消費税増税から1年、8割以上が「負担を感じる」消費行動はどう変化した?
- 昨年10月度の消費税10%引上げ(以下、増税)から1年が経過しました。増税に伴い、キャッシュレス・消費者還元事業(2020年6月末終了)や軽減税率などの緩和措置がありましたが、私たち消費者は実際どのくらいの負担を感じているのでしょうか。
まねーぶ調べでは、全国消費者800人を対象に増税後の負担および消費行動に関する意識調査を行い、家計負担軽減策や景気回復への課題について、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美氏に考察していただきました。
調査回答者の属性(n=800)
- 性別:男性41.3%/女性58.8%
- 年代:20代21.1%/30代35.6%/40代27.3%/50代11.6%/60代4.4%
- 世帯:単独世帯24.4%/夫婦のみ世帯17.1%/夫婦と子世帯43.3%/ひとり親と子世帯3.6%/その他世帯11.6%
- 職業:正社員33.3%/契約社員・嘱託社員3.6%/派遣社員2.0%/パート・アルバイト14.8%/フリーランス・業務委託契約3.6%/
- 世帯年収:100万円未満6.8%/100万円以上~150万円未満5.3%/150万円以上~300万円未満18.0%/300万円以上~500万円未満29.6%/500万円以上~700万円未満24.8%/700万円以上~1,000万円未満10.0%/1,000万円以上5.6%
調査1:消費税増税の負担を感じている?
全国の20代~60代男女800人に消費税10%引上げ後(2019年10月以降)の負担について意識調査をしたところ、82.0%が「負担を感じる」と回答しました。2014年4月の8%引上げから5年振りとなる2%の増税でしたが、多くの消費者の負担になっていることが明らかになりました。
過去の消費税増税時には、増税前の駆け込み需要増と、増税後の消費減退が見られたため、今回はそれを防ぐための政策が同時に多数実施されました。それにより大きな恩恵を受けた人も実は大勢いることを忘れてはいけません。
調査2:いつから増税の負担を感じるようになった?
増税による負担を感じ始めた時期については、増税直後の「2019年10月」が53.2%と最も多く、次いで年末の「2019年12月」9.8%、新型コロナウイルスの感染者数が増加し始めた年度末の「2020年3月」8.8%と続く内容となりました。
なぜ、その時期に増税の負担を感じるようになったのか、上位の時期に沿って理由・意見をご紹介します
2019年10月
2019年12月
2020年3月
2番目に負担を感じた人が多いのは、忘年会やクリスマス、帰省やお正月準備とイベントが続き、大型の出費が続く12月。
3番目は、4月からの新生活に向けて家具や家電等を揃える人も多い3月でした。今年はそこにコロナによる収入減少や自粛生活が重なり、多くの人にとって経済的にも精神的にも厳しい時期となりました。
調査3:増税後の消費行動はどう変化した?
増税後の消費行動の変化については、「外食を減らす」が371人と最も多く、次いで「モノやサービスをなるべく買わない」339人、「キャッシュレス決済を利用する(マイナポイント申請含む)」288人と続き、軽減税率やキャッシュレス還元などの負担軽減策を活かした節約志向の強い内容でした。また、副業収入や固定費の見直しといった増税負担を補填する回答も上位に入る結果となりました。
増税後の消費行動や負担を減らすための対策についての意見をご紹介します
今回、増税にあわせた施策の中でも多くの人が利用できたのが「キャッシュレス・ポイント還元事業」でした。
2019年10月から2020年6月末までの間に、事前にこの事業への申請・登録を済ませた中小・小規模事業所でキャッシュレス決済をすると、5%または2%のポイント還元が受けられた制度です。
キャッシュレス決済を積極的に利用できたか、現金にとどまったかが、増税による負担感に大きく影響しているでしょう。
調査4:増税後のキャッシュレスに関する意識はどう変化した?
一方で7割以上が「キャッシュレス還元があっても増税を感じた」と回答
増税後のキャッシュレスに関する意識変化については、増税前と比べて「キャッシュレス決済を評価する・利用が増えた」と回答した人は58.0%と半数を上回りました。
一方で、キャッシュレス還元の評価(増税感を麻痺させたか)については、「キャッシュレス還元があっても増税を感じた」と回答した人は72.4%と多数を占め、キャッシュレス決済の評価は上昇したものの、還元策に対しては増税の負担をカバーするほどの評価は得られない結果となりました。
増税前後でのキャッシュレス決済に対する意識変化について意見をご紹介します
キャッシュレスに前向きな意見(ポジティブ)
キャッシュレスに否定的な意見(ネガティブ)
興味深いのは、スマホ決済を積極的に使っている人は「残高や還元も確認できる」と上手く支出管理ができているのに対し、抵抗感を感じている人はキャッシュレス決済による「使いすぎ」を心配しています。
キャッシュレス決済は買い物履歴がデータで残ります。QRコード決済の履歴や、カード情報を家計簿アプリに連携するなどして、支出管理ができるといいでしょう。
調査5:消費税率は何%が妥当だと思う?
妥当だと思う消費税率については、「5%」が53.3%と最も多く、次いで「0%(消費税廃止)」17.6%、「10%」10.4%と続き、現在の消費税率である10%を境に減税を望む回答は86.5%という結果となりました。
なぜ、その消費税率が妥当だと思うのか、上位の消費税率に沿って理由・意見をご紹介します
消費税5%
消費税0%(廃止)
消費税10%
そこで、国民全員が広く負担を担う消費税を上げるという選択をしたという背景があります。高齢化が進む中で、医療や介護、年金など国の社会保障負担は毎年増大していきます。
また、幼児教育無償化など少子化を止めるための政策にも税が活用されています。一定水準の社会保障を維持するためには、ある程度の消費増税はやむを得ないと理解してマネーライフプランを立てておきましょう。
監修者プロフィール
ハートマネー
代表 氏家祥美
ハートマネー
代表 氏家祥美
FP会社の役員を5年務めた後、2010年に独立して現在に至る。
共働き家族やリタイアメント層に向けたマネー&キャリアプランニングを得意とする。
高校生向け家庭科教科書の経済パートを執筆するなど、金融リテラシーの普及をライフワークとしている。