子育て支援新制度の内容は?子どもの保護者にメリットがある制度なの?

博士!平成27年4月にスタートした「子ども・子育て支援新制度」ってどんな制度なんでしょうか?
新制度は子どもを持つ親にとって本当にメリットがあるんでしょうか・・・?
平成24年8月に成立した「子ども・子育て支援法」と関連法に基づいてスタートした制度じゃな。
幼稚園と保育所の二重行政、減らない待機児童、認可保育所と無認可保育所の格差、加熱する保活(保育園探し)など、さまざまな問題を解決するための保育制度改革だと政府は説明しているが、実際はメリット以前に見逃せない問題点も多々あるのじゃ。
保活に出遅れないためにも、ママさんたちは内容をしっかりチェックしておくべきじゃな!

平成27年4月スタートの子ども・子育て支援新制度とは?

まずは子ども・子育て支援新制度がどんなものなのか、概要を見てみよう。

◆幼稚園の教育と保育所の長時間保育という、それぞれの良いところをひとつにした「認定子ども園」を広める。

◆幼稚園,保育所,認定こども園の職員の配置改善や待遇の改善。

◆小学校入学後の児童を放課後に預かる「放課後児童クラブ」の充実。
◆待機児童が問題となっている0~2歳の子どもの預け先として、以下の地域型保育を市町村が広める。
・子どもの定員5人以下で家庭的保育を行う「保育ママ」
・子どもの定員6~19人で家庭的な雰囲気で保育する「小規模保育」
・企業の保育施設などで従業員の子どもと地域の子どもを同時に保育する「事業所内保育」
・保護者の自宅において1対1で保育を行う「居宅訪問型保育」

◆子育てに関する相談を受け付ける子育て支援員や、各保育施設を保護者に紹介する保育情報アドバイザーを増やす。

◆住民に最も近い自治体である市町村が、地域の実情に合わせて5年間の「子育て支援事業計画」を作成する。

◆すべての保育施設を利用するためには、保護者は利用のための認定を受けなければならない。
・1号認定:子どもが満3歳以上で、幼稚園等での教育を希望。主に専業主婦(夫)世帯が対象。
・2号認定:子どもが満3歳以上で、保育所等での保育を希望。主に共働き,シングル世帯などが対象。
・3合認定:子どもが満3歳未満で、保育所等での保育を希望。主に共働き,シングル世帯などが対象。

◆保育料は、国が定める上限額の範囲内で市町村が決定。
・所得に応じて保育料が異なる。幼稚園等は5段階(無料~月額25,700円)、保育所などは8段階(無料~月額104,000円)。
・第2子の保育料は半額、第3子以降は無料。ただし、幼稚園においては小学4年以上、保育所においては小学1年以上をカウントに入れない。
・給食やバスなどは実費負担で、上乗せの利用料が必要となる。
・保育所の利用については、保育認定によって、11時間の「標準時間保育」と8時間の「短時間保育」に区分される。

新制度のデメリット① 保育料の実質増額

「保育料は、国が定める上限額の範囲内で市町村が決定」って、結局高くなるのか安くなるのか、よくわかりません・・・。
残念ながら、現状で保育料はそんなに安くなっていない。
むしろ様々な要因で経済的な負担が増えることの方が多いくらいじゃ。

