キャッシュレス利用者は96.2%、現金利用一切なし“完全キャッシュレス民”の実態とは?

調査目的
    以前まで日本は“現金大国”と呼ばれるほどキャッシュレス化に後れをとっていましたが、ここ近年の経済産業省による導入支援や還元事業など様々な推進政策により、「キャッシュレス決済」は私たち消費者にとって利便性の高い決済手段として急速に普及しています。

    まねーぶ調べでは、全国消費者500人を対象にキャッシュレス決済に関する意識調査を行い、そのうち完全キャッシュレス決済(現金利用なし)と回答した人に利用実態を迫るべく、まねーぶ編集部が直接取材を実施しました。
    さらに、今後の日本におけるキャッシュレス事情ついて消費経済ジャーナリスト 松崎のり子氏に解説していただきました。

調査回答者の属性(n=500)

調査対象:全国20代~60代消費者500人

調査回答者の属性(n=500)

  • 性別:男性35.0%/女性65.0%
  • 年代:20代19.2%/30代39.6%/40代26.8%/50代9.6%/60代4.8%
  • 世帯:単独世帯21.0%/夫婦のみ世帯21.0%/夫婦と子世帯33.0%/ひとり親と子世帯9.6%/その他世帯15.4%
  • 職業:正社員25.8%/契約社員・嘱託社員4.8%/派遣社員2.8%/パート・アルバイト16.4%/フリーランス・業務委託契約7.2%/自営業・自由業8.6%/専業主婦(主夫)21.0%/学生3.8%/無職9.6%
  • 世帯年収:100万円未満8.2%/100万円以上~150万円未満4.2%/150万円以上~300万円未満19.6%/300万円以上~500万円未満30.2%/500万円以上~700万円未満22.0%/700万円以上~1,000万円未満13.4%/1,000万円以上2.4%

【調査】キャッシュレス決済の利用状況

「キャッシュレス決済利用あり」96.2%、うち「完全キャッシュレス決済(現金利用一切なし)」7.5%

キャッシュレス決済の利用状況

全国消費者500人にキャッシュレス決済の利用状況について調査したところ、「キャッシュレス決済利用あり」は96.2%(481人)と大多数の人に普及している結果でした。
また、キャッシュレス決済利用ありと回答した481人を対象に、現金併用と完全キャッシュレス決済の利用内訳について調査したところ、「完全キャッシュレス決済(現金利用一切なし)」は7.5%と1割未満ながらも一定数いることも明らかになりました。

【取材】突撃!完全キャッシュレス民の実態

まねーぶ取材

キャッシュレス決済の利用状況調査にて、「完全キャッシュレス決済(現金利用一切なし)」と回答した人の実態に迫るべく、まねーぶ編集部が直接インタビューを実施しました。
生活するうえで必要不可欠なお金のやりとりを、全てキャッシュレス決済に切り替えたことでのメリット・デメリットや、現金主義者へ伝えたい事など根掘り葉掘り取材しましたのでご紹介いたします。

