。そんな金、見たこともないから、とりあえず全額を引き出して、四畳半を締め切って子どもらと一緒に帯封破ってイエーイとか遊んでみたりしました(笑)。
最上天晴
最上天晴
そのお金はどのようにお使いになったんですか?
ビッグダディ
ビッグダディ
それまでの人生で都合3回、私のことを助けてくれたことのある大恩人の友だちが、たまたまそのタイミングで仕事でヘマして、400万円貸してくれと。宅急便で現金を送りましたね。大概のことはまあなんとかなるよ、と構えている方だと自分でも思うんですが、荷物が届いたという連絡が来るまで、あれは本当にドキドキしました(苦笑)。
最上天晴
最上天晴
それで、残金600万円はどのように…?
ビッグダディ
ビッグダディ
これは、私が基本的に銀行に金を預けておく習慣がない、単純にそのせいなんですが、家にそのまま保管しておいた。そしたら、2014年に火事で全部焼けましたね。どうにも金が居つかない。ははは。
最上天晴
最上天晴
えええええ? 600万円全部ですか?
ビッグダディ
ビッグダディ
もうちょっと多くあったはずです。でも、あの火事で思い知ったのは、自分で思うほど人間は自分のことをよくわかってない、ということ。凄く私は自分が冷静なつもりでいたんですよ。起きろ火事だ逃げろ逃げろ、って子どもらを避難させて。明け方5時半で、次男が遅くまで飲んでてなかなか起きなくて、本当にギリギリで外に逃げた。次男はその時、自分がくるまってた毛布抱えてて、それ見て「もっと他に持ち出すもんあっただろ」とか笑ったりしてたんです。で、それから現場検証だのなんだので4時間か5時間くらい経ってから、ようやく「あれ、そういえば金置いてたな」と思い出した。
最上天晴
最上天晴
それは、やはりご自分だけでなく、家族の生命に関わるとんでもない緊急事態ですから、仕方ないところもあるのでは。
ビッグダディ
ビッグダディ
でもね、自分では、オレは何が起きても慌てる人間じゃないと思ってんですよ。なのに、ほんの1、2メートル横にあったはずの金のこと、まったく頭に浮かばなかった。現場検証でも、もう跡形もなかった。帯封切ってなければまだ燃え残ってたかもしれないらしいんですが、封切って段ボールに入れてたんです。わざわざ燃えやすい環境を整えてしまった(苦笑)。どうにも金が居つかないようにできてるんでしょう。
最上天晴
最上天晴
以前、著書で読んだのですが、ZIPPOがお好きで、安く仕入れて高く売る、みたいなこともされていたと書いてあったように思います。
ビッグダディ
ビッグダディ
いや、あれは転売して儲けよう、とかじゃなくて。たまたま好きだったから知識があっただけ。釣具店で埃かぶってた人気のZIPPOを発見してまとめ買いしたりってことはありましたけど、まあ人生で唯一のコレクションを楽しんでいた時期というか。基本、ほとんど物欲はなくて、クルマにも服にもこだわりは全然ないんですよ。本当にZIPPOくらい。でも、にっちもさっちもいかなくなって、岩手に帰る資金の足しにとZIPPOを売ったら、家族全員で引っ越す費用は作れたんです。決して無駄な道楽ではなかったんだなあと思います。