制度上の保育料はそれほど変わらない

市町村によって保育料の設定はまちまちですが、政府は保護者の負担減をうたっているわりに、幼稚園においても保育所においても、保育料はそれほど減額となっていません。

それどころか増額となっている自治体もあります。

第2子以降に半額や無料の措置がありますが、小学校1年以上をカウントに入れないのであれば、無料の恩恵を受ける第3子を保育園に預けるケースはまれです。

無視できない実費負担

「制度上の保育料は変わらない」けれど、ここには給食やバス、施設費や教材費、行事費などは含まれていません。

これまではそれらを保育料に含める施設がたくさんありました。

これが実費負担となると、事実上保育料は増額となるのです。

職場で残業を言い渡されたら、上乗せ保育利用料が発生

保護者の「保育が必要な事由」によって、自治体が11時間または8時間のどちらかで保育時間を認定します。

そしてこの上限時間を超えると、保育料が上乗せされるのです。

労働者(しかも子育て世代の多くは若年労働者)を取り巻く環境は相変わらず厳しく、上司から残業を言い渡されて断ることは難しいのにもかかわらず、子どもの保育時間が上限を超えると、割り増しで保育料が発生します。働く親にとっては過酷なデメリットですね…。

新制度のデメリット② 保育の格差

保険料の実質的な負担が増えるのは確かにツラいけど…、負担が増える分、それだけ保育の内容が良いものになるってことでしょうか?
そう願いたいところだが、新制度の下では子どもが受ける保育の内容に格差が生じる可能性がある、ということも問題になっているのじゃ。

認定こども園がもつ、そもそもの保育格差

政府がこの新制度とともに拡充しようとしている「認定こども園」は、以前から運用されている制度です。

認定こども園とは、平日昼過ぎまでの幼稚園教育を行いながら、その時間以外にも保育が必要な子どもについては保育所のように保育を行う施設。

しかしこれが今ひとつ広まらないのは、子どもと直に接する現場の教諭や保育士がこの制度を評価していないからです。

子どもも幼稚園に入園するような年齢になれば、自我が芽生えて友達関係もできます。

友達同士が、あるグループは14時で帰宅し、あるグループは18時まで園で活動しているとなれば、経験に差が生じて翌日の指導が困難になることが考えられます。

認定こども園という制度は、健全に成長する子どもの姿を想像して設計されたものであるかというと、正直なところ疑問が残ります。

この認定こども園が、新制度において拡充されようとしているのです。

大規模施設と地域型保育の格差

走り回れる広い園庭、砂場で泥遊び、全身を使ってジャングルジムによじ登る、夏にはプール、雨の日でも先生の弾くオルガンに合わせて楽しくリズムダンスができる…。

これこそが、保護者が小学校に入学するまでに子どもに経験させたいことではないでしょうか。

今までの幼稚園や保育所では、当然のようにこれらの活動が行われてきました。

しかし、政府が待機児童問題の解消を狙って実施するのは、子どもの定員が5人以下や19人以下といった地域型保育の普及です。

「家庭的な雰囲気」という捉え方もできますが、そこに先に述べたような豊かな活動はありません。

やむなく地域型保育に預けられた子どもと、従来型の幼稚園や保育所に預けられた子どもが受ける保育内容には、大きな格差があります。

にもかかわらず、どちらも保育料は同じです。

新制度の問題点③ 求職活動中の保育は?

待機児童問題とともに問題視されてきたのが、育児休暇や休業を取得しないで退職した親が再就職活動をしたいときに子どもの預け先がないという事態。
そのために、一度退職した親の再就職機会は狭められてきたのだが、新制度でこの問題も改善されていないのじゃ。

働いていないなら、保育が必要と認定されない!

新制度においては、「育児が必要な事由」を行政が家庭ごとに判断して1号から3号の認定をし、2号と3号についてはさらに「標準時間保育」か「短時間保育」かを認定します。

しかし、認定を申請した時点での家庭の状況が評価されてしまうので、求職中には保育所を利用できないどころか、新制度によって地域型保育の利用も難しくなります。

なんだかこの新制度、子どもを持つ親にはだいぶ厳しいものなんですね…。
政府は両親の共働きを推奨して労働者を確保しておきながら、より高い保育料を負担させて、子どもには質の落ちた保育を用意しようとしている、とも捉えかねない内容じゃな。
子どもたちの将来を考えれば、声を挙げて本当にメリットのある制度設計を政府に求めていくべきだと思うぞ。

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