押さえておきたい老後の資産運用3つのポイント
目次
思わぬ「老後の資産運用」の落とし穴にご注意を
「人生100年時代」最近よく耳にするキーワードです。人生100年と考えると、引退後の生活に十分な時間があります。そこで気になるのが老後の資金計画ではないでしょうか?ただ貯金を切り崩すだけでの生活では貯金が底をつきます。
そこで考えたいのが「老後の資産運用」です。今まで資産運用の経験がない方は思わぬ落とし穴にはまらないよう注意が必要です。
老後の資産運用を考える前に、押さえておきたいポイントをみていきましょう。
ポイント1:運用に回していい資金はどれくらいあるの?
資産運用を検討されている方のご相談に多いのが
「今銀行の定期預金に500万あるんです。銀行に預けていても金利がつかないので何かいい運用方法ないですか?」というご相談です。
銀行に預けていてもわずかな金利しかつきませんので、何とかしたい気持ちはよくわかります。
ここでご相談者に確認させて頂いているのは
そのお金はどのような目的のお金なのか?ということです。
例えば
現在保有資産の総額が500万なのか?
2000万ある保有資産の一部が500万なのか?
当たり前のことですが、500万の意味合いが違ってくるのです。
資産運用の商品を選ぶ前に、これからの生活にどれだけの資金が必要か?家計の現状把握をすることで、ご相談者にあった資産運用を行うことができるようになります。
ライフプラン表を作成して資金計画を
運用に回せるお金を試算するために、家計の現状を把握しておく必要があります。
キャッシュフロー表と呼ばれたりしますが、まずは可能な範囲で必要な資金を「見える化」していきます。まずは下記の項目をチェックしていきましょう。
- 収入を把握:公的年金・私年金 等
- 月の支出を把握:月払いで支払っている費用や日々の生活費等
- 年間の支出を把握:年払いで支払っている費用(自動車任意保険・税金等)
- 大きなライフイベントを想定(車の買い替え・住宅リフォーム・お子様の結婚資金等)
各項目の情報が収集できたら試算が必要なのですが、自分で作成するのは大変ですよね。
目安程度にはなりますが、日本FP協会のホームページでシミュレーションが可能です。
例えば上記シミュレーションを利用して下記のような試算をしてみました。
65歳夫婦
年金(私的年金含む)収入250万
1ヵ月の生活費 30万 ※年払いの支出も按分して反映
結果、88歳で貯蓄が底をつくという試算となりました。
ここでのポイントは、
- 88歳で底がつくということが考えられる → 対策が必要
- 65歳から75歳までの10年間1500万の預金は下回らない
- 65歳から80歳までの15年間750万の預金は下回らない
上記3点を把握できたことです。
例えば65歳から80歳までの15年間は750万を原資に運用ができる。という目安ができたことになります。
この他にも介護のリスクなど様々な要素を考慮する必要はありますので、ご自身にあったシミュレーションをご希望の方はファイナンシャルプランナーに相談したり、ご自身で資金計画書を作成して把握していただくといいでしょう。
まずは、運用に回して問題ない資金がどれぐらいなのか?を把握することが大切です。
何の準備もなく退職金の大半を運用商品につぎ込むなどは、なるべく避けるのが賢明です。
ポイント2:資産運用を始める前に自分の考え方・目的を整理する
ライフプラン表を作成して老後の資金計画を把握ができたので、運用資金の目安もつきました。次に考えていただきたいのは資金の目的と運用期間です。
自分の資産を3つの目的・期間に分けて考えることをお勧めしています。
まず保有資産を
① 「短期資金」
② 「中期資金」
③ 「長期資金」の3つに分けていきます。
「短期資金」とは、日々必要な生活費や住居費など毎月出入りがある「費用」になります。この資金は、流動性(すぐに使える状態)を重視したいので、銀行や郵便局の普通預金・定期預金を活用するといいでしょう。
短期資金に用意しておく金額の目安ですが、1ヵ月に必要な生活資金の最低6ヵ月分が目安となります。
1ヵ月に必要な生活資金 25万×6ヵ月分=150万
短期資金が十分準備できた上で、資産運用を考えていきましょう。
次に「中期資金」「長期資金」について考えていきます。
