保険を見直したら年末調整はどうしたらいい?
近年の保険見直しブームで長くかけていた保険を見直したけれど、年末調整をどうしていいかわからないという方もいるのではないでしょうか。
年末調整で提出する生命保険料控除証明書は多くの場合、9月の保険料払込が終わった後、10月中旬から発送されます。
また、年末調整に書類が間に合わない場合でも確定申告をすることで生命保険料控除をつかうことができます。
今回は保険見直しでの年末調整に関する疑問を調査しました。
年末調整と確定申告について
そもそも、年末調整や確定申告とは何なのでしょうか?
簡単に言えば、確定申告は個人が一年間の収入や経費から所得を計算し、納税額を確定して税務署に申告し、納税する一連の手続きのことです。
しかし、すべての労働者がこの手続きを行うと、税務署はパンクしてしまいますよね。
ですから、会社員や公務員などの給与所得者に関しては、原則として勤務先がこの納税手続きを代行してくれます。
会社員や公務員の給料からは所得税や住民税、社会保険料が天引きされていることは、給与明細などを見れば分かるはずです。
しかし、この所得税は実は、その人の1年間の収入を見込んで大雑把に算出している金額なのです。
このため、年内に給料やボーナスが増減したり、勤務先が把握できない要件によって所得が変化する場合には、本来納めなければならない税額とはズレが生じてしまいます。
このズレを、毎年末に調整するのが年末調整なのです。
サラリーマンは年末調整があるので、原則として確定申告の必要はありませんが、例外もあります。
- 給与収入が2000万円を超える場合
- 2つ以上の勤め先から給与や賃金をもらっている場合
- 給与以外に20万円以上の所得がある場合
- 1年間の医療費自己負担額(薬代や交通費も含む)が10万円以上ある場合(医療費控除)
- 寄附(所定の条件がある)をした場合(寄付金控除)
- 株式や為替などの投資で損失が発生している場合
- 住宅ローンを契約した1年目(住宅借入金等特別控除)
また、年末調整をしていても確定申告をすることで税還付が発生することもあります。
保険に入っていると、年末調整や確定申告の時に税還付を受けられる!
会社員の人や公務員の人は、年末が近づいてくると勤務先に年末調整のための申告用紙への記入を求められます。
その時に、生命保険に加入している人であれば、生命保険会社から事前に送付されてきた「生命保険料控除証明書」を添付することで、自分がその1年間に保険料を支払ってきたことを証明します。
そして、この手続きをふむことによって、年間の総支払保険料に応じて所得税の還付を受けることができるのです!
この制度は「所得税の生命保険料控除」と呼ばれており、家計のリスクを軽減しようという国民の自助努力を、国が減税という形で応援するものです。
また所得税の還付だけでなく、翌年に支払う住民税も減額されるので、節税効果はダブル。
この制度はしっかりと活用したいですよね。
生命保険料控除を受けるためには、証明書が必要
サラリーマンの場合は、年末調整の時に生命保険料控除証明書を提出することで、生命保険料控除の適用を受けて所得税を還付と翌年の住民税の減額を受けることができます。
この証明書は、毎年年末が近づいてくると、生命保険会社から郵送されます。
年末調整で手続きに漏れがあったり、証明書発行の後に保険契約をしたりして年末調整に間に合わないことも考えられます。
その場合には、サラリーマンでも確定申告をすることで、仕損じた控除の手続きができます。
確定申告書は税務署に置いてありますし、申告書記入の際には係員が丁寧に説明してくれるので、確定申告が初めての方でも安心です。
年末調整提出後に加入した保険は生命保険料控除の対象にならないの?
年末調整に間に合わない場合は確定申告をすればOK
例えば、10月に解約して保険を見直し11月から新しい保険に加入したとします。
この場合、年末調整には間に合わないので自分で確定申告を行えば、新しく加入した保険の保険料も生命保険料控除の対象とすることができます。
一括払いにするときは特に注意!生命保険料控除は上限がある
生命保険料控除で控除対象に支払保険料には上限があります。
2012年以降に加入した保険は、所得税で年間8万円まで、住民税では年間5万6,000円までを上限に支払保険料が生命保険料控除の対象となります。
つまり、この額を越えた支払い保険料はいくら増えても控除額は変わりません。
年末調整の書類提出に間に合わなかった保険料支払いがあっても、見直し前の段階で支払った保険料が8万円を超えていれば控除額満額を受けているので追加で申告する必要はありません。
生命保険料控除の新制度と旧制度で変わったこと
生命保険料控除による減税は、どのくらい?
それでは実際に、この制度によってどのくらいの減税を受けることができるのでしょうか。
実はこの制度は2012年(平成24年)の税制改正により、枠組みが大きく変化しています。
それでは、旧制度と新制度の違いを見てみましょう。
旧制度
控除の種類は2種類[一般生命保険料][個人年金保険料
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間払込保険料額 | 控除される金額 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
2万5000円以下 | 払込保険料の全額 | 1万5000円以下 | 払込保険料の全額 |
2万5000円超 5万円以下 | 1万2500円 +払込保険料×1/2 | 1万5000円超 4万円以下 | 7500円 +払込保険料×1/2 |
5万円超 10万円以下 | 2万5000円 +払込保険料×1/4 | 4万円超 7万円以下 | 1万7500円 +払込保険料×1/4 |
10万円超 | 一律5万円 | 7万円超 | 一律3万5000円 |
2種類両方で満額の控除を受けた場合、
・所得税の控除額:5万円+5万円=10万円
・住民税の控除額:3万5000円+3万5000円=7万円
合計17万円となります。
そして仮に、所得税も住民税も適用税率が10%だったとすると、17万円×10%=1万7000円が1年間に節税できることになるのです!
