2017年から生命保険料が高くなる!?保険加入は急ぐべきか
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの横山です(ねこのてFP事務所 代表)。
来年(2017年)以降、生命保険の保険料が改訂されると予想されています。
その結果、保険料が値上がりとなる商品もあり、保険の加入や見直しを急ぐべきかどうかが気になるところです。
しかし、保険料の総額を考えると、保険は高い買い物ですから、加入を急ぐべきかどうかもじっくり考えるべきなのです。
どのような改定が起きるのか、どう対策をとるべきかを、今のうちから知っておきましょう。
生命保険料改訂の原因は“保険会社が設定する3つのコスト”
生命保険料は、3つの数値をもとにして計算されています。
それは、「予定死亡率」・「予定利率」・「予定事業費率」の3つです。
これらは生命保険の保険料を算定するためのもので、
- 予定死亡率:保険の加入者が死亡する予想確率
- 予定利率:支払われた保険料の予想運用収益
- 予定事業費率:保険会社が事業を行うための予想コスト
を意味します。
この数値は保険会社ごとに設定されますが、おおまかな動きはどの会社も共通しており、今後2020年までに2度の保険料改定が行われると予想されています。
2017年の予定利率引き下げで大きく値上がりするのは、どの保険?
現在のところ、2017年4月ごろから、低金利の影響で予定利率が引き下げられ、一部商品の保険料値上げが予想されています。
予定利率が低下するということは、加入者が支払った保険料を運用して得られる利益が減ることになります。
そのため、同じ保険金を支払うための保険料を上げなければならなくなるのです。
集めた保険料は資産運用されているため、予定利率の引き下げは、すべての生命保険が値上がりする要因となります。
ただ、掛け捨てタイプの保険については影響が小さいため、定期保険や医療特約の保険料が大きく上がる可能性は低いでしょう。
しかし、貯蓄性の高い終身保険・養老保険・個人年金保険などについては、大きく値上がりする可能性があります。
【医療・介護の特約保険料】は長寿化の影響で値上げの可能性も
2020年までに、予定死亡率を計算する基準とされる「標準生命表」が改訂される予定です。
長寿化が進んでいるため改訂されるもので、その影響で値上げされるもの、値下げされるものが出てくると言われています。
長寿化が進むと、医療や介護が必要となるケースが増えると考えられます。
生命保険は、医療や介護にも備えられるように「医療特約」や「介護特約」をつけることができますが、その特約保険料が値上げされる可能性があります(生命保険ではありませんが医療保険・介護保険についても同様です)。
一方、長寿化が進むということは、死亡する可能性が下がっていると言いかえることができます。
そのため、死亡に備える掛け捨ての保険については保険料が下がると予想されています。
具体的には、定期保険や収入保障保険といったものがその対象です。
値上げが予想される保険でも、加入を急いではいけない!
では、保険料が上がってしまう前に加入を急いだほうがいいのかというと、答えは「No」です。
その理由を2つお話しします。
理由①生命保険は「高い買い物」だから
「保険は人生で2番目に高い買い物だ」と言う人もいます。
実際、毎月1万円の保険料を30年間支払うとすると総支払保険料は360万円にも上るため、場合によっては自動車よりも高くなると言うこともできるでしょう(注1)。
それだけ高いものなのだから、慎重に考えるべきなのです。
保険料が値上げされてしまうからと、すすめられるままに加入してしまうと、保障が多すぎたり足りなかったりするかもしれません。
最近の貯蓄性のある保険は、解約返戻金を低く抑えて安い保険料を実現しているものも多く、中途解約しようとするとかなり損をしてしまうものも少なくないので気をつける必要があります。
(注1)逆に、「終身保険などなら必ず保険金が支払われるので高くない」と言う人もいます。
ただ、「今使うことができるお金が減る」ということには変わりありません。
そういう意味では、(2番目かどうかは別として)「高い買い物」をしているのは事実だと言えるでしょう。
理由②信頼できる保険加入先が見極められるから
もうひとつは、あなた自身よりも自分のことを優先して考えている保険外交員や保険代理店をあぶりだすことができるというものです。
保険料が値上がりすることが決まると、どの販売員も「今のうちに加入する方が得だ」と話すでしょう。
しかし、それを何度も繰り返すようであれば、あなたのことよりも自分の営業成績が気になっているのかもしれません。
また、すすめられている保険が「『長期間にわたる定期保険特約』がついた終身保険」といった、標準生命表の改定で値下がりする部分が含まれていそうな保険であれば、必ずしも急いで加入するのが正解とは言い切れません。
加入を急かしてくるかどうかと提案する保険内容は、「信用に値する販売員か」を判断する材料とすることができるでしょう。
加入は急がなくても、「加入の検討」は急ぎましょう!
加入は急がなくてもいいのですが、「加入するかどうかを考える」のは早くから始めるに越したことはありません。
保険に加入するにあたって一番大切なことは「必要な保障を確保すること」です。
可能な限り、保障が多すぎず少なすぎないベストな保険を選びたいところですが、どんな保障が必要かはすぐに判断できることではありません。
現在と将来の収入、子供の教育費なども含めた支出、老後に向けての貯蓄計画などについてもしっかり考えておきたいところです。
こういったことを考えるのにはとても時間と労力がかかります。
けれども、考えた分だけ適切な保障内容を見出すことができるはずです。
自分で考えるだけでなく、ファイナンシャルプランナーなどのプロの意見を参考にするのもいいでしょう(ただ、聞いたアドバイスを鵜呑みにはせず、それを参考にして自分で結論を出すようにしましょう)。
その上で、納得のいく保険が見つからない場合は無理に加入しなくてもよいのです。
値下げを待ってから加入するのは必ずしも正しくはありません
とはいえ、全く保険に加入しないのは心配だという方も多いでしょう。
そこで最後に、「自分に必要な保障がなにか」がわかったあとで注意すべきことをお話しします。
加入しておくべき保険に、定期保険や医療特約など、将来の値下げが期待できるものがあった場合の対処方法です。
これらの保険は、値下げを待ってから加入するのが正解とは言い切れません。
掛け捨てタイプの保険は、少ない保険料で大きな保障を得られるのが特徴です。
保障が必要なのに加入しないでいるのはリスクを抱えたままでは、万が一のことがあった場合のダメージが大きくなってしまいます。
そこで、今の段階で短期間でも加入しておき、実際に保険料が下がってきてから見直しをするという考え方もあります。
掛け捨てタイプの保険なので、中途解約で解約返戻金が減るといった心配をする必要はありません。
まとめ
ここまで説明してきたように、現状では2段階に分けての保険料改定が予想されています。
ただ、2016年の11月になって金利が上昇しているなど、保険料を計算する基本となる社会環境は日々変化を続けています。
実際に、いつどのように保険料が改訂されるかは、まだ確定していません。
事業運営に関するコストを削減することで、値上げを少しでも回避しようとする保険会社も出てくるかもしれません。
現段階では、あなた自身に必要な保障がどのようなものかをじっくりと考えながら、保険料が改定されることが決まった場合に、素早く適切に行動できるよう準備しておくことをおすすめします。
※掲載記事の内容は2016年12月6日時点のものです。
執筆者
横山 研太郎ねこのてFP事務所代表
富士通株式会社退職後、メーカーの経営サポート等を行う。 現在は、ファイナンシャル・プランナーとして、資産運用を柱としたアドバイスをするだけでなく、学生への金融教育にも取り組んでいる。