共働き夫婦DINKSが終身保険に加入するときのポイントとは?
結婚して子どもを授かったら、もう自分ひとりの生命ではない。
そう考えて30歳過ぎに、終身保険の加入を考える人が多かった一昔前。
現在は生命保険の加入のタイミングも多様化しています。
今回は、子どものいない共働き夫婦、いわゆるDINKS(ディンクス)と終身保険の関係について考えます。
自由に使えるお金は多いが、貯蓄が進みにくいDINKS
まずDINKSの言葉の意味から。
DINKSとは、Double Income No Kidsの頭文字を合わせた言葉です。
相互収入で子どもを持たない夫婦のことを指します。
まだ一般的に通る言葉ではないものの、新しい夫婦の形として、次第に浸透してきました。
DINKSは子どものいる、一般的なイメージの「家族」に比べ、以下のような違いがあります。
- 共働き(ダブルインカム)のため、家計の収入額が高い
- 夫婦どちらかの収入が途絶えても、家計が崩れにくい
- 可処分所得(以下参照)が高いため、支出額が高くなりやすい
- 教育費という考えがないため、その分貯蓄が進まない
一般的にDINKSは貯蓄の苦手なイメージがあるのですが、実態通りなのでしょうか、この特徴を表す言葉が、「可処分所得」です。
可処分所得とは個人の収入やボーナスから税金や社会保険料を引いた、いわゆる手取り収入のこと。
この金額が多いと、「自由に使えるお金が多い」と解釈されます。
DINKSは可処分所得が高い分、支出額が高くなりがちですが、収入が2本あるため安心できる。
その一方で貯蓄が進みにくいという特徴があります。
DINKSにお勧めの終身保険とは?
ご夫婦どちらかが働かれていて、子どもがいる場合、FPとして王道といえる終身保険のアドバイスは「働かれている方に終身保険をかけて、万が一の事態に備える」です。
終身保険の代わりに子どもに学資保険を掛ける方法も、住宅購入に合わせて団体信用生命保険(団信)に加入する、もしくは終身保険と並行で加入するという方法があります。
一方のDINKSの場合は、終身保険の役割を「もう片方の収入」が担っています。
たとえば夫に万が一のことがあっても、妻には収入があるため、子どもがいるご家庭と終身保険金の役割が異なります。
DINKS夫婦で終身保険の保険金に期待するところは、葬儀代と、ダブルインカム時代の支出ベースを、一人暮らしに縮める過程の原資というところでしょうか。
DINKSの終身保険の選び方は、自身の家庭ならばどれくらいの死亡保険金が必要か。
それを算出し、過不足のない終身保険に加入することです。
保険料を抑えることも可能となり、その金額を貯蓄することもできます。
そのときに注意するのは、終身保険の金額はもちろん、長期間保険に加入したときの「解約返戻金」がどれくらいの水準になるのかというところ。
一般的な終身保険は15年、20年加入すると、その時点で解約した金額が、それまでに支払った保険料の総額(支払保険料総額)を上回るという特徴です。
この特徴から、終身保険には死亡に対する保障性とは別に、「貯蓄性」があるといわれます。
DINKSだからこそ「公的保障」に注目を
DINKSと保険で注目すべきは「公的保障」です。
公的保障とは、公的年金や健康保険の保険料を払っていることで受けられる保障のこと。
民間の終身保険と同タイプの保障を備えた公的保障を確認してみましょう。
遺族年金 | 死亡後、遺族に支払われる年金 |
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障害年金 | 高度障害となったときに支払われる年金 |
高額療養費 | ひと月のなかで医療費が一定限度を超えた部分を保障する制度 |
DINKSのなかでも「会社員」の方は社会保険料が天引きのため、公的年金の保険料を納めている意識が少ないかもしれません。
ただ、公的年金と同等の保障を民間の保険で実現しようとすると、一説には3倍4倍の保険料を必要とするといわれます。
筆者も約10年前に身体を壊した時期がありましたが、偶然入院の初日が月始だったことで高額療養費が適用となり(この制度は月単位で計算されます)、民間の医療保険と合わせて家計への大きな援助になったことをよく覚えています。
