【2020年 夏支出調査】500世帯に聞いた、夏レジャーに掛ける費用は昨対比76.1%減
- 新型コロナウイルス感染症拡大による小中学校の長期休校の影響で、全国各地で夏休みの短縮化が決定されています。未だ感染症への不安が消えない中、レジャー施設の休業や夏の定番イベントなども中止や延期が相次ぎ、今年は活気のない夏になることが想定されます。
しかし、感染症収束後には国土交通省・観光庁主導のもと、地域の再活性化を目的とした「Go Toキャンペーン事業」が実施(予定)されるなど、レジャー消費の需要喚起もされています。
経済ジャーナリストの酒井富士子氏監修のもと、全国500世帯を対象に夏レジャー支出に関する意識調査を行い、地域経済の回復に向けた課題や対策について解説していただきました。
調査回答者の属性(n=500)
- 性別:男性27.6%/女性72.4%
- 年代:20代22.6%/30代40.2%/40代26.2%/50代9.6%/60代1.4%
- 婚姻・子供:未婚・子供なし33.4%/未婚・子供あり2.8%/既婚・子供なし19.4%/既婚・子供あり44.4%
- 職業:正社員24.0%/契約社員・嘱託社員4.6%/派遣社員2.6%/パート・アルバイト19.4%/フリーランス・業務委託契約7.2%/自営業・自由業4.6%/専業主婦(主夫)29.0%/無職8.6%
- 年収:100万円未満6.8%/100万円以上~150万円未満6.4%/150万円以上~300万円未満10.8%/300万円以上~500万円未満37.6%/500万円以上~700万円未満25.8%/700万円以上~1,000万円未満9.4%/1,000万円以上3.2%
調査1:2020年の夏レジャー予定
全国500世帯を対象に2020年の夏レジャーの予定について調査したところ、「予定はない(決めていない)」は62.0%であり、予定なしの理由として、「コロナ感染症対策のため」が285人と最も多く、次いで「お金に余裕がない・節約のため」109人、「まだ決めていない」84人、「子供の夏休み短縮のため」48人と続き、未だ感染が止まない新型コロナウイルスへの不安や、自粛生活によって生じた経済的な打撃が夏レジャーの予定にも影響を与えていることが明らかになりました。
結局、人が動かず、外食、観光関連への影響が長期間にわたる懸念も予測されます。
調査2:「Go To キャンペーン事業」の認知度と利用意思
6割以上が「Go Toキャンペーン事業」の利用意思あり、理由は「割引・クーポンが魅力的」
国土交通省・観光庁が主導で実施(予定)する「Go Toキャンペーン事業」の認知度については、「聞いたことがある程度」が59.4%と最も多く、「内容まで理解している」21.2%と合わせて8割以上が同事業を知っているものの、内容まで理解しているのは全体の2割程度にとどまる結果です。
同事業の利用意思については、「利用したい」26.8%、「やや利用したい」39.4%を合わせて、6割以上が利用意思ありと回答しました。利用したい理由として、「補助(割引やクーポン)が魅力的だから」が294人と最も多く、次いで「地域再活性化に貢献したい」が140人と続き、お得にレジャーを楽しめるメリットと地域経済を盛り上げたいという意欲が利用の誘因になっています。
一方で、利用意思のない3割強の理由として、「コロナ感染症が不安だから」が138人と最も多く、各地からの移動が活発化する地域やレジャー施策に対し、3密(密閉・密集・密接)や感染症へのリスクを感じて利用を控えている世帯も多くいます。
「Go Toキャンペーン事業」とは
- Go To Travel キャンペーン・・・旅行業者等経由で、期間中の旅行商品を購入した消費者に対し、代金の1/2相当分のクーポン等(宿泊割引・クーポン等に加え、地域産品・飲食・施設などの利用クーポン等を含む)を付与(最大一人あたり2万円分/泊)
- Go To Eat キャンペーン・・・オンライン飲食予約サイト経由で、期間中に飲食店を予約・来店した消費者に対し、飲食店で使えるポイント等を付与(最大一人あたり1000円分)
登録飲食店で使えるプレミアム付食事券(2割相当分の割引等)を発行。 - Go To Event キャンペーン・・・チケット会社経由で、期間中のイベント・エンターテインメントのチケットを購入した消費者に対し、割引・クーポン等を付与(2割相当分)
- Go To 商店街 キャンペーン・・・商店街等によるキャンペーン期間中のイベント開催、プロモーション、観光商品開発等の実施。
新型コロナウイルス感染症の流行収束後に、日本国内における人の流れと街のにぎわいを創り出し、地域を再活性化するため、観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント業などを対象とした期間限定の需要喚起キャンペーンです。(国土交通省より)
国内旅行の場合、旅行業者を通じて申し込みをすると、宿泊旅行で1泊につき最大補助額2万円とかつてない規模のお得な補助が受けられます。(70%程度は旅行代金から割引され、30%程度は現地で使える地域共通クーポンになる見込み)
