【消費者意識調査】コロナ感染症対策での決済変化~ソーシャルディスタンスの意識で見直されるキャッシュレス決済~

- 新型コロナウイルス感染症対策としてソーシャルディスタンス(社会的距離)の呼びかけがされている中、買い物においても支払時に従業員と接触を減らすためキャッシュレス決済が見直されています。
FP事務所マネセラの張替愛氏監修のもと、全国消費者1,000人に決済時の感染症対策について意識調査を行い、外出自粛要請前と自粛要請中の決済変化を明らかにするとともに、コロナ禍でのキャッシュレスの在り方や消費者の意識変化について考察していただきました。
調査回答者の属性(n=1,000)

- 性別:男性33.1%/女性66.9%
- 年代:20代29.2%/30代33.0%/40代23.8%/50代11.2%/60代2.8%
- 婚姻:未婚47.1%/既婚52.9%
- 職業:正社員40.7%/契約社員・嘱託社員4.2%/派遣社員3.5%/パート・アルバイト11.9%/フリーランス・業務委託契約4.2%/自営業・自由業5.6%/専業主婦(主夫)18.6%/学生4.6%/無職6.7%
- 年収:100万円未満30.8%/100万円以上~150万円未満6.0%/150万円以上~300万円未満24.2%/300万円以上~500万円未満25.9%/500万円以上~700万円未満6.7%/700万円以上~1,000万円未満4.6%/1,000万円以上1.8%
調査1:決済時に新型コロナウイルス感染症対策を意識している?

全国20代~60代男女1,000人に、決済時の新型コロナウイルスの感染症対策意識について調査したところ、「意識している」と回答した人は79.3%と、およそ5人に4人がコロナ予防を意識した決済をしているという結果になりました。
支払時の金銭受渡しや購入した物品を受け取る際など、間接的な接触を免れることができないため、感染リスクを意識する人が多いようです。

このような対策を目の当たりにすることで決済時の感染症リスクを意識し始めた人もいるのではないでしょうか。
今後も長期にわたって多くの店が感染症対策に取り組むことで、決済時の感染リスクはみんなの共通認識になると予想しています。
調査2:新型コロナウイルス感染症対策による決済方法の変化

新型コロナウイルス感染症対策による決済方法について、各決済方法の利用割合が外出自粛前と外出自粛中で比較してどのくらい変化したか調査ところ、「現金」は自粛前に平均およそ5割だった利用率が自粛中にはおよそ3割まで落ち込む結果となりました。一方「クレジットカード」は3割からおよそ4割に増加、スマホ決済(バーコード・QR型決済)」もやや増加する結果となりました。
外出自粛前(4/6以前)決済方法
決済方法 | 0 | 1-3 | 4-6 | 7-9 | 10 | 平均点 |
現金 | 2.1% | 38.2% | 27.4% | 28.2% | 4.2% | 4.7 |
クレジットカード | 16.5% | 47.5% | 24.2% | 11.2% | 0.7% | 3.0 |
デビットカード | 90.1% | 7.0% | 1.8% | 1.1% | 0.0% | 0.3 |
スマホ決済(バーコード・QR型決済) | 54.8% | 35.4% | 8.4% | 1.4% | 0.0% | 1.0 |
スマホ決済(非接触型) | 82.6% | 16.6% | 0.7% | 0.0% | 0.0% | 0.3 |
ICカード(非接触型) | 68.1% | 27.7% | 2.8% | 1.4% | 0.0% | 0.6 |
その他(金券・クオカード等) | 92.6% | 7.4% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.1 |
外出自粛中(4/7以降)決済方法
決済方法 | 0 | 1-3 | 4-6 | 7-9 | 10 | 平均点 |
現金 | 10.5% | 50.8% | 22.5% | 13.0% | 3.2% | 3.3 |
クレジットカード | 16.5% | 37.2% | 22.1% | 22.1% | 2.1% | 3.8 |
デビットカード | 89.1% | 7.4% | 2.1% | 1.4% | 0.0% | 0.4 |
スマホ決済(バーコード・QR型決済) | 50.8% | 32.3% | 13.0% | 3.5% | 0.4% | 1.5 |
スマホ決済(非接触型) | 81.4% | 17.2% | 1.4% | 0.0% | 0.0% | 0.3 |
ICカード(非接触型) | 75.0% | 17.9% | 6.0% | 1.1% | 0.0% | 0.6 |
その他(金券・クオカード等) | 94.7% | 5.3% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.1 |

特に利用が伸びたのは「クレジットカード」と「スマホ決済(バーコード・QR型決済)」です。クレジットカードはもともと所持している人が多く、対応店舗も多いので手軽に利用できたために利用が伸びたと推測されます。また、スマホ決済(バーコード・QR型決済)は自粛期間中も多くのキャンペーンが開催されていたので、節約志向の強い層で利用率が上がったのではないでしょうか。
調査3:スマホ決済利用の変化(外出自粛前との比較)


