老後破産ってどういう状態のこと?
NHKのドキュメンタリーや日経ビジネスの記事などで話題になり、「老後破産」というワードをよく見かけるようになりました。
「フルタイムで働いて年金もしっかり払っている私には関係ない問題だ」、と考える人もいるかもしれませんが、果たしてそうなのでしょうか。
将来自分が、今日食べるお金にも困るという状況になるとは想像もできないと思います。
しかし、様々な要因により今の高齢者よりもこれから高齢者になる人たちの方が老後破産に陥りやすい環境になっています。
老後破産とはどういう状態なの?
まず、「老後破産」とはどういう状態のことを指すのでしょうか。
簡単に説明すると、高齢者が生活保護受給基準以下の収入しかなく破産状態の生活を送らざるをえないという状態のことです。
特に独居老人の貧困が問題になっています。
NHKスペシャルによると、約600万人いる独居老人のうち、約300万人が貧困状態であり、このうち約70万人が生活保護を受けています。
生活保護受給基準以下で暮らす貧困状態であっても生活保護を受けずに、毎月の年金のみを頼りに生活している独居老人は約200万人。
かつては企業で働き、退職金もしっかりもらって余生を過ごし始めた世代が貧困にあえいでいるのです。
これから高齢者になっていく世代は、今の高齢者よりも退職金や受給年金額が減っている分、若いうちから真剣にこの問題に取り組む必要があります。
保険料滞納額でみる老後破産の兆候
厚労省の統計によると、65歳以上の人が支払う介護保険料の滞納で市区町村から資産の差し押さえ処分を受けた高齢者が1万人を超えたそうです。
生活が苦しくて保険料を納めることすらできない65歳以上の人が増えてきているということです。
年金を頼りの綱にしてなんとか生活してきた人々がいま、深刻な状況を抱えています。
早い年齢から日々の生活費を見直し、定年退職までにしっかりと貯蓄して年金生活に入れるように計画的に資産形成していくことが大事です。
[macth url=”https://www.money-book.jp/2137″]
老後破産と子どもの将来の関係性
自分たちのために貯蓄できる期間が減っている
今の40代~50代は特にバブル世代と言われ、消費に対して寛容な部分があります。
また、晩婚化により50歳を越えても子どもの教育ローンや進学資金、住宅ローンなど多くの借金を背負っている人が増えました。
その中で、老後のことも考えてしっかり貯金をする、というのもなかなか難しくなってきています。
●年収1000万円以上世帯の貯蓄ゼロ割合(金融資産非保有)
年収 | 平成28年 |
1,000~1,200万円 | 20.3% |
1,200万円以上 | 8.7% |
家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成28年度)
年収1000万円以上の所得がある人でも金融資産を持っていない人がいるという現状があります。
収入があっても意識して老後資金の準備をしていなければ十分な資金はたまらないということですね。
引きこもり人口の増加
また、老後破産に関わるのは子育てに関する費用だけとは言えません。
社会的な問題になっている「子どもの引きこもり」が老後破産の原因になっていることもあります。
「子どもの引きこもり」ですが、近年では30~40代になっても会社で働かず、部屋に引きこもって生活をする人が増えています。
内閣府の調査によると、30~39歳の約38万人がニートとなっています。
30~34歳は約18万人、35~39歳では約20万人となっています。
国の調査で把握している人数ですので、実際はこの数よりも多いと予測されます。
派遣労働者やフリーターのようにお金を稼いで家にお金を入れている場合と違い、引きこもりになってしまった場合はお金を稼ぐこともできません。
子供が家にお金を入れるどころか、食費や光熱費などの生活費を親の年金収入に頼る形になっている高齢者世帯が増えています。
そうして夫婦の老後資金で子どもを養う中で、退職金や運用してきた金融資産、年金だけでは生活できない状況に陥ってしまうのです。
塾や習い事に通わせ大学を卒業させても、残されたのは奨学金や教育ローンなど返済だけということもあります。
就職活動での失敗や鬱・ストレスが原因で働けない若年層の増加が、親である高齢者世帯の家計を圧迫しているのです。
老後は医療費など若いころとは違う出費が増える
さらに年をとると、医療費がかさみます。
厚生労働省の調査によると、国民が医療に掛けた年間費用の総額である国民医療費は1人当たり、65歳未満は17万9,600円、65歳以上は72万4,400円となっています。
(平成26年度「国民医療費の概況」より)
高齢になればなるほど重病を患う可能性も高くなります。
がんなどの大病を患った場合、老後の生活費に準備していたお金が医療費へと消えていくこともあるんです。
そんなときに医療保険に加入していれば、入院給付金や手術給付金を受け取ることができ、ケガや病気になった時にも安心できます。
先進医療や高度な医療には多くのお金がかかり、闘病生活が長引けばベッド代や薬代もバカになりません。
最新治療を選択した場合、全ての治療に保険が適応されるわけではないので、家族のために最良の治療を選ぶうちに貯金が底を突くことも十分にあり得るのです。
老後資産はだいじょうぶ?
現在の日本は低金利の時代が続いています。
定期預金では年金利が0.1以下の銀行が増えています。
今の日本では銀行にまとまったお金を預けても金利は微々たるものです。
銀行の定期預金に代わる老後資金のための資産運用として、貯蓄型の生命保険や不動産投資、投資信託や個人型確定拠出年金などさまざまな方法があります。
例えば、貯金が2000万円あったとして、月々20万円ずつ切り崩していくと12年程度で貯金が底を突いてしまいます。
平成27年の日本の平均寿命は、男性が80.79歳。女性が86.83歳です。
65歳で定年を迎えて、そこから12年、貯金を切り崩しながら生活をしていくとしても、大きな病気を患ったり、住宅ローンの返済が残っているとかなり不安な額に思えますよね。
これから高齢を迎える私たちは、日々の節約や貯蓄はもちろん、資産運用もうまく組み合わせて老後破産に備えていきたいですね。