言い換えれば、それだけの保障が約束されている公的保障。
DINKSの方は、夫婦それぞれが公的年金保険料を支払っているため、民間の終身保険は少なくていい、という解釈ができます。
DINKSが終了する日を考える
FP(ファイナンシャルプランナー)としてDINKS夫婦にお伝えしたいのは「DINKSが終了する日を考えることが大切」ということです。
ご夫婦のどちらかが病気やケガにより、収入が途絶えるというマイナスの視点ばかりではありません。
筆者は結婚して5年目に思い切って独立。
それまでの会社員から個人事業主へ転身しました。
現在は法人成りをして会社の経営者として仕事にあたっています。
当然独立に置いては収入の浮き沈みがありましたが、定職のある妻の存在が大きな支えになったことは間違いありません。
前向きの転身でも、一時的にDINKSの形が崩れたとき、DINKSとして加入していた終身保険をどう考えるかは大きなテーマです(ちなみに筆者の家庭は会社員時代のままドル建ての終身保険の加入を継続して今に至ります)。
また、筆者の友人で「うちはDINKS」と決めていたご夫婦が話し合い、新しい命を先日授かったこともありました。
ライフスタイルの変更に合わせて十分な貯蓄を得ていたので問題なく子どもを迎えることができましたが、折角の吉事が収入の減る要因と捉えることは避けたいもの。
DINKSとして終身保険に加入する際は、合わせて「ある日DINKSではなくなったら」ということも同時に考えて、生命保険の計画を組み立てるようにしたいですね。
そのためには柔軟な判断をするために、「預貯金」は終身保険の商品選びと同様に大切なポイントです。
DINKSだから終身保険があれば安心…ではなく、定期的な預貯金は大切。
預貯金は医療費にも生活費にも使える「応用性」の高い資産のため、少なくなり過ぎないように恒常的に家計を見ていきましょう。
DINKSに保険をお勧めするときは
DINKSに終身保険をお勧めするときは「柔軟性のある終身保険を選ぶ」ことが大切です。
たとえば20年加入してはじめて「解約返戻金」が保険料として支払った支払保険料総額を超える商品があります。
この商品に加入していた場合、万が一DINKSの形が途中で終了すると、終身保険に「元本割れ」が発生してしまうケースも。これは避けたい形です。
また、終身保険に合わせて、医療保険にも気を配るようにしましょう。
終身保険は万が一のことがあった場合、遺された家族を経済的に手助けする特徴を有しています。
ただ日常の病気やケガに対しては保障の対象外。保険料の安いもので十分ですので、医療費が想定外に必要になったときに備え医療保険に加入しておくことをお勧めします。
リーズナブルな医療保険では、月2,000円から3,000円での保険料で入院給付、手術給付、通院給付など一通りの医療保障を受けることができます。
最近の医療保険は、先進医療特約が保険料込みで受けられるほか、三大疾病(がん、脳疾患、心疾患)に対する保証も充実しています。
終身保険と医療保険、先に述べた公的保障を組み合わせて、DINKSの生活に対しての保障は十分になると考えます。
まとめ
DINKSと終身保険についてお伝えしました。
政府が「1億総活躍」を唱えるなかで、DINKSが社会に届けるプラスの効果は今後も拡大していくと思います。
また、DINKSが喜ばしい理由で「終了することになった」場合に、収入や生活の変化を想定して準備できていたか否かは大切なポイントです。
新しいその生活を支えるためにも、医療保険や公的年金も考慮した適切な終身保険の加入を考えていきましょう。
執筆者
工藤 崇株式会社FP-MYS代表取締役社長兼CEO
ファイナンシャルプランニング(FP)を通じて、Fintech領域のリテラシーを上げたいとお考えの個人、FP領域を活用して、Fintechビジネスを開始、発展させたいとする法人のアドバイザーやプロダクトの受注を請け負っている。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居企業。FP関連の執筆実績多数。東京都千代田区丸の内。