「中期資金」は、今すぐ手元にある必要はないとないけど10年後ぐらいには使えるようにしておきたい資金で、10年目安でお金を殖やす資金です。
例えば、車の買い替えや住宅修繕などの将来必要となる資金目的で運用していきます。
「長期資金は」は10年以上かけてお金を殖やす運用を目的としていく資金です。2018年1月からスタートした積立NISAは積み立てを開始してから20年間の運用益が非課税になる制度です。10年以上運用できる資金が確保できる方は、積立NISAを活用して資産運用を始めるのも一つの選択肢です。
このように現在保有している資産を3つの目的・期間を設定して考えると、商品の特性を活かした資産運用が可能になります。中期資金・長期資金を10年という節目で区切っていますが、あくまでも一つの目安としてお考えください。
運用商品を選ぶ前に自分の運用方針を決めておく
資産運用は、いい時ばかりではなくマイナスになるようなことも十分考えられます。
過去、経済が低迷しマイナスになった時期の一部出来事をみてると
・ITバブル崩壊後の「同時多発テロ」
・サブプライムローン問題
・リーマンショック
・東日本大震災
このように、「テロ」「自然災害」にも影響を受けるケースもあります。ただ、ここで知っていただきたいのは、長い目でみるとマイナスの時期を経て景気は回復している。ということです。
このような事実を加入前に十分理解していたつもりでも、いざマイナスな状況になると
「資産がマイナスになっているのですが大丈夫でしょうか?」
「株価が下がっているので不安なんです」 など相談が増えるのも事実です。
日々不安を抱えながらの資産運用を避けるためにも、
自分の考え方をまとめてから加入することを、お勧めしております。
加入する前に考えるポイント
- 平均利回りは何%を目標にするか?
- 元本割れに対する許せる範囲は?
ある程度自分の許容範囲を事前に決めることで、資産運用開始後に考えられるマイナスな状況にも冷静に判断することが可能です。
マイナス状況になると、他の運用商品にすぐに切り替える方がいます。マイナス時点で切り替える。を繰り返していると、資産はどんどんマイナスになりますので、長い目でお金を殖やしいていく。という気持ちも大切になります。
ポイント3:高い利回りを目指すよりも資産を減少させない運用を
老後の資産運用では、高い利回りを目指すよりも資産を減少させないように意識することが大切になります。老後の資産運用を考える際、収入がなくなる不安から「少しでも高い利益が欲しいけど、資産が減るのは困る。」と考える方が多いですが、高い利益を目指す=大きなリスクの可能性もあるのです。
老後の資産運用を考える上では、資産が大きく減るリスクがある株式を避け、債券を厚くするのが王道とされています。
どのぐらいの株式比率を保有したらいいのか?
株式保有比率の目安として、100-年齢=株式比率という考え方があります。
例えば65歳の方であれば
100-65=35 となりますので、株式35% 債券65%で運用商品を選ぶ目安となります。
運用商品を選ぶ際は「人気があります!」「高い利回りが期待できます!」というセールストークに流されずに、ご自身の目的を相手に伝えた上で、希望の商品を見つけていくようにしましょう。
老後の資産運用を賢く活用して楽しい時間を!
ここ数年、株式市場が好調なこともあって投資への関心が高まっているのを感じます。それと同時に「こんなはずではなかった・・・」という相談も増えています。
金融商品を販売する方に「いい商品があります」と紹介を受けて加入しました。
という声を聞きますが「いい商品」とは何でしょうか?
運用利回りがいいから?実績があるから?
「いい商品」って魅力的ではありますが、まずはその商品が皆さんに必要なのか?
冷静に判断する必要があります。資産運用をすることで、お金を殖やすことが期待できるのも事実です。老後の生活がより充実した時間になるよう賢く活用していきたいですね。
執筆者
岩渕 昇/ファイナンシャルプランナー
結婚を機にお金のやり繰りに直面。お金の知識の必要性を実感し、その勢いでFP会社へ転職。「"今"を賢く使って、家族の"未来"を豊かに」をモットーに、将来を見据えたライフデザインへのアドバイスを提供。現在は、個人相談のかたわら、低金利時代でも賢く資産を殖やすためのヒントを、企業研修やブログを通じて広く発信している。