キャンペーンのスタート時期は未定ですが、実際に事業が決まれば需要喚起の起爆剤になる可能性は高いです。
調査3:2020年に予定している夏レジャー
今年予定している夏レジャーについては、「国内旅行」が97人で最も多く、次いで「帰省」70人、「BBQ・ビアガーデン」50人と続く結果となりました。「夏祭り」や「プール」、「音楽・野外フェス」といった多くの人が密集する場所の回答は少なく、「海外旅行」に関してもコロナ感染症を懸念して8人とごく少数でした。
また、調査1「夏レジャー予定の有無」の結果同様、「なし(決めていない)」が310人と、全体の6割強の世帯が夏レジャーを控えるまたは様子見であることがわかりました。
特に、感染リスクの高い“3密”の状況になりやすい「テーマパーク」「夏祭り」「プール」「音楽・野外フェス」などは低調な結果となっています。夏のマスクが苦しいという声も多く、お子さん連れの人は特に懸念しているのではないでしょうか。
調査4:2020年の夏レジャー予算
今年の夏レジャー予算について、全体のおよそ7割が「0円(予定なし・決めていない含む)」と回答し、平均値は19,570円という結果でした。金額帯で最も多いのは「50,001円~100,000円」で11.8%であり、「100,001円以上」は僅か1.0%にとどまりました。
コロナの影響は家計まで脅かし、3密を避けるだけでなく、「お金をかけない」世帯が例年よりも多くなる可能性が読み取れます。
2020年の夏レジャー予算
0円(予定なし・決めていない含む) | 68.2% |
1~10,000円 | 0.4% |
10,001円~30,000円 | 9.0% |
30,001円~50,000円 | 9.6% |
50,001円~100,000円 | 11.8% |
100,001円~ | 1.0% |
様々な調査でも夏のボーナスが減ってしまったという比率は意外と少ないです。ただ、そのお金を今後の減収に向けての貯蓄やリモートワーク充実のための家具やPC関連に費やすことも考えられ、結果的に旅行への出費が減っていると思われます。
調査5:2019年に行った夏レジャー(昨対比)
昨年に行った夏レジャーについては、「国内旅行」が185人で最も多く、次いで「帰省」154人、「夏祭り」124人と続く結果でした。今年の夏レジャー予定の回答数と比較すると、「国内旅行」(今年97人)や「帰省」(今年70人)はおよそ2倍の差があり、「夏祭り」(今年23人)は5倍以上の差がつきました。
また、「夏レジャーをしていない」は90人と、今年(310人)と比べて1/3以下であり、多くの世帯が今年の夏レジャーを我慢している姿勢が伺えます。
しかし、夏休みに入って何もしないのもつまらないと、日帰り旅行やイベント参加をする人は増えるでしょう。そういった需要に向けて、感染対策をどれだけ徹底しているかを周知させることも大切です。
調査6:2019年の夏レジャー支出(昨対比)
昨年の夏レジャーの支出について平均値は81,729円であり、今年(予算)と比較して4倍以上の開きがあります。金額帯で最も多いのは「50,001円~100,000円」20.8%であり、中央値も50,000円という結果です。
また、「100,001円以上」の割合では、今年(予算)は全体の僅か1.0%に対し、昨年は15.8%にのぼり、夏の長期休暇を用いて海外旅行や観光などレジャー消費が活発だったことがわかります。
本調査(7月1日時点)において、今年の夏レジャーに掛ける費用は昨対比76.1%減であることが明らかになり、今後の地域経済の回復・活性化に向けて大きく課題が残る結果となりました。
2019年の夏レジャー支出
0円 | 17.6% |
1~10,000円 | 9.6% |
10,001円~30,000円 | 16.8% |
30,001円~50,000円 | 19.4% |
50,001円~100,000円 | 20.8% |
100,001円~250,000円 | 11.8% |
250,001円~500,000円 | 2.2% |
500,001円~ | 1.8% |
ただし、7割弱の人が予算0円となっているため、実際この数値のまま推移するということはなく、結果、日帰り旅行など何かしらの出費で、もう少し数値は上がると思われます。
そうはいっても、“STAY HOME”の流れは暫く変わらなそうなので、「お取り寄せ」など新しい形のレジャー出費が増えそうという予測もできます。
監修者プロフィール
経済ジャーナリスト
酒井 富士子
金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎
代表取締役 酒井 富士子
日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。
リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。