医療保険に消極的な方でも、がん保険だけには入るといい理由

生命保険会社・損害保険会社そして少額短期保険業者の各社から様々な医療保険が販売されていますが、日本の健康保険制度が手厚いことから不必要と考えている方もいらっしゃいます。

ただ健康保険の適用が認められていない治療もあり、特にがん治療ではそのような治療も数多くあります。医療保険は不要と考えている方でも、がん保険に入る価値はあると見ています。

がんの治療費

がんの治療費は高額と言われるのは、保険適用の医療だけでなく保険適用外の医療のお世話になる可能性も高いからです。

保険適用の医療費は高額療養費制度で上限がある

保険適用の医療費は、多くの方々にとっては3割(年齢や所得によっては1割・2割の場合も)負担となります。

がん細胞を切り取る手術療法、抗がん剤治療や、手放射線療法のような治療でも保険適用の診療はあります。

保険適用の医療費に関しては、高額療養費制度により1カ月あたりの自己負担額に上限が設けられています。

所得や年齢に応じて上限額が変わりますが、保険適用の医療費は青天井にならないようには制度上なっています。

がん治療には保険適用外の自由診療も多い

一方医療費には公的保険が適用されない、自由診療もあります。

先ほど挙げた抗がん剤治療や放射線療法でも、保険が適用されないものが存在します。

また、免疫細胞の機能を向上させる免疫細胞療法の場合は自由診療がメインです。

このような自由診療の治療が存在するのは、特定の治療法に保険を適用するかは、厚生労働省が審査し承認してからになるからです。

先進医療と呼ばれる厚生労働大臣の定める高度な医療技術を用いた治療も保険外診療にあたります。

保険適用になるかは評価中であり、評価中の時点では自由診療にあたります。

いざ治療となった場合、高額な自由診療を選びたくなる可能性はあります。

がんのステージ(進行度)によっては転移・再発もありえ、完治するまで長い闘いになることもあります。

治療費を払いきれなくなる危険性を考えると、がんだけでも保険で備えることに意義があると考えられます。

がん保険と医療保険共通の保障

がん保険の保障には、医療保険と共通する保障と、がん保険独特の保障があります。まず共通する保障を見ていきます。

入院給付金

病気により入院した際には入院給付金が得られます。保険を契約する際には入院給付日額を決めますが、入院給付日額は5,000円もしくは10,000円にすることが一般的です。

なお加入してからの免責期間が(がん保険であれば例えば90日などと長いものも)設定されている保険もあり、免責期間内にがんになって入院しても給付金はもらえません。

通院給付金

通院治療の場合でももらえる通院給付金もあります。こちらも通院給付日額を5,000円や10,000円などと決めて保険契約します。

医療保険やがん保険の多くではオプションです。ただ損害保険会社の販売する傷害保険の多くと、後に例で挙げるアフラックのがん保険「ちゃんと応える医療保険EVER」ではオプションではない基本保障となっています。

手術給付金

手術した際におりる給付金です。1回の手術あたりでおりる金額で5万円、10万円などと決めます。

がんの際に特に有用な保障

がん治療以外の医療に対する保障でもありますが、がん治療において特に有用な保障を説明します。

放射線治療給付金

放射線治療の費用は数十万円しますが、それにそなえた特約です。1ヵ月~2ヵ月に1度もらえたり、1回の治療あたりもらえたりするものになります。

医療保険にも(例えばアフラックの「ちゃんと応える医療保険EVER」では1回5万円の)放射線治療特約がありますが、がん治療において有力な治療法のため、がん保険の主な特約の1つになっています。

先進医療給付金

放射線治療のうち、がん治療に用いられる重粒子線治療・陽子線治療も先進医療にあたりますが、これらの治療にかかる費用(技術料と呼ばれます)は200万円~400万円はかかるとされています。

アフラックの医療保険「ちゃんと応える医療保険EVER」・がん保険「新生きるためのがん保険Days」における先進医療特約では2,000万円を上限に、治療費の実額を補償するタイプの給付金です。

保険会社各社は、月数百円など先進医療特約保険料が割安なことを売りにしています。ただこれは先進医療を受ける機会が極めて少ないことの表れでもあります。

先進医療はがん治療に限ってはいないので、医療保険にも先進医療特約がついていますが、先進医療が高額なのはがん治療であり、がん治療においては先進医療給付金が大きく役立つと考えられます。

