株の売買の仕組み!現物取引から信用取引まで詳しく解説
上場企業の株式は、その企業が上場している証券取引所(金融商品取引所)で行われます。
証券取引所の会員となっている証券会社は、投資家からの売買注文を証券取引所へと取り次ぐ役割を担い、証券取引所は、証券会社から入ってくる売買注文をルールにしたがって迅速に成立させていきます。
この一連の流れを称して、上場株式を自由に売買することができる株式市場と呼んでいます。
目次
株式の売買が成立するまでの流れ
始値、終値は「板寄せ方式」で決まる
世界三大金融市場のひとつに数えられる東京証券取引所での株式の売買は、月曜日から金曜日(祝日、正月三が日、大晦日は除く)の9時00分〜11時30分(前場)、昼休みを1時間挟んで12時30分〜15時00分(後場)の時間帯で行われています。
取引がはじまって最初に成立した売買の値段を始値、最後に成立した売買の値段を終値と言い、前場の始値と終値、後場の始値と終値については「板寄せ方式」によって株価が決まるルールとなっています。
板寄せ方式とは、株式の売り気配や買い気配が表示される「板」というものに全ての注文状況をまとめてから約定させていくため、このように呼ばれています。
「板寄せ方式」では、売値や買値を指定しない成行注文が優先されます。
また、約定する値段より高い値段の買い注文と、安い値段の売り注文については全て売買を成立させ、買い注文が多い場合には売り注文が残らないように、売り注文が多い場合には買い注文が残らないように売買を成立させるしくみになっています。
指値注文と成行注文
投資家から各証券会社が取り次いだ売買注文については、取引開始1時間前の8時から証券取引所で受け付けます。
買値または売値を指定する「指値注文」と、値段を指定しない「成行注文」とがあり、投資家は自由に選ぶことができます。
指値注文は、指値した値段で売買することができますが、たとえ1円であっても、買い指値が低過ぎて買えなかったり、売り指値が高過ぎて売れなかったり、売買のチャンスを逃してしまうことがあります。
一方、成行注文は、売り買いどちらであってもすぐに売買が成立するメリットがありますが、流動性が極端に低い場合には、想定外の高値での買い付けや安値での売り付けが成立してしまうリスクが伴います。
流動性に難のある銘柄は、最初から避けることが賢明ですが、買値及び売値を重視するなら指値注文、取引成立を優先させるなら成行注文と、上手に使い分けるようにしましょう。
「価格優先」「時間優先」のザラ場の取引
その日最初の売買が成立し、始値を付けたあと、株価は上昇と下落を繰り返しながら、15時00分の取引終了とともにその日の終値を付けます。
前場の高値、後場の安値など始値、終値以外の株価は、「ザラ場方式」によって決まります。
「ザラ場」とは、始値が決まる寄り付きと終値が決まる引けまでの時間帯で行われている取引の全てを指します。
一番高い値段の買い注文と一番安い値段の売り注文が優先される「価格優先の法則」がルールとなっていて、同じ値段で注文が複数ぶつかる場合は、先に出された注文が優先する「時間優先の法則」にしたがって、取引を成立させています。
現物取引と信用取引
実需と仮需
株式市場で売買できる株式は、証券取引所が定める基準をクリアし、所定の手続きを経て上場している上場株式となります。
株式市場に参加しているのは、生命保険、損害保険、投資信託、年金基金などの国内機関投資家と、最大の利益を得るためには手段を選ばないとされるヘッジファンドや外国の年金基金などの海外機関投資家、そして一般事業法人と個人投資家です。
各投資家がそれぞれの投資判断に基づいて行う株式の売買は、大きく実需と仮需に分けることができます。
株式取引では、買った株の代金を渡して株券を受け取ることを「実需」または「実需買い」と言い、信用取引で株を買うことを「仮需」言います。
実需の現物取引は、株価の値上がりや継続的な安定配当を期待し、中長期で保有することを前提に株式を購入するものです。
デイトレードに代表される仮需の信用取引では、取引が成立してから数時間後と言わず、数分後数秒後でも、株価の変動によってサヤ抜きるのであれば、そこで利益獲得を狙う取引です。
知っておきたい仮需の信用取引のしくみ
株式市場全体の売買高に占める個人投資家のウエイトは2〜3割となっています。
個人投資家の現物取引と信用取引の比率は3対7で、個人投資家の信用取引は市場全体の売買高の1割を占めていることになります。
仮需の信用取引は、買い建てには売り返済、売り建てには買い返済と、最大6ヶ月までの期間内に反対売買をしなければなりません。
