保険でがん闘病中における毎月の収支悪化を防ぐには?

がんにかかるとこれまでと同じように仕事をすることが難しくなり、収入が減少する人が多いと言われています。

がんによる収入減少に保険で対策を打つ場合、収入確保だけでなく支出の減少という形をとることもできます。

がん患者の就労促進が進むも厳しい現状

がん患者が安心して暮らせる社会を目指す「がん対策基本法」が平成18年に出来ました。

平成28年の改正では、企業が事業主の努力義務としてがん患者に対する就職や雇用継続への配慮に努めることが明記されています。

がん患者就労支援は企業側の理解がすぐには進みにくい

がん対策基本法が改正されたからと言って、がん患者がすぐに仕事と治療の両立ができるようになるわけではありません。あくまで企業が働けるよう環境整備しないといけないからです。

どのように企業が就労支援すべきかを、厚生労働省がガイドラインで示しています。患者の主治医に業務内容の詳細を提供して書面を作成してもらったうえで、企業にいる産業医にも意見を聞くことが一つの方法です。

しかし、企業側の負担も重く、またがん患者の就労支援をやらないからと言って罰則があるわけでもありません。

実際のところ、がん患者に働いてもらうのは厳しいと感じる企業もあります。代替人員もいる大企業は就労支援がしやすいですが、少人数で業務を行う中小企業は仕事と治療の両立支援は大変なところが多くなります。

収入確保と支出軽減の2通りの方向性が考えられる

がん闘病で会社に勤め続けるのが難しくなった場合、給与がもらえなくなり、家計が苦しくなることが考えられます。さらに、生活費の他、医療費が重くのしかかってきます。

特に子供がいて一家の大黒柱である場合は、教育費もかかるためより大変です。

がんで家計が苦しくなることに対して保険で備える場合、いわゆるがん保険で備えることが考えられます。

ただ就労できなくなり給与がもらえなくなった場合、がん保険で医療費と給与分をまで補えるでしょうか?

入院給付日額10,000円のがん保険を契約した場合、1カ月入院したとして約30万円はもらえることになります。

ただ、入院している間も医療費はかかりますので人によっては給与分を賄えないことも考えられます。

お金を計画的に使えるかも、人・世帯によるところがあります。例えば貯蓄が十分でなく自転車操業的に資金繰りをしている世帯、十分な貯蓄があり計画的にお金の収支をコントロールしている世帯など様々です。

前者の世帯では、がん闘病中の収支を安定させる対策をうっておく必要があります。

そこで、がん闘病中も日々・月々の収支を安定させたい場合には、

  • 保険で月々の収入を確保する
  • 生活費・住居費などの支出を減らす

の2つの点方法が考えられます。

1.保険で月々の収入を確保する

がん闘病中に毎月の収入を確保する手段としては、アクサの「収入保障」のがん保険のような収入保障保険を考えてみる価値があります。

社会保障制度によりもらえるもの

社会保障制度により病気で休業中に職場の健康保険からもらえるものが傷病手当金です。

ただし、もらえるのは月給のおよそ3分の2で、1年6ヵ月までという上限があります。

長期の病気休業になった場合、途中からもらえなくなる恐れがあります。

また個人事業主や零細個人事業所の従業員で、国民健康保険に加入している場合には、傷病手当金はもらえません。

1年6ヵ月を過ぎると、所定の障害状態にあてはまれば障害年金がもらえます。がんの場合でももらえる場合はありますが、必ずもらえるわけではありません。

社会保障制度には限界があるので、民間保険で収入確保を考える必要もあります。

収入を保障するための保険は

がんになった場合に限定しない形でまずふれておきます。1.のように月々の収入を保障する保険としてアフラックの「給与サポート保険」というものがあります。

これは被保険者がケガや病気によって就業不能になった際に、月々の収入を確保するものです。

また被保険者死亡後の遺族に、定期的な収入が得られる収入保障保険もあります。

がんになった場合に関しては、アクサ生命が「収入保障」のがん保険を取り扱っており、これからご説明します。

もともと収入保障保険は、被保険者が死亡した場合に遺族の生活費を保障するための保険です。

死亡保険の一種で、死亡保険金が一括ではなく毎月一定額(例えば月30万円など)、保険期間終了まで支払われます。

収入保障保険の保険期間の決め方ですが、例えば被保険者が60歳になるまでなど、一定年齢を保険期間の終了時期とします。

この場合、被保険者が60歳まで生きていれば、保険料は掛け捨てになり保険金はもらえません。

アクサの「収入保障」のがん保険の特徴

被保険者ががんにかかった際に保険金が毎月おりるものが、「収入保障」のがん保険になります。

初めてがんと診断されたときが保険金支払い開始となり、保険期間終了まで毎月保険金がおります。

アクサ生命の「収入保障」のがん保険は、保険期間と保障内容に応じて下記4タイプに分かれます。

年金支払期間ガン収入保障年金 または
死亡給付金
ガン収入保障年金または
遺族収入保障年金
5年I型III型
一定年齢(※)まで
※55歳・60歳・65歳・70歳のいずれか
II型IV型

以後、保障内容ごとに見ていきましょう。

アクサのガン収入保障年金とは

全てのタイプに共通して、保障の選択肢となっているガン収入保障年金が柱と言えます。

年金支払期間が5年のタイプ(I型とIII型)と、一定年齢で終了時期が決まっているタイプ(II型とIV型)があります。

後者のタイプでは、5年の最低保証期間がありますので、I型やIII型よりもらえる期間が短くなることはありません。

死亡一時金と死亡給付金

Ⅰ型・Ⅱ型では死亡した際に死亡一時金または死亡給付金を受取ることができます。

死亡一時金ががんと診断確定されてガン収入保障年金を受取っている期間に亡くなった場合に受取ることができるのに対して、死亡給付金はがんにかかることなく保険期間内に亡くなった場合に受取ることができます。

