キャッシュレス時代、それでもクレジットカードを持たない理由とは?
- 経済産業省が策定する「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年に向けてキャッシュレス決済比率目標を40%と掲げ急成長を見せていますが、未だ約20%台にとどまる背景には、現金への高い信頼やキャッシュレスに対するセキュリティ面の不安等、様々な要因があります。
一方、キャッシュレス決済の中ではクレジットカードが大半を占めており発行枚数と利用金額ともに増加傾向にあります。
まねーぶ調べでは、クレジットカード非保有者643人に意識調査を行い、クレジットカードを持たない理由やキャッシュレス化の普及・拡大で困ったことや不満の声を明らかにし、今後のキャッシュレス化推進への課題について監修者の内山FP総合事務所株式会社 内山貴博氏に考察していただきました。
調査回答者の属性(n=643)
- 性別:男性39.5%/女性58.5%/無回答2.0%
- 年代:20代35.0%/30代31.6%/40代23.5%/50代9.0%/60代0.9%
- 婚姻・子供:未婚・子なし61.0%/未婚・子あり4.0%/既婚・子なし12.0%/既婚・子あり23.0%
- 職業:正社員30.5%/契約社員・嘱託社員3.0%/派遣社員2.5%/パート・アルバイト16.0%/フリーランス・業務委託6.1%/自営業・自由業5.0%/専業主婦(主夫)14.0%/学生9.0%/無職14.0%
- 年収:100万円未満45.6%/100万円以上~150万円未満8.6%/150万円以上~300万円未満19.0%/300万円以上~500万円未満19.0%/500万円以上~700万円未満5.0%/700万円以上~1,000万円未満3.0%
調査1:クレジットカードを持たない理由
全国20代~60代のクレジットカード非保有者643人にクレジットカードを持たない理由について調査したところ、「持ちたくない」71.1%、「持てない」28.9%という内訳結果でした。
クレジットカードを持ちたくない理由として、「使いすぎてしまうため」が257人と最も多く、次いで「現金で管理したいため」196人、「後払いが嫌なため」183人と続きました。セキュリティや盗難・紛失といったリスクよりも、目に見えないお金の扱いやリアルタイムで支出管理できないことに危惧する人が多く見受けられます。
一方で、クレジットカードを持てないと回答した3割弱の理由として、「収入が少ない」が125人と最も多く、次いで「社会的信用がない(年齢・職業)」93人と続き、クレジットカードの保有意思はあるものの審査に通らないという実態も明らかになりました。
私達日本人は欧米諸国の人々と比べ、株式投資などの資産運用に保守的であると言われています。これは預貯金重視や現金志向が強いことも意味しており、こういう傾向がクレジットカードを持ちたくない人の慎重な姿勢につながっているようです。
たしかにカード決済することで無駄遣いにつながる場合もあり、その意味でもカードを持たないという判断は決して悪くありません。ただし、お金が足りない時、財布を忘れた時などは大変便利です。
財布以外で良く持ち歩くもの、例えば名刺入れやバッグなどに念のための1枚を保有することから検討するのも良さそうです。
調査2:クレジットカードを持っていなくて困ったこと
クレジットカードを持っていなくて困ったことについては、「オンラインショッピング利用時」が212人で1位となり、2位は「財布に現金が入っていない時」145人、3位は「高額な買い物時」135人という結果でした。
本調査の回答で寄せられた『困った出来事(エピソード)』の一部をご紹介します。
例えば、駅によっては、ICカード専用の改札口があり現金で切符を買った人は別の改札口に回らなければならないという場合もあります。
ネットショッピングや携帯の契約のみならず、日常生活の様々なシーンで「キャッシュレス決済のみ」となることを想定して、今のうちからカードの利用などに慣れておくとよいと思います。
調査3:今後のクレジットカード保有意思
持ちたいカードは「年会費無料」、利用先は「オンラインショッピング」が1位
今後のクレジットカード保有意思については、「持ちたい」50.1%、「持ちたくない」49.9%となり、調査1では7割が「クレジットカードを持ちたくない」との回答したものの、ほぼ半数ずつに分かれる結果となりました。
「クレジットカードを持ちたい」と回答した人を対象に、どのようなクレジットカードを持ちたいか調査したところ、1位は「年会費無料」276人、2位は「ポイント・マイルの還元率が高い」170人、3位は「使えるお店が多い」167人と続き、機能性や付帯サービスよりもお得さと安全性を望む回答が上位にランクインました。
また、クレジットカードを何に利用したいかについては、1位は「オンラインでの買い物」270人、2位は「実店舗での買い物」109人、3位は「ガソリン・ETC」74人と続き、調査2のクレジットカードを持っていなくて困ったこと1位にも当てはまるオンラインショッピングでの利用が差をつけてトップとなりました。
初めてカードを作る場合は会費の有無を必ず確認してください。なお、クレジットカードは数多あり、その中から選ぶのは大変ですが、最初は買い物などで良く利用するスーパーやガソリンスタンドなどで作ることをおすすめします。
そもそも利用頻度が高いところでカードを作れば便利だと感じることも多いでしょうし、何より色んな特典や割引を受けられるといったメリットも期待できます。
調査4:普段利用している決済手段(割合)
普段利用している決済手段については、「現金」が8割を占めるものの、「スマホ決済」と「ICカード決済」といったキャッシュレス決済の利用も1割以上あることが明らかになりました。(※数値は合計100とした各決済割合の平均値)
調査1のクレジットカードを持ちたくない理由の上位にもあった、使い過ぎの懸念や現金で管理したいという意思が反映した結果だといえます。
ただし、例えばキャッシュレスに連動するスマホアプリでの家計簿管理サービスは、現金決済で領収書を見ながら家計簿を付けている人にとって飛躍的に時間の使い方が改善するかもしれません。
ポイント還元以外のキャッシュレス決済の利便性について、一度調べてみてください。
調査5:キャッシュレス化の普及で「現金」決済への不満
キャッシュレス化の普及による現金決済への不満については、3割が「不満を感じる」と回答し、不満の理由では、「ポイント還元の恩恵が無い」が100人と最も多く、次いで「金銭の受け渡しが面倒」74人、「会計に時間が掛かる」71人と続きました。
クレジットカード決済でポイントやマイルの還元の他、キャッシュレス・ポイント還元事業やマイナポイント事業といったキャッシュレス決済での還元恩恵がないことから、現金決済への不満が高まっているようです。また、決済時の接触減やスピード化が推奨されている中、財布から小銭を取り出したり、釣銭授受などの煩雑さも不満の一因であることがわかりました。
「フィンテック」というファイナンスとテクノロジーを合わせた造語がありますが、今後もお金を取り巻く環境はますます電子化、キャッシュレス化などテクノロジーが進歩していくと思います。
携帯電話が出始めた時、持っている人は少なかったですが、今はほとんどの人が保有しており、これと同じような状況になることが想定されます。ただし、数は減りましたが、今なお電話ボックスも存在していますよね。必要性があるからです。
現金決済も完全になくなることは無いと思います。それぞれの良い点を上手に使い分けスマートに生活できるといいですね。
監修者プロフィール
内山FP総合事務所株式会社
代表取締役 内山貴博
内山FP総合事務所株式会社
代表取締役 内山貴博
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
MBA(九州大学大学院経済学府 経営修士課程修了)
大学卒業後、証券会社の本社部門に勤務後、2006年に独立。FP相談業務を中心に、セミナー、金融機関研修、FPや証券外務員の資格対策講座などを担当。九州共立大学経済学部非常勤講師。