がん保険特有の保障

がん保険ならではの独特の保障もあります。

保険会社各社で様々な保障がありますが、代表的なものを紹介します。

がん診断給付金

がんと診断されただけで一時金として給付金がもらえます。

気をつけなければいけないのはがんが悪性新生物であればもらえるが、上皮内新生物であればもらえないという診断給付金もあるということです。

悪性新生物と上皮内新生物の違いをごく簡単に言えば、治療しても再発の恐れがあるのが悪性新生物、無いのが上皮内新生物ということです。

給付金額は50万円・100万円などと数十万円以上のプランが一般的です。

抗がん剤治療給付金

手術による治療でなく抗がん剤による治療も進んできています。入院治療だけでなく、最近では通院治療も進んできました。

月額10万円などと、月額ベースで給付金がおりるものが一般的です。

保障対象となる抗がん剤治療が限定されている保険もあるので、注意が必要です。

例えばソニー生命のがん保険では、保険適用の抗がん剤治療でないと給付金がおりません。

医療保険より割安でがんに対する保障が豊富

医療保険に入りたくない方でもがん保険に入ったほうがいい理由は、保険料の割安さにあります。

例えば、アフラックの医療保険「ちゃんと応える医療保険EVER」とがん保険「新生きるためのがん保険Days」で、保障や保険料を比較してみます。

入院/通勤給付日額5,000円とし、25歳の男性が契約したケースで考えます。

 医療保険がん保険
保険期間終身終身
入院給付日額5,000円5,000円
入院給付限度日数120日無制限
通院給付日額5,000円5,000円
手術給付金(重大手術)20万円10万円
手術給付金(入院中)5万円10万円
手術給付金(外来)2.5万円10万円
放射線治療給付金5万円10万円
抗がん剤治療給付金-5万円/2.5万円
がん診断給付金-10万円もしくは100万円
月額保険料1,909円1,679円

月額保険料はがん保険のほうがやや割安と言えます。それでいて保障はがん保険のほうが厚いと言えます。

例えば入院給付金の限度日数が医療保険では120日ですが、がん保険では無制限です。がんに特化している分、保険金を払う確率が低いので、手厚い保障でも保険料を抑えられるのです。

実費補償型がん保険は治療費無制限補償も

医療保険には入院給付金などを定額給付する保険の他、かかった治療費に対して実費補償する医療保険もあります。実費補償型保険は損害保険会社が販売していますが、医療保険だけでなくがん保険も販売しています。

実費補償型保険においても、がんに特化した保険は補償が手厚いと言えます。

例えばセコム損保のがん保険「メディコム」ですが、基本的にかかった入院治療費を無制限で補償します。SBI損保のがん保険も同様に無制限補償です。

セコム損保のがん保険「メディコム」で無制限としていることは、長期間の闘病で高額な治療費が心配になることを考えれば大変助かるものと言えます。ただし、通院治療だけは5年ごと1,000万円が補償額上限です。

またガン診断保険金は100万円が出ます。

なおAIU「スーパー上乗せ健保 ガン保険」のように、無制限でなく300万円の補償上限を設けている商品もあります。

がん保険に比べて医療保険の場合は、実費補償型保険とは言っても一般的に上限を設けています。

例えばCMで有名なソニー損保医療保険の「Zippi」では、治療費の補償額に1ヵ月20万円という上限を設けています。AIU「スーパー上乗せ健保」では、入院治療の補償について1回の入院につき100万円の限度額を設けています。

定期型なので年齢とともに保険料が高くなる

実費補償型保険は、医療保険でもがん保険でも一生涯保障の終身保険は無く、多くは5年更新の定期型です。

セコム損保「メディコム」の保険期間も5年です。メディコムでは、契約(更新)した年齢により下記の通り、保険料が上昇します。

「メディコム」保険料

  • 25歳男性:1,350円
  • 35歳男性:1,590円
  • 45歳男性:2,610円

精神的にも大きな負担がかかるからこそ

がん治療はステージにもよりますが、長期間の闘病で膨大な治療費を費やすことも予想されます。

がん保険は医療保険より保障範囲は狭まりますが、国民の2人に1人はがんにかかると言われています。

また有名人のがん闘病記などを見ても、壮絶と感じます。

がん保険は医療保険と同じ保険料でも、手厚い保障が受けられます。

日本には手厚い公的医療保障があると言っても、実際のがん治療では保険適用外の治療を受けることも十分考えられますから、がん保険だけでもかけておくのがよいと思われます。

執筆者

石谷 彰彦
石谷 彰彦ファイナンシャルプランナー

保険代理店を兼ねる会計事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じファイナンシャル・プランナーの資格を取得。保険・年金・労務・税金関係を中心にライティングを行う。


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