年末調整で税金が戻ってくる!生命保険の確定申告で生命保険料控除を受けるには

「保険に加入すると税金で得をする」という話を聞いたことはありますか?

生命保険や医療保険に加入すると、その保険料に応じて所得控除が受けられ、所得税と住民税が安くなるんです。会社員の方は年末調整で還付され、自営業者などの方は確定申告のときに税額を減らすことができます。

この生命保険料控除のしくみについてのポイントを説明します。

確定申告で生命保険料控除を受ける方法

博士。生命保険などに加入していると税金がお得になるんですよね?
生命保険料控除のことじゃな。まずは、年末調整と確定申告の仕方について理解しておくとしよう。

生命保険料控除とは、所得税や住民税を計算するときに適用される「所得控除」の1つです。

1年間に支払った保険料の金額に応じて生命保険料控除額を所得から差し引くことができ、所得税や住民税が軽減されるものです。

ただ、その手続きは、会社員自営業者かで手順が異なります。

まずは、そこから説明しましょう。

会社員が生命保険料控除を受けるには?

会社員の場合、所得税と住民税は源泉徴収によって毎月の給与から差し引かれています。

生命保険料控除が受けられる場合、源泉徴収によって支払っている税金から還付されるため、年末調整での手続きが必要です。

12月分の給与を支払う際に年末調整を行うため、通常は10月か11月に勤務先から「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」というものが配布されます。

ここに加入している控除対象の保険を記入します。そして、裏面に添付書類として、保険会社から10月ごろから送付される「生命保険料控除証明書」を貼り付けます。

これで、生命保険料控除が適用された税額が計算され、12月分の給与では生命保険料控除による還付を受けることができます。

ただ、年末調整で12月分の手取り給与が減っている場合もあります。

この場合は、1年の途中で転職が原因で給与が大幅に変わったなど、特殊な原因で生じていることがほとんどです。

生命保険料控除が受けられなくて手取り給与が減ったのではないはずです。

もし、年末調整で生命保険料控除を申告し忘れた場合はどうなるのでしょうか。

そのときは、確定申告で税金を還付してもらうことができます。

次に説明する自営業者等の場合と同じ手続きになります。

自営業者等が生命保険料控除を受けるには?

自営業者には年末調整がないので、確定申告で生命保険料控除の手続きをすることになります。

確定申告ができる期間は、各年(1月~12月)の所得について、翌年の2月16日から3月15日(3月15日が土日の場合はその翌営業日まで)となっています。

旧契約の「生命保険料」と「個人年金保険料」、新契約の「生命保険料」・「個人年金保険料」・「介護医療保険料」のそれぞれについて保険料と控除額を計算します(計算式等は後述)。

それぞれの控除額を合計したものが生命保険料控除額となります。

各保険料は確定申告書A第二表の「生命保険料控除」欄に記入します。生命保険料控除額は確定申告書A第一表の「生命保険料控除」欄に記入します。

※国税庁ホームページ「平成27年分以降用の確定申告書用紙」

ただ、パソコンを使って、国税庁の確定申告書等作成コーナーで確定申告書を作成すれば、細かい計算をしなくても控除額を計算してくれます。

そして、保険会社から送付された「生命保険料控除証明書」を添付資料として一緒に提出しましょう。

なお、会社員の方が確定申告をする場合には、12月の給与明細とともに渡されている「源泉徴収票」の提出が必要となります。

確定申告で控除を受け忘れた場合は?

確定申告や年末調整で生命保険料控除を受けるのを忘れてしまった場合、還付申告をすることができます。

この場合は、過去5年分までさかのぼって申告可能です。

また、確定申告のように、「いつからいつまでに提出しなさい」と決められてはいません。

確定申告期間は税務署も混雑しているので、それ以外の時期を選んで行けば、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。

生命保険料控除の種類

確定申告の書類を見ていて思ったんですが、生命保険料控除にもいろいろあるんですね。
うむ。個人年金保険や介護医療保険も控除の対象になるんじゃ。

生命保険料控除には3種類あります。生命保険料控除・個人年金保険料控除・介護医療保険料控除の3つです。つまり、定期保険や終身保険だけが生命保険料控除の対象になっているのではないのです。それぞれ、どのような保険が対象になるのかを見てみましょう。

    生命保険料控除の対象となるもの: 定期保険・終身保険など
    個人年金保険料控除の対象となるもの: 個人年金保険
    介護医療保険料控除の対象となるもの: 医療保険・がん保険・介護保障保険など

