JA終身共済の保障内容と解約時の注意点まとめ
保険について検討していると、「保険」に混じって「共済」という語を目にします。
共済(正確には「共済保険」)とは、ある団体や組合に属する人々の助け合いのためにできたもので、保険会社が販売する保険とは、そもそも成り立ちからして違います。
ですが、毎月掛け金(保険料のこと)を支払って万一の時にまとまったお金を受け取るという仕組みには、両者に違いがありません。
共済は助け合い(非営利)で成り立っているので、掛け金が比較的安価な傾向がある一方で、種類が少ないというデメリットが挙げられます。
しかし、JA(農業協同組合)が運営する「JA共済」は種類も豊富で、県民共済やCO・OP共済にはない終身共済保険も取り扱っています。
今回はこの、JA終身共済にメスを入れてみたいと思います!
JA終身共済のしくみは要注意保険の「定期特約付き終身保険」
それではまず、JA終身共済の保障内容を確認しましょう。
加入年齢が30歳の男性を契約者とした場合の、モデルプランです。
【保険料】
掛金30歳~60歳まで:月額1万2624円、年払いなら年額14万5999円
60歳~80歳まで:年払いのみで、年額3800円(主契約は60歳払込終了)
共済金額 | 満期 | 保障内容 | ||
---|---|---|---|---|
主契約 | 200万円 | なし | 万一の時※に給付金が受け取れる。 | |
特約 | 定期特約 | 800万円 | 60歳 | 万一の時※に給付金が受け取れる。 |
災害死亡割増特約 | 300万円 | 60歳 | 災害や所定の感染症による死亡、所定の後遺障害や重度要介護状態になると給付金が受け取れる。 ※災害死亡割増特約は、60歳までは合計500万円。 | |
200万円 | 80歳 | |||
災害給付特約 | 500万円 | 80歳 | ||
家族収入保障特約 | 毎年120万円 | 60歳 | 万一の時※以後に、遺族が給付金を年金として受け取れる。 |
※「万一の時」:死亡・所定の後遺障害/重度要介護状態のいずれかに該当する場合のこと
一般的には年月が経過するにつれて、子どもの成長などによって必要保障額はゆっくり減少するのじゃ。じゃから家族収入保障と定期死亡保障でだんだんと共済金額が減少するのは、合理的と言えるの。
念入りに検討する必要がありそうじゃ。
JA終身保険のメリット・デメリット
農協の組合員じゃなくても契約できるんですか?
他にも、共済ならではのデメリットとメリットがあるから、確認しておこうかの。
JA共済は農業協同組合の組合員のための共済保険です。
ですが、農業従事者でなくても1万円以下(その地域のJAによる)の出資金を支払うことによって「准組合員」となって加入する方法もあります。
他にも、組合員の利用高の2割までは、組合員以外の人が加入する「員外利用」が認められています。
このため、農協組合員でないことは、JA終身共済に加入するための大きなハードルにはならないでしょう。
共済のデメリット
保険会社が販売する保険商品とは違って、共済は相互扶助の非営利事業であるため、いくつかのデメリットを持っています。
①責任準備金制度が不徹底
責任準備金とは、将来予測される保険金支払いのために、支払われた保険料の一部を、保険会社が準備しておくことです。
この金額は保険業法によって決まっており、責任準備金に不足が生じると、監督官庁である金融庁から行政指導を受けることになります。
ですが、JA共済は農業協同組合法によって設立されており、監督官庁は農林水産省です。このため、各JAが責任準備金を十分に確保しているかどうかの監督はなされていません。
②破綻しても生命保険契約者保護機構による救済を受けられない
保険会社が破綻すると、生命保険契約者保護機構によって、保険契約者の支払った保険料は、「元本保証」とまではいかないにしても、大部分が保護されます。
しかし、共済は保険ではないので、このような公的セーフティネットはありません。
ですが、①②ともにさほど大きなデメリットだと考えなくてよいでしょう。
というのも、加入しているJAが破綻した場合でも、共済契約は他のJAやJA共済連(JAの運営母体である「全国共済農業協同組合連合会)のこと)が引き継ぐことになっておりますし、JA共済連は十分な共済契約準備金を用意しているとうたっています。
③加入できる共済契約のバリエーションが少ない
一般の生保会社が販売する保険商品では、主契約や特約の保険金額を100万円~1000万円単位で自由に選択できることが多いですが、共済にはそのような保障内容選択の自由度は、通常ありません。
ですが、JA終身共済に関しては、最低限(50万円分)の主契約にさえ入っていれば、一つ一つの特約について保障額を選ぶことができます。(年齢による上限あり)