まねーぶ編集部
完全キャッシュレス決済に移行した理由は?
(なぜ現金を使わなくなったのですか?)
私がキャッシュレス決済を利用し始めたのは約2年前です。日本と海外を行き来する生活の中で外貨両替が面倒になり、デビットカード、クレジットカードでの決済がメインになりました。
コロナで日本に長期間滞在するようになったため、多数のスマホ決済サービスの利用を開始してみると、お得にポイントが貯まり、現金を持ち運ぶ煩わしさからも解放され、今では財布を持たずに出かける日もあります。
(ゆってぃさん/21歳男性 大学生)
私は34歳でキャッシュレス歴11年目の主婦です。18歳で就職し、ずっと現金派でした。
旅行が大好きで飛行機のマイルを貯めて旅をすることに憧れていたため、思い切って航空会社のクレジットカードに申し込みました。そこからというもの口座引き落しされるものはすべてクレジットカードに変更し、どんなに少額でもカード払いを徹底しポイントを貯めることにしました。
(かなさん/34歳女性 事務パート)
マネーフォワードアプリで決済手段を連携して家計管理をするうちに、キャッシュレスの威力(利便性)を実感するようになりました。
現金払いだとレシートを保管して後日細かく入力するなど、レシートがどんどん溜まる状態にうんざりしたため、完全キャッシュレスに移行することにしました。
(taratyanさん/27代男性 会社員)
私は専業主婦で収入がないので、主人から食費や日用品など必要なものはクレジットカードで支払うように言われています。
また、最近では電子マネーを使用するようになり、クレジットカードと併用してポイントを貯めながら利用しています。
(三日月さん/43歳女性 専業主婦)
まねーぶ編集部
完全キャッシュレス化したことで日常生活に変わったことはありましたか?
はい。メリットとしては、荷物が減ったこと、そしてお得にポイントが貯まるだけでなく、会計時のスピードが速くなりスムーズに買い物を済ませられることです。
デメリットとしては、地方では現金払いのみの店舗も多いので利用する店を選ぶのと、割り勘をする相手がスマホ決済サービスなどを利用していないと面倒なことです。
(ゆってぃさん/21歳男性 大学生)
昨年のキャッシュレス・ポイント還元事業の影響でキャッシュレス決済方法のバリエーションが増え、常にお得な情報にアンテナを張るようになりました。
「d払い」「QUICPay」「楽天ペイ」「PayPay」の決済サービスを登録し、それぞれの提携カードとリンクしました。これらの決済サービスは利用店舗も多く便利なうえ、キャッシュバックキャンペーンやポイント還元も高く大変お得に利用できます。
しかし、バーコード決済やおサイフケータイを使う際はスマホの通信速度が遅いとすぐに画面を開けられないことがあり、スマホの充電が少ない時も不安になります。
(かなさん/34歳女性 事務パート)
日常生活で変わったことは大きく2つあります。1つめは、完全キャッシュレスにしたことで小型のカードケースに切り替え、財布を忘れる・紛失する等のリスクが大幅に減りました。
2つめは、完全キャッシュレスになったおかげで、副業などでの支出以外はレシートを受け取らずに済むようになりました。
現金決済で家計簿を付けていた時は、時間が掛かりレシートを貯めてしまうことも多かったので、キャッシュレス化したことでこのような問題が解決できてスッキリしました。
(taratyanさん/27代男性 会社員)
お財布に現金が入っていなくても不安にならなくなりました。そのせいか、いくら使っているのか把握もしなくなり、無駄遣いも増えてしまったかもしれません・・・。
また、キャッシュレス決済が利用できないお店を選ばなくなりました。お店を利用するときは事前に、自分が使っているクレジットカードや電子マネーに対応しているか調べています。
