老後資産の運用は超長丁場!最適な貯め方と運用の心得
年金額の減少や物価の上昇、「長生きリスク」という言葉が使われる程に伸びた寿命。幸せな時代なはずなのに、私たちの老後への不安は尽きません。
不安の原因は老後の生活費。でも心配な割に「老後のための資産づくり」を後回しにしてしまうのはなぜでしょう。
老後の準備は超長丁場で取り組んでいくべきもの、うまく貯めて上手に増やし続けるにはコツがあります。老後資産を上手に貯める方法と、運用の心得をご紹介します。
目次
年金以外の老後資産が必要な時代
年金や退職金だけで老後の生活をカバーできたのは過去の事。今は老後の生活のために年金以外のお金が必要な時代になりました。
その理由はさまざまですが、少子化などで年金財政が厳しくなり、1人当たりの年金受給額が減少していること、少しずつ確実に物価が上がり続けていること、医療の発達などで長生きが普通になったことなどが挙げられます。
そうして誰もが年金プラスアルファの老後資産を準備する時代になったのです。
老後資金が貯められない3つの原因
誰もが危機感を持ち必要性を理解しているのに、どうして老後のための資産づくりを後回しにしてしまいがちなのでしょう。それには現実的な問題や心理的な理由などが考えられます。
「老後」の優先順位が低い
老後とは具体的に、主な収入源となる仕事を退職した時から寿命が尽きるまでを指します。働きざかりの世代にはまだまだ先に思える話、老後のために何かをする優先順位は高くはありません。教育費や住宅ローンなどの出費が多い家庭も、今かかるお金で手一杯となり、自分達の老後の優先順位は下げてしまいがちです。
ところが人生100年ともなる時代、例えば65歳以降を老後と考えたとしましょう。35年分の生活を支える資産を作らなければいけないのです。ローンや教育費が落ち着いてから貯め始めるとすると、多くの家庭では老後までに10年あるかどうかです。それでは貯めるための十分な期間があるとは言えません。
老後の計画が漠然としすぎている
どんなことでも、具体的でない目的に向かって努力するのは難しいことです。退職後の過ごし方のビジョンがないと、具体性に欠けているので老後に対して努力することを難しくします。
「老後に必要なお金は〇千万円!」などの情報があふれていまが、必要とされる金額はピンからキリまでで混乱します。ざっと検索してみたところ少な目では1500万円から多めでは1億円程、さまざまな「必要となる」数字が出てきました。
あまりに大きすぎる金額を目にして「絶対無理」と考えて貯め始める前からギブアップしてしまうのも、老後の資産づくりを後回しにしがちな原因の一部です。実際にはいくら必要なのか、それは老後の計画をある程度具体的に決めて初めて分かるものです。
それでも基準となる「平均的な」老後資産額を知っておくのはいい事です。厚生労働省から参考になる数値が発表されています。平成28年度の世帯主60歳以上の家庭における純貯蓄額は、平均約2,250万円ということです。
老後は嫌な事?
ちょっとした工夫で老後を楽しみに捉えることも難しくはありません。例えば老後のプランを現在の生活に関わらせることを、私も常に心がけています。
例えば「キャンピングカーで日本とオーストラリアを一周する」という夢があります。資金作りの励みにするため、キャンピングカーの値段はよくチェックしますし、実物をショールームに見に行ったこともあります。健康でないと叶えるのが難しい夢なので健康維持にも気を使っています。計画が実現できる時を考えるだけでワクワクします。
「老後」という言葉から外見や身体的な衰えを連想して、老後を嫌な事として捉えてしまう人もいるのではないでしょうか。その場合は「老後」という言葉を意図的に使わず、「リタイヤ後」や「第二の人生」など、自分が抵抗のない言葉に言い換えるだけでも、老後に対する消極的な姿勢を改善することができたりします。
老後のために貯めるコツ
では具体的にはどうしたら、老後資産をうまく貯められるのでしょう。
まずは具体的な目標金額を知る
目標金額を決めることが貯蓄の効率を上げる第一歩です。そのためにはまず、老後に送りたい生活の計画を立てましょう。なるべく具体的に計画した方が、正確な金額を知ることができます。例えば次のような感じです。
夫婦で年に1度の欧州旅行を楽しみに、家庭菜園などを楽しみながらのんびり過ごしたい人。旅行代を年間80万円程予定する必要があります。家庭菜園があれば食費は平均より安く見積もっても大丈夫かもしれません。
海外に移住して日本と行き来しながらアクティブに暮らしたい人。その場合は飛行機代、家の維持費などに加えて、移住先のインフレ率も考慮する必要があります。例えば気候が良く物価の安い東南アジアに移住したい場合、物価の上昇度によっては生活が厳しくなる可能性もあるからです。
家族のために我慢してきたけれど退職を機に離婚して自分の人生を楽しみたい人。年金や退職金を分割した分では暮らせない可能性が、夫婦2人の生活よりも高くなります。ですからすぐにでも収入を増やし、老後も何らかの収入を得続ける方法を考える必要性が出てきます。