死亡一時金は、不幸にもガン収入保障年金を受取っている期間にがんで死亡した場合に、ガン収入保障年金のうちまだもらっていない分が支払われます。

死亡給付金は月額保険料×死亡までの経過月数ですので、保険期間内でガン以外の病気で死亡した場合は、保険料がそのまま戻ってくることになります。

死亡一時金、死亡給付金ともに年金形式ではなく、一括でまとめて保険金を受取る一時金形式でもらいます。

遺族収入保障年金とは

III型・IV型を選ぶと、保険期間内に被保険者がガン収入保障年金をもらわずに亡くなった場合、もしくはガン収入保障年金を受取っている途中に亡くなった場合に、遺族の方が遺族収入保障年金として毎月年金形式で死亡保険金がもらえるというものです。

もらえる年数はガン収入保障年金と同じ考え方になります。III型であれば、亡くなってから5年分もらえます。

IV型の場合は、例えば被保険者が亡くなったのが満40歳・保険期間満了が65歳の場合は、25年分もらえることになります。

「収入保障」のがん保険の保険料額

アクサ生命のWebサイトに記載されている保険料例で見ていきます。

25歳・男性のケースで型ごとに月額保険料を見ていくと、次の通りになります。

なお保障額は、年金支払い期間が5年間のI・III型は年金額120万円、年金支払い期間が60歳など一定年齢までであるII・IV型は年金額80万円です。

年金支払期間ガン収入保障年金
死亡給付金
ガン収入保障年金
遺族収入保障年金
5年I型 2,964円III型 3,756円
保険期間満了までII型 3,584円IV型 6,384円

保険料の高さは、I型<II型<III型<IV型となっています。

被保険者の死亡後に遺族が毎月保険金をもらうタイプ(III型・IV型)のほうが保障は厚くなるので、保険料がどうしても高くなります。

また一定年齢までガン収入保障年金がもらえるタイプ(II型・IV型)のほうが、もらえる期間が5年間と決められているタイプ(I型・III型)より保障が厚いため、保険料が高くなります。

なお、上記のようなガン収入保障年金・遺族収入保障年金・死亡給付金をもらえるようになった場合、払っていた保険料も免除されるようになります。

2.生活費・住居費などの支出を減らす

一方で支出を軽減したい場合はどのような方策があるのでしょうか?

ここでは住宅ローンを活用している方向けの軽減策になりますが、住宅ローンを契約する際の保険でがんに備えることもできます。

支出を減らすための保険は

2.生活費・住居費などの支出削減は、一見がん保険とは関係ないように見えます。しかし、がんと診断された際に住宅ロ―ンの支払が免除されるような保険に加入することが可能です。

住宅ローン返済のような住居費の支払は、家計においては比較的大きな支出と言える項目です。

がん等の病気にかかった場合には、医療費もかかるわけですから、他の支出が減るのは大変助かることです。

一般的な団体信用生命保険は死亡保障つき保険

住宅を購入する際に、民間銀行で住宅ローンを契約した場合、団体信用生命保険の加入を求められることが一般的です。

一般的な形の団体信用生命保険は、住宅ローンを返済中の被保険者の方が死亡した場合、ローンを貸している銀行側に保険金がおり、死亡した方の遺族には住宅ローンの返済義務が無くなります。

疾病保障付きの団体信用生命保険も普及

団体信用生命保険には死亡保障だけでなく、医療保険のような疾病保障をつけたものも登場しています。ただ病気の範囲をがんなどに絞ったものが一般的です。

また疾病保障のついた団体信用生命保険は住宅ローン契約者の死亡の場合と違って、ローンを全て免除するタイプの他、一部免除するか、もしくは医療保険と同様に給付金が出るものがあります。

もっともどのパターンであっても、所定の病気にかからず住宅ローン返済を続けていくよりは負担軽減にはなります。これは闘病中に医療費負担が重くなることを考えるとありがたいことです。

がん団体信用生命保険の例

がん保障に特化したがん団体信用生命保険を、楽天銀行の住宅ローンの例で見ていきます。がんと診断された場合は、ローン残額が全額免除となります。

ただし融資された日から90日間は免責期間となり、この間にがんと診断されてもローン残額は免除になりません。

保険料負担に関してですが、保険料という形で払うのではなく、ローン返済の際に支払う金利を0.3%分上乗せという形になります。

お金の使い方をふまえた保険選択を

通常の医療保険でも入院給付金や診断一時金がもらえますが、給与のように定期的に入金される方がよい方もいらっしゃいます。

住宅ローンの団体信用生命保険は、ローンで不動産購入していないと使えない手段ですので、住宅ローン契約者でない場合は、収入をサポートする保険による収入を確保する方法が選択肢となります。

住宅ローン契約者の場合はがん団体信用生命保険と収入をサポートする保険の両方を組み合わせる方法もありますが、住宅ローンと(収入をサポートする保険の)保険料の支払は家計を圧迫する恐れもあります。

この場合、収入をサポートする保険に関しては保障を絞った保険料の安いタイプの活用も考えましょう。

執筆者

石谷 彰彦
石谷 彰彦ファイナンシャルプランナー

保険代理店を兼ねる会計事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じファイナンシャル・プランナーの資格を取得。保険・年金・労務・税金関係を中心にライティングを行う。


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