(三日月さん/43歳女性 専業主婦)
まねーぶ編集部
利用しているキャッシュレスの種類・使い分け(シーン)を教えてください
楽天市場なら「楽天カード」、Yahoo!ショッピングなら「PayPay」、実店舗ではクーポンが配布されている決済サービスを選ぶというように、ポイント還元率を踏まえて使い分けています。
交通系ICの「モバイルSuica」は、楽天カードから「楽天ペイ」を通じてチャージすることで楽天ポイントも貯まり、チャージする手間も省けるのでおすすめです。
(ゆってぃさん/21歳男性 大学生)
ドラッグストアではメインのクレジットカードに紐づけた「d払い」を利用しています。基本的にはd払いでメインカードのポイントを貯めていますが、期間限定の楽天ポイントを使いたい時は「楽天ペイ」を使用しています。
「PayPay」は利用できる店舗も多いですが、バーコード決済が利用できない店舗ではメインのクレジットカードで支払いをしています。
(かなさん/34歳女性 事務パート)
日頃のコンビニやスーパーでの買い物は、ほぼクレジットカード一体型「WAON」で支払っています。クレジットカードからオートチャージにしているので、残金不足にもなりません。
また、LINEポケオなどLINE付帯のサービス・クーポンを持ち合わせている時には「LINE Pay」を利用する機会が多いです。一部コンビニではWAONが利用できないため、コンビニ決済時にもたまに利用しています。
以前は「PayPay」も還元キャンペーンをしていた時に利用していましたが、クレジットカードと紐づけしていないので今ではPayPayフリマやPayPayボーナス運用のために利用しているのみで利用率は減少傾向です。
(taratyanさん/27代男性 会社員)
食品や日用品などの日常の買い物は主人名義のクレジットカード(家族カード)を使用します。
自分と子供だけで遊びに行ったり、自分の洋服や趣味などに使う場合は自分名義のクレジットカードを使用し、支払額をきっちり計算しています。コンビニやちょっとした買い物は電子マネー(メルペイのiD払い)を利用しています。
(三日月さん/43歳女性 専業主婦)
まねーぶ編集部
現金を使わなくなって困った出来事は?割り勘や集金などがあった場合はどうしてますか?
割り勘で相手がキャッシュレス決済を利用していない場合、次回分を払うと約束するか、帰宅後相手の銀行に振り込むなど、何とか解決します。
便利な完全キャッシュレス生活を相手にも体感してほしいので、自分が折れて現金を持ち歩くようなことはしていません。
(ゆってぃさん/21歳男性 大学生)
普段は現金を持ち歩きませんが、病院では現金払いのみのところもあり急遽お金を下ろしにいったことがありました。
割り勘の場合は、相手が現金派であれば了承を得て私が代表してカード決済をします。同じキャッシュレス派であれば会計を別にしてもらうこともあります。私が予約などをすることが多いので、会計はカードやオンライン決済をし、集金の際に現金でもらうことが多いです。
(かなさん/34歳女性 事務パート)
会社の自動販売機が現金しか利用できないため、飲み物を持ち歩かなければいけなくなったことぐらいです。
コロナ以降、飲み会などに参加する機会が減ったので、今のところ割り勘や集金に困ったことはありません。
(taratyanさん/27代男性 会社員)
ネットで事前に調べてクレジットカード利用可のお店に行ったのに、実際は現金しか扱っていなかった時は困りました。情報が間違っている場合もあるので、入店時に確認するようにしています。(そのときは一旦お店を出て家に現金を取りに戻りました)
集金などの時は、家にあるお金をかき集めたり、コンビニATMを利用します。
(三日月さん/43歳女性 専業主婦)
まねーぶ編集部
普段持ち歩いている「ウォレット(カードケース)」や「端末」を見せてください