外出自粛前と外出自粛中における「スマホ決済」利用がどう変化したか比較したところ、利用が増えた店は「コンビニ」が314人と最も多く、次いで「スーパー」が209人、「ドラッグストア」が203人と続く結果となり、比較的単価の低い日常的に利用する店舗での利用が増えている傾向です。
一方、利用が減った店については、「利用が減った店はない(またはスマホ決済の利用なし)」が708人で突出しました。
利用月額については、自粛前の平均値「6,399円」に対し、自粛中は平均値「9,078円」と、約140%に増加したことがわかりました。
外出自粛前(4/6以前)のスマホ決済利用月額
0円 | 49.1% |
1円以上~5,000円未満 | 15.5% |
5,000円以上~10,000円未満 | 9.8% |
10,000円以上~30,000円未満 | 18.9% |
30,000円以上~50,000円未満 | 3.9% |
50,000円以上 | 2.8% |
外出自粛中(4/7以降)のスマホ決済利用月額
0円 | 47.7% |
1円以上~5,000円未満 | 9.1% |
5,000円以上~10,000円未満 | 11.9% |
10,000円以上~30,000円未満 | 19.3% |
30,000円以上~50,000円未満 | 6.7% |
50,000円以上 | 5.3% |

スマホ決済の利用先は「コンビニ」「スーパー」などの生活必需品を買う店が多いです。巣ごもり生活で食費やマスクなどにかける支出金額が増加した家庭もあるようなので、そのことが本調査にも影響している可能性が考えられますね。ただ、利用月額が5万円を超える割合は自粛中でも5%程であることから、自粛前と変わらず「スマホ決済=少額決済」として利用している人が大半であると想像できます。
調査4:クレジットカード利用の変化(外出自粛前との比較)


外出自粛前と外出自粛中における「クレジットカード」利用がどう変化したか比較したところ、利用が増えた店は「ネットショッピング」が358人と最も多く、次いで「スーパー」が284人、「コンビニ」が147人、「ドラッグストア」が137人と続き、外出自粛に伴うネットショッピング自体の需要増加でクレジットカードの利用も増加したとみられる結果です。
一方、利用が減った店については、「利用が減った店はない(またはクレジットカードの利用なし)」が719人で突出しました。
利用月額については、自粛前の平均値「34,028円」に対し、自粛中は平均値「37,902円」と、約110%に増加したことがわかりました。
外出自粛前(4/6以前)のクレジットカード利用月額
0円 | 17.2% |
1円以上~10,000円未満 | 16.1% |
10,000円以上~50,000円未満 | 39.3% |
50,000円以上~100,000円未満 | 15.8% |
100,000円以上~150,000円未満 | 8.4% |
150,000円以上 | 3.2% |
外出自粛中(4/7以降)のクレジットカード利用月額
0円 | 15.8% |
1円以上~10,000円未満 | 13.0% |
10,000円以上~50,000円未満 | 41.4% |
50,000円以上~100,000円未満 | 18.2% |
100,000円以上~150,000円未満 | 7.0% |
150,000円以上 | 4.6% |

オンラインで決済が即完了するクレジットカードは、ネットショッピングと相性が抜群です。なぜなら現金払い(代引きや銀行振込、コンビニ払いなど)を選ぶと、人との接触機会が増えやすくなるだけでなく、余計な手間や手数料が発生することもあるからです。
また、自粛中の利用月額が伸びている要因として、在宅ワークや子どもの休校などの影響で普段よりも支出が膨らんだ家庭が多かった可能性も考えられますね。
調査5:外出自粛中にお店側から要求された決済方法

外出自粛中にお店側から要求された決済方法として、「金銭・カード類はトレーでの受け渡し」が421人と突出し、次いで「クレジットカードの挿入は自分で行う」が17人という結果でした。直接的な硬貨・紙幣の受け渡しやカード類のやりとりを減らすことが店舗での拡大防止策として広く浸透していることが明らかになりました。

ただ、感染症の流行が長引けば「現金のみでの支払要求」をする店舗が増える可能性があります。なぜなら、キャッシュレス決済は店側にとっては手数料や入金までのタイムラグが発生するため、店の経営が苦しくなるリスクがあるからです。
今後キャッシュレス決済がより普及するためには、経済の早期回復が不可欠と考えられます。
調査6:感染症対策の決済方法に関する消費者意識

感染症対策として良かった決済方法では、「クレジットカード」484人や、「スマホ決済(バーコード・QR型決済)」354人が挙げられました。
良かった利用先では、「スーパー」491人や、「コンビニ」456人が多く、その理由をとして、「支払時に接触が少ない」が754人と突出する結果でした。支払時の接触による感染を恐れる声が多いため、直接的なやりとりが少ない決済方法が好まれ、また日常的に利用する店舗でそれらを利用できる点について、メリットを感じる人が多いようです。

感染症対策として困った決済方法では、「現金」256人、利用先では「スーパー」161人が多く、その理由として、「支払時の接触が多い」239人の他、「ATMに行く必要がある」という声が挙げられました。
また、いずれも「困ると感じた(決済方法・利用先)はない」が突出して高く、手軽なキャッシュレスが普及したことで、感染症対策の決済方法に関して困ったり不便に感じたことは少ないという結果でした。

感染症対策になると見直されるキャッシュレス決済ですが、従来から不正利用などのセキュリティ面への不安や、お金の使い過ぎを懸念する声が根強く挙げられています。今後よりキャッシュレスが発展するためには、コロナ禍で不正利用が増えないことや、個々がキャッシュレス決済でも家計管理できる能力を習得することなどが課題として考えられるでしょう。
監修者プロフィール

FP事務所マネセラ
張替 愛
FP事務所マネセラ
張替 愛
大学で心理学を学んだ後、国内損害保険会社に就職。夫の海外赴任による退職を経て仕事とお金のことで悩んだ経験から、教育費・住宅購入・老後費用・資産運用・ママの働き方・海外赴任準備など、相談者の気持ちに寄り添った家計相談を行う。同時に、執筆やマネー講師など、幅広く活動する。2児の母でもある。