お金は空気。どうにでもなるし、なんとでもなる

最上天晴
最上天晴
ダディさんにとって、お金ってどんな存在なんですか。
ビッグダディ
ビッグダディ
空気みたいなものですかね。なくなったら困るし、欠かせないものではありますが、自分としては、振り回されたという感覚は持っていません。それは、お金をどうにか手に入れてやろう、儲けてやろう、とか思って行動したことがないからかもしれない。出世欲も名誉欲もない。55歳にして若干、自分の中にまだ確認できる性欲がうっとおしいくらいで(笑)。だから、金持ちに対して媚びへつらう必要もないし、その歳でそんな稼いでるのか、偉いなあって若い人にだって素直に言える。経済活動を必要最小限でいいと決めて、そういう暮らしをいったん経験してみたことで、気に入らない仕事をしなくてもいいと気づけた。これは大きな収穫だったと思います。
最上天晴
最上天晴
お話をうかがっていると、ダディさんはある意味、お金から解放されている感じがします。お子さんたちも、ある程度、そういった気質を引き継いでいたりするものなのでしょうか。
ビッグダディ
ビッグダディ
お金に関して頓着ないところは、わりと似ているかもしれません。たとえば兄妹の誰かが何かやらかして金が必要だってなったら、私もそうですが、今これだけ出せるからってみんながダーッと提供する。家庭環境はエッセンスでしかないから、結局は本人の資質なのかもしれませんけど。こういう風に育てよう、と理想を思い描いて育てたりはしてこなかった。それじゃ子育て、つまらないですから。母親はずーっと親ですけど、父親というのは、いちばん身近な人生の先輩でしかない。大人ぶってみせてるだけで、頭の中身なんていまだ小学校5年生のクソガキみたいなもんですから(笑)。
最上天晴
最上天晴
一般の若者の間では、経済力を理由に、なかなか結婚や子育てに踏み切れないという層も増えています。社会的な問題という側面もありますが、ダディさんから何かアドバイスするとしたら。
ビッグダディ
ビッグダディ
うーん、正直、バカじゃないのかと思いますよね(笑)。ウチは高校の制服とか一切、新しいの買ったことありませんよ。全部、もらいもの。特に長男は、高校生なのに中学のジャージ着て体育参加してましたから。もちろんちゃんと学校側に説明しました。10万円とかする教科書を買えず、同級生から借りてコピーして、それを教科書にして授業を受けてたり。それでも子どもは育つ。子育てはできるんですよ。どうにでもなるし、なんとでもなる。子育ての基本というか、最低限の責任は、三度のメシをとにかくちゃんと食わせることです。それでも余裕があれば、誕生日にケーキを買うとか、もちろんあってもいいですけどね
最上天晴
最上天晴
まずは、ミニマムなことから考えていけということですね。
ビッグダディ
ビッグダディ
子どもが増えない昨今の世相の最大の理由は、実は子どもが生まれたら、親になる自分たちのこれまでの暮らしがちょっと大変になるから。基本それだけだと思うんです。もし子どもができたらゴルフ行けないとか、2人目だからクルマ変えなきゃならないとか、そういうことをつい前もって考えてしまって、臆病になっている。つまり、今の生活のグレードを維持することが優先してしまうんでしょう。
最上天晴
最上天晴
なるほど。そういう面は確かにありますよね。
ビッグダディ
ビッグダディ
本来、子どもが育っていくこと自体、もの凄く楽しいし、嬉しいこと。これは先輩として、声を大にして伝えたいですね。お金は空気ですから、呼吸困難になるほどゼロに近づいたらそれは大変ですが、いざとなったら、どうにでもなるし、なんとでもなる。大事なことなので2回言いました(笑)。
サイフの中身、拝見させてください!

現在の住まいは、店長としての仕事場であるMusic & Dining Delimu(デリム)まで、徒歩で通える距離。サイフの中身は約1800円ほど。必要最低限のミニマムな経済活動は実はここにもあらわれている?「ははは。いや、この小銭入れだけじゃないですよ? ちゃんと交通系電子マネーも持ってて自販機とかで使ってます!」と豪快に笑う林下さん

プロフィール

林下清志(はやしした・きよし)1965年生まれ。柔道整復師、実業家。高校卒業後、専門学校を経て、柔整師として86年より接骨院にて働きはじめる。2006年よりスタートしたテレビ朝日系『痛快!ビッグダディ』で一躍、時の人となり一般にも広く知られる存在となった。7回の結婚と離婚を繰り返し、時にシングルファザーとして奮闘しながら、大家族を牽引。現在、江東区内の飲食店の店長を務める一方、不定期のトークショーなどにも出演している


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