スマホ端末には「LINE Pay」、「楽天ペイ」、「PayPay」、「メルペイ」、「モバイルSuica」、Wallet内に「楽天カード」をフォルダにまとめて入れています。
(ゆってぃさん/21歳男性 大学生)

手帳型のスマホケースに、クレジットカードと磁気エラー防止シートとよく利用する店舗のポイントカードが入っています。これだけで買い物の際は事足ります。
クーポンなどもオンラインクーポンでかさばらないように意識しています。
(かなさん/34歳女性 事務パート)

カードケースに入れているのは、各種ポイントカード、クレジットカード一体型WAON、ジムの会員カード等全てを収納しています。
今はまだ会計時にポイントカードを出す機会が多いですが、アプリで代用できるサービスもあるので今後移行できればと考えています。
(taratyanさん/27代男性 会社員)

生活費等は主人名義のクレジットカード(家族カード)を利用していますが、ちょっとした買い物はメルカリで稼いだお金をメルペイ(iD)として利用しています。
(三日月さん/43歳女性 専業主婦)
まねーぶ編集部
キャッシュレス決済を一切使わない「現金主義」の人に伝えたい事は?
「携帯が故障して払えなかったらどうしよう」、「情報が悪用されないだろうか」と、初めは不安を感じる方も多いと思います。
しかし、いざ一度利用してみると財布から現金を出す時間や手間が面倒になり、気づけばキャッシュレス決済の虜になっているはずです。現金を持ち運びながら、少しずつでもいいので、試用期間を作って頂きたいです。
(ゆってぃさん/21歳男性 大学生)
私の友人は現金主義が多いです。なぜ現金がいいのか聞いてみると、「使いすぎてしまうから」や「いろいろ登録が面倒」と言っていました。
私も完全キャッシュレス化したときについついお金を使いすぎてしまい悩みましたが、今は家計簿アプリを使って管理をしています。使いすぎが心配な場合は事前にチャージして使える限度額がある決済方法にすると安心できます。
またスマホ決済やクレジットカードでも利用履歴が確認できるので自分がいくら使ったかを振り返ることができます。スマホ決済などの登録も一度設定してしまえば、とても便利で手放せなくなります。
今は定期預金の金利もとても低いのでクレジットカードの1%以上還元などはとても大きいです。日々の買い物や支払いで知らぬ間にポイントが貯まっていて、そのポイントでほしいものが手に入ったりすると本当に幸せになりますし節約にもなります。
最初の面倒を上回るメリットがたくさんあると思うのでおすすめです。
(かなさん/34歳女性 事務パート)
私が働いている会社にも現金主義の人がたくさんいます。キャッシュレス決済だと、お金を浪費してしまうと心配される方も多いかもしれませんが、家計簿アプリで管理したり、チャージの仕方を工夫・制限することで解決できることもたくさんあります。
昨今のコロナの影響により対面(接触)決済することに抵抗を感じる人も多いと思います。キャッシュレス決済であれば接触を減らすこともできるので、とても安心です。
一度使い始めると本当に便利なため、ぜひ家計簿アプリのデビューからでもキャッシュレス決済に移行していただきたいです。
(taratyanさん/27代男性 会社員)
ポイント還元やキャンペーン・クーポンで同じ物がお得に買えるなど、キャッシュレスは得することが多いです。
また、いくら使ったかレシート等を保管したり家計簿をつけなくても、キャッシュレスだと利用明細がいつでも簡単に端末上で見られるため管理がしやすいです。お金の計算が苦手な人ほど、キャッシュレスは楽になるのでおすすめです。
(三日月さん/43歳女性 専業主婦)
まねーぶ編集部
今後、日本のキャッシュレス社会をより普及させるために必要なことは何だと思いますか?
例えばドイツでは現金主義が多く、隣国オランダでは現金不可の店舗がいくつもあります。アメリカや中国ではレジさえないスーパーが実用化しています。
海外と一括りに比較することはできませんが、日本はもっと世界のイノベーションを引っ張っていくという姿勢を政府などが中心となって見せていかなければいけないと思います。
日本人の真面目さは、保守性で終わらせるのではなく、よりよい未来を作ることに生かすべきです。
(ゆってぃさん/21歳男性 大学生)
年配の方やキャッシュレスに抵抗がある人向けに自治体などでキャッシュレス説明会・講座を開いても良いと思います。
また、決済方法が未だ現金のみの店舗も多いので、すべての場所でキャッシュレス決済できるように店側にもメリットのある導入支援などをすると普及すると思います。
あと、日本は災害が多いので停電時のキャッシュレス決済の対策法が必要かと思います。
(かなさん/34歳女性 事務パート)
キャッシュレス決済をより普及させるためには、一部銀行以外のATMの引き出し・預け入れを有料化にすることが一番速いのではないかと感じます。
日本では現金が引き出しやすくなっていますが、現金を持ち歩いていると、盗難や紛失などのリスクもありますので、現金持ち歩くことは避けたほうが良いと私は感じています。
もうひとつ、キャッシュレス利便性をより理解するためには、家計簿アプリを使うのが最適かと思います。家計簿アプリの「zaim」や「マネーフォワード」などは様々なキャッシュレス決済サービスと連携することが可能なので管理しやすく大変便利です。
(taratyanさん/27代男性 会社員)
お店側も「キャッシュレスを推奨している」ことを伝えるべきだと思います。消費者側は、お店にとって現金とキャッシュレス決済どちらが良いのか(喜ばれるのか)考える人もいます。
東京ディズニーランドでは、各レジに「キャッシュレスを推奨しています」という文言が提示されていました。お店側でもキャッシュレスを推奨しているのなら遠慮なく利用できますし、レジの待ち時間や対面でのやり取り(接触等)からも解放されるので、消費者にとってもメリットをもっとアピールしてほしいと思います。
(三日月さん/43歳女性 専業主婦)

監修者プロフィール

松崎のり子
消費経済ジャーナリスト
松崎のり子

消費経済リサーチルーム
消費経済ジャーナリスト 松崎のり子

『レタスクラブ』『ESSE』など生活情報誌の副編集長として20年以上、節約・マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析してきた経験から、雑誌やWEBで生活者目線に立った記事を執筆。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(以上、講談社)ほか。

調査概要
  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査期間:2020年10月22日~2020年10月23日
  • 調査対象:全国20代~60代消費者500人
  • 取材対象:完全キャッシュレス決済利用者(現金利用なし)4人
  • 調査監修:消費経済リサーチルーム 松崎のり子
  • 調査結果は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計値は必ずしも100とはなりません。
  • 調査資料は調査期間時点における回答結果に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。

  • 関連記事