ですから、一般的な共済がもつデメリットは、JA終身共済についてはさほど当てはまらないのです。
民間の保険とJA終身共済とを比較すると
とはいえ、JA終身共済は保険商品として見たときに、必ずしも魅力があるとは言い切れません。
今回は、オリックス生命の保険商品で、同条件の保険を設計し、月額保険料を比較してみたいと思います。
30歳男性が60歳払込終了でJA終身共済と同様の保障内容を得ようとすると、オリックス生命では次の表のように保険に加入することになります。
保険の種類 | 商品名 | 保険金額 | 満期 | 保険料 |
---|---|---|---|---|
終身保険 | 終身保険RISE | 200万円 | なし | 3736円 |
収入保障保険 | 収入保障保険Keep | 年間120万円 | 60歳 | 2960円 |
定期保険 | 定期保険FineSave | 1800万円 | 60歳 | 5058円 |
合計 | 1万1754円 |
※オリックス生命には「定期保険FineSave」より割安な「定期保険Bridge」がありますが、「収入保障保険Keep」と同時に申し込めません。
オリックス生命の保険料が割安なのには、「終身保険RISE」が低解約返戻金型終身保険であるという理由があります。
低解約返戻金型終身保険は、保険料が割安な代わりに、保険料払込期間中の解約返戻金(解約時に払い戻されるお金)が抑えられている(RISEの場合は70%)からです。
ですから、終身保険を保険料払込期間中に解約する可能性が低い人なら、JA終身共済よりも民間の保険会社の販売する低解約返戻金型終身保険を中心に保険設計したほうが良いでしょう。
反対に、終身保険を比較的早期に解約する可能性が高い人ならJA終身共済のほうが有利だといえます。
JA終身共済を解約した場合
JA終身共済のしくみは、民間の保険会社の終身保険(低解約返戻金型ではないもの)とほぼ同じものです。
ですから、払い込まれた掛け金のほとんどは責任準備金のように積み立てられているので、解約時には解約返戻金を受け取ることができます。
受け取れる解約返戻金額は大きく3つの場合に分けて考えられます。
- 契約後3年程度以内:解約返戻金はないか、あってもわずか
- 契約後3年程度~払込期間終了後3~5年後:総払込掛金よりやや少ない金額を受け取ることができる
- 払込期間終了後3~5年後:総払込掛金を上回る金額の解約返戻金を受け取ることができる
あくまでも解約返戻金が発生するのは、主契約の終身共済の部分だけじゃ。定期や家族収入のような特約部分の掛金はほとんど掛け捨てじゃぞい。
じゃからJA終身共済も、モデルプランじゃと解約返戻金は454万4640円の半分を大きく下回るはずじゃぞい。
過去に契約した「お宝共済」を解約したい場合
上記のように定期特約が付くような場合は別ですが、20~30年前に契約されたJA終身共済は、「お宝共済」だと言えます。
というのは、当時は現在よりも高い予定利率(保険会社や共済の見込み運用益)で保険や共済が契約されていたために、現在よりも低い掛金で同等の保障を得ることができたからです。
現在予定利率がずいぶん下がったからといって当時の契約は修正されませんので、過去にJA終身共済や保険会社の終身保険に加入し未だに解約していない人は、とても有利な共済(保険)を持っているのです。
とはいえ、月々の掛金支払いが家計を圧迫しているなどの理由で、「お宝共済」と知りつつも解約したいっていう方もいますよね。
そういう場合におすすめなのが掛け金を「払い済み」にするという手段です。
「払い済み」にすると、以後の保険料支払いは必要なくなり、その代わりに当初の契約よりも保障の金額が減ることになります。
ですが、予定利率と保障期間は据え置かれるので、それなりの保障を一生涯受け続けることができるのです。
ただし、「払い済み」にすると、特約はすべて消滅してしまうので注意しましょう。
まとめ
- JA終身共済には、定期特約や家族収入特約などの特約を任意でつけることができる。
- 共済保険は、保険契約者保護機構などのセーフティネットがないのがデメリットである。
- 共済保険は非営利事業のため保険料は割安だが、JA終身共済は生命保険会社の低解約返戻金型終身保険よりはコストが高い。
- JA終身共済の解約返戻金は、特約部分についてはほとんどないので注意が必要。
- 過去に契約した予定利率の高いJA終身共済を解約したい場合、払い済みにするのがおすすめ。
この場合、せっかく積み立ててきた解約返戻金に充当される部分の準備金が、掛け捨ての特約へと充当されることになるのじゃ。
それも納得したうえで転換するのなら良いのですが、JAはご近所付き合い的な感覚で加入している人も多いですから、担当者のすすめるままに転換してしまうことも考えられます。
そのような場合はすぐに決めず、ぜひ専門家に相談しましょう!