新制度
新制度では、控除の種類が[一般生命保険料][個人年金保険料][介護医療保険料]の3種類に増えました。
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間払込保険料額 | 控除される金額 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
2万円以下 | 払込保険料の全額 | 1万2000円以下 | 払込保険料の全額 |
2万円超 4万円以下 | 1万円 +払込保険料×1/2 | 1万2000円超 3万2000円以下 | 6000円 +払込保険料×1/2 |
4万円超 8万円以下 | 2万円 +払込保険料×1/4 | 3万2000円超 5万6000円以下 | 1万4000円 +払込保険料×1/4 |
8万円超 | 一律4万円 | 5万6000円超 | 一律2万8000円 |
3種類すべてで満額の控除を受けた場合、
・所得税の控除額:4万円+4万円+4万円=12万円
・住民税の控除額:2万8000円×3とはならず、最大7万円
合計19万円となります。
こちらも仮に、所得税も住民税も適用税率が10%だとすると、19万円×10%=1万9000円が1年間に節税できることになります!
新制度では旧制度と比べて、[介護医療保険料]の枠が追加された分、全体としての最大控除額が増加した一方で、[一般生命保険料][個人年金保険料]それぞれの最大控除額は減っています。
2012年以前に契約された保険については、旧制度が引き続き適用されるからの。
新制度と旧制度の両方の適用を受ける場合は、所得税の最大控除額は12万円、住民税は7万円になるぞい。
ただし、この制度改正によって注意せにゃならん人もおるんじゃ。
こんな人は、生命保険料控除の改正に注意が必要!
2012年(平成24年)1月以降に契約される保険については、新制度が適用されます。
このため、次のような人は以前と同じ控除額が適用されない可能性がありますので、注意しましょう。
●2012年以降に生命保険を見直した人
保険の見直しとはすなわち、不要な保険の解約とより良い保険の新契約のことです。
ですから、以前と同じ控除を期待して保険の解約と新契約をすると、新制度が適用されて控除額が思っていたより低くなることがあります。
●2012年以降に更新した人
[生命保険料控除]が適用される生命保険には、10年などの一定期間のみを保障する掛け捨て型の定期保険も入ります。
この定期保険に加入している場合、一定期間が経過すれば保険は自動的に消滅しますが、たいていの場合は生命保険会社から同額の保障を継続する保険更新の打診があります。
しかしこの保険更新も、新たな保険の契約であることには変わりありません。
ですから、それまでは旧制度が適用されていても、更新が2012年1月以降なら新制度が適用されます。
●2012年以降に追加で医療保険・がん保険に加入した人
新たに加入した保険には、新制度が適用されます。
ただし、医療保険やがん保険の保険料は新制度で追加された[介護医療保険料]として申告することができます。
このため、引き続き加入している契約から生命保険料控除で5万円、新契約から介護医療保険料控除で4万円、合計9万円の所得控除を得ることができます。
このように、旧制度から新制度への改正によって、保険の見直し方や年末調整時の申告の仕方には注意すべき点があります。
共済や個人年金でも生命保険料控除ができます
共済の掛け金や個人年金保険の保険料も、生命保険料控除の対象です。
ただし、それぞれに対象となるための条件があるので、注意しましょう。
●共済掛金
県民共済などの共済では、死亡保障や医療保障のほかに、交通事故や損害賠償などの保障が取り扱われています。
また共済によっては、このうちの2つまたは3つがセットになっています。
生命保険料控除制度では、死亡保障は[生命保険料]、医療保障は[介護医療保険料]の対象となりますが、損害保険料の控除はありません。
ですから、もし損害保険もセットで1口となっている共済の場合は、その契約から損害保険料を差し引いた分が生命保険料控除の対象となるのです。
●個人年金保険
老後の生活費を保険で用意する個人年金保険ですが、前述のように旧制度で満額5万円、新制度でも満額4万円の控除枠が設けられています。
しかし、次の要件をすべて満たさなければなりません。
- 年金の受取人が、保険料を払い込む本人かその配偶者であること。
- 保険料を10年以上にわたって定期に払い込む契約であること。
- 年金の受け取りは60歳になってから10年以上の定期または終身の契約であること。
つまり、保険料を一括払いにする契約や、5年確定年金の場合は、生命保険料控除の対象外なのです。
まとめ
- 年末調整は、保険見直しのグッドタイミング。
- 生命保険料控除で、所得税と住民税が節税できる。
- 生命保険料控除は2012年に改正され、旧制度と新制度の違いに注意が必要。
- サラリーマンは原則年末調整で生命保険料控除の手続きをするが、確定申告で手続きすることも可能。
- 共済や個人年金も、要件を満たせば生命保険料控除の対象となる。
これをうまく使えば、とんでもない利率で運用できるんじゃないですか?
終身保険のように、[生命保険料]として申告できる貯蓄型保険もあるぞい。