値下がりを見込んで信用の売り建てが急増している場合は近い将来の買いエネルギーとなり、値上がりを見込んで信用の買い建てが急増している場合は近い将来の売りエネルギーとなります。
信用取引を利用しなくても、そのしくみを理解しておくことは、賢い投資家となるための第一歩となります。
現物取引の流れ
現物取引とは、株式や債券などの有価証券の取引で、その時々の市場の時価で計算した売買代金を受け渡す通常の取引のことを言います。
例えば、株式の現物取引では、持っている資金の範囲内でしか株式を購入することはできませんし、持っていない株式を売ることもできません。
株式を売買するためには、証券取引所に売買注文を取り次ぐ証券会社に取引口座を開設した上で、必要な投資資金を預けて入れておく必要があります。
用意した投資資金の範囲内で売買する現物取引には、購入してから売却するまでの保有期間に制限はありません。
現物取引での株式購入は、イコール上場企業の株主となることであり、配当金や株主優待の権利が与えられます。
決算期末日(権利確定日)の時点で株主となっていれば、配当金及び株主優待を受け取る対象となり、配当金は取引口座で受け取るか、郵送される配当金領収書を郵便局で配当金と引き換えるか、指定した金融機関で受け取ることも可能です。
ハイリスク・ハイリターンの信用取引
個人投資家に利用されている信用取引は、証券会社に現金または株券を担保(委託証拠金)として差し入れ、証券会社から担保の約3倍に相当する信用を供与され、6ヶ月以内に差金決済する取引です。
現物取引であれ信用取引であれ、株式の売買はリターンとリスクは表裏一体の関係があります。
信用取引を利用して過分なリターンを得ることもあれば、リスクが現実となった場合に、大きな損失を被ることになります。
対面式営業の大手証券では、預かり資金3,000万円以上のほか、年齢75歳以下で十分な投資経験があり、支店長が面談を通して投資知識を確認するなど、信用取引口座の開設希望者には、厳しい審査基準を設けているほどです。
ハードルは下がっても信用取引のハイリスクは変わらない
投資経験が浅く、わずかな預かり資産でも、ネット証券であれば信用取引口座を開設することができます。
その際、「信用取引の契約締結前交付書面」「信用取引に関する覚書」「信用取引口座設定約諾書」を閲覧し、その内容を理解した上で信用取引口座を開設することになりますが、信用取引口座を開設しても、預入金(現物買付余力)の範囲内で現物取引をすることは可能です。
現物取引では飽き足らず、保有する株式を担保に差し入れ、信用取引に手を出したばかりにハイリスクに直面し、株式市場から退場せざるを得なくなった個人投資家は、数え切れないほどいます。
信用取引のハードルは下がっても、信用取引のハイリスクは何ら変わらないことを肝に銘じておいてください。
信用取引の流れ
信用取引とは、取引している証券会社から資金や株券などを借りて取引をすることができるというものです。
信用取引を始めるには、現物取引の総合口座のほかに、信用取引口座の開設が必要となり、証券会社から信用枠を借りて取引を行うため、信用取引手数料、管理費のほかに、値上がりを見込む信用買いには金利、値下がりを見込む信用売りには貸株料、品貸料(逆日歩)などのコストが発生します。
また、現物取引で配当金や株主優待の権利が与えられる決算期末日(権利確定日)をまたいで、信用取引の買い建てを保有した場合、権利処理の諸費用が発生します。
2013年1月から委託証拠金の計算方法の変更とともに、信用取引のルールが変更されています。
信用取引で得た利益は、瞬時に委託証拠金に反映されることになり、同じ銘柄でも、別の銘柄に乗り換える場合でも、同じ委託証拠金を活用して、何度も売買することが可能となっています。
まとめ
株の売買の仕組みについて説明をしましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
証券会社から入ってくる売買注文は、証券取引所でルールしたがって迅速に成立されていきます。
株の取引には、その時々の市場の時価で計算した売買代金を受け渡す通常の取引である「現物取引」と、取引している証券会社から資金や株券などを借りて取引をすることができる「信用取引」があります。
ネット証券などの利用により、信用取引のハードルは下がっていますが、信用取引のハイリスクは何も変わらないので、肝に銘じておくことは大事です。
いかがでしたでしょうか。株の売買の仕組みについて説明してきましたが、理解ができましたでしょうか。ぜひ、投資の一助になれば幸いです。