でも「何歳まで生きる予定」なのかを考える必要はありません。いつ死ぬかは分からないもの、平均寿命を参考にしましょう。内閣府が発表している調査結果によると、2030年の日本人男性平均寿命は82.39歳、女性は88.72歳。2050年では男性は84.02歳、女性は90.40歳となっています。
平均寿命の推移と将来推計
計画を元に大体いくら必要かを算出し、その金額から年金受給予定額や退職金予定額を差し引きます。それが老後の資産として作り上げたい金額です。
積立で気づかないうちに貯める
毎月決まった金額を貯めていく積立は、長期で取り組みたい老後資産づくりに効果的です。給料天引き、外貨や投信での積立、変わったところでは仮想通貨での積立など、さまざまな金融商品が積立に対応しています。
積立を続けるコツは、無理のない金額を設定して生活が大きく変わった時はそれを機に見直す事。できるだけ止めることはせず、金額を変更してでもなるべく長く続けることです。
次にご紹介する積立NISAなどでも、必要に応じて積立金額を増減可能な商品もあります。
税制面で優遇されている金融商品を利用する
節税できる金融商品は、長く続けたい老後資産の運用に適しています。例えばNISA(少額投資非課税制度)、積立NISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)などです。
NISAは年間120万円×最大5年間非課税で運用できます。iDeCoは、掛け金が全額所得控除の対象で運用益が非課税となります。積立NISAは年間40万円×最大20年間非課税で運用できます。
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1年ではわずかな金額でも、数十年単位でみるとそれなりに大きな額になります。長丁場の老後資産運用では「ちりも積もれば山となる」という言葉を忘れずに、使える仕組みは上手に利用していきましょう。
老後資産の運用の心得
近い将来のために慌てて老後の資産を運用する人も、数十年後のために老後資産を貯め始める人も、覚えておきたい老後資産の運用の心得は次の4つです。
預けているだけでは十分な運用ではない
超低金利時代の今、銀行にお金を預けているだけでは十分な運用とは言えません。普通預金の金利は0.001%ですが、2018年の物価上昇率の見通しは1.3%と言われています。付く利子の額は実際に物価が上がる額よりも少ないため、預けているだけでは目減りしてしまうのと同じことなのです。
運用リスクとの付き合い方は慎重に考える
お金を運用する時にどのくらいのリスクを取るか、「リスク許容度」は人ごとに、またはライフステージによっても、運用の目的によっても違います。そのため一概には言えませんが、明らかに取るべきではないリスクもあります。
例えば老後の準備を始めるのが遅くなって焦り、退職金を倍に増やそうとして経験が全くないのに、退職金全額を株や仮想通貨のデイトレードの資金にしてしまう。これは絶対に取るべきではない無謀なリスクです。
細く長く続ける
老後の資産を作り始めるのに早すぎることはありません。早い段階から少しずつでも、できるだけ長い間継続しましょう。例えば積立なら、必要に応じて積立金額を増減させることで長く続けられます。
ある程度まとまった老後資産を運用しているなら、気を付けたいのは目的のすり替えです。老後資産だったはずが、いつの間にか例えば教育資金など別の目的に使ってしまうなどということは、実はよくあります。どうしても老後資産に手を付ける必要が出てきても、なるべく運用額の減額に留めるようにしましょう。
現役中は増やし老後は守る
現役中は増やすことを考えて投資する人も多いでしょう。一方で老後は運用がメインになります。老後はリスクをなるべく取らず、資産を守りながら使っていくということです。なぜならもし老後に資産が大幅に目減りしても、挽回することが難しいからです。現役時代ほどの収入がない場合や取り戻せる期間も少ない場合がほとんどですから、守りに徹しましょう。
少しでも早く老後のお金を考える
誰もが必ず迎える老後は、自分が自分のために暮らせる新たな人生のステージです。長い老後を思い通りに暮らしていくために必要なのは、自分自身と希望を叶えるための資産です。そのための資金は多いに越したことはありません。ですから老後の資産対策を始めるのに、早すぎることはないのです。
まず老後にしたいことを考え、必要な予算を割り出し、それに向かって貯蓄や節約などできることから始めましょう。
執筆者
サーロー清雅(さやか)
豪州在住フリーライター。外資ITコンサルティング企業、米系運用会社にて日本、インド支社勤務後に退職。異文化で海外準富裕層の資産形成に対するスタンスやお金との付き合い方を垣間見る。日本人の金融リタラシー向上へ貢献することをモットーに、国内外の資産運用・投資情報など、人生を豊かにするためのマネー情報を発信中。