上記のような保険が対象になるのですが、主契約と特約で別の保険料控除の対象になることがあります。

例えば、終身保険に入院給付金などが受けられる医療特約を付けている場合などです。

この場合では、終身保険の保険料に相当する部分が「生命保険料控除」、医療特約の保険料に相当する部分が「介護医療保険料控除」の対象となります。

それぞれの控除対象となる保険に支払った保険料がいくらになるのかは、生命保険料控除証明書に分類して記載されているので、確定申告や年末調整のときにはそれを転記するだけです。

なお、介護医療保険料控除は、平成24年以降に契約された「新契約」のものだけが対象になります。

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自分が保険契約者でなくても控除を受けることができるのか?

自分と自分以外の家族がそれぞれ保険に契約している場合もありますが、そのような場合、生命保険料控除はどうなるのでしょうか。

生命保険料控除の対象になるかは「誰が契約しているか」では判定されません。

「保険金等の受取人の全てをその保険料の払込みをする者又はその配偶者その他の親族とするもの」とされています。

つまり、この保険金受取人の条件を満たしていれば、納税者本人以外の家族が契約している保険は合算して控除を受けられるということになります。

生命保険料控除でいくら還付されるのか

生命保険でこんなに控除が受けられるなんて!どこか旅行にでも行こうかなー!
かんちがいしておるな。控除額と還付額は同じではないぞ!

生命保険料控除を受けることで、実際にどれくらい税金が還付されるのかを見てみましょう。まずは、具体的な控除額から説明します。

≪平成23年までに契約した旧契約の控除額≫

生命保険料控除個人年金保険料控除介護医療保険料控除合計
所得税最高50,000円最高50,000円最高100,000円
住民税最高35,000円最高35,000円最高70,000円

≪平成24年以降に契約した新契約の控除額≫

生命保険料控除個人年金保険料控除介護医療保険料控除合計
所得税最高40,000円最高40,000円最高40,000円最高120,000円
住民税最高28,000円最高28,000円最高28,000円最高70,000円


※新契約と旧契約の両方で控除を受ける場合、控除額のそれぞれ最高40,000円(所得税)・28,000円(住民税)となります。

控除額の計算方法

各控除額を求める計算式は次のようになっています。

≪旧契約≫

所得税住民税
年間支払保険料等控除額年間支払保険料等控除額
25,000円以下支払保険料等の全額15,000円以下支払保険料等の全額
25,000円超

50,000円以下

支払保険料等×1/2+12,500円15,000円超

40,000円以下

支払保険料等×1/2+7,500円
50,000円超

100,000円以下

支払保険料等×1/4+25,000円40,000円超

70,000円以下

支払保険料等×1/4+17,500円
100,000円超50,000円(上限)70,000円超35,000円(上限)

≪新契約≫

所得税住民税
年間支払保険料等控除額年間支払保険料等控除額
20,000円以下支払保険料等の全額12,000円以下支払保険料等の全額
20,000円超

40,000円以下

支払保険料等×1/2+10,000円12,000円超

32,000円以下

支払保険料等×1/2+6,000円
40,000円超

80,000円以下

支払保険料等×1/4+20,000円32,000円超

56,000円以下

支払保険料等×1/4+14,000円
80,000円超40,000円(上限)56,000円超28,000円(上限)

それぞれの年間支払保険料等の金額を該当する計算式に代入すれば、控除額を簡単に求めることができます。

実際の還付額はどれくらいなのか?

それでは、簡単な例を使って、実際にどれくらいの税金が還付されるのかを計算してみましょう。

(例)

支払保険料等の額生命保険料個人年金保険料介護医療保険料
旧契約20,000円
新契約60,000円30,000円48,000円

保険料の支払額がこのようになっていた場合、それぞれの計算式に当てはめると、次のようになります。

所得税の控除額生命保険料控除個人年金保険料控除介護医療保険料控除
旧契約20,000円
新契約35,000円25,000円32,000円
小計40,000円(上限)25,000円32,000円
合計額97,000円

住民税の控除額生命保険料控除個人年金保険料控除介護医療保険料控除
旧契約17,500円
新契約28,000円(上限)21,000円26,000円
小計28,000円(上限)21,000円26,000円
合計額75,000円

所得税の控除額が97,000円、住民税の控除額が75,000円となりました。

この控除額が所得から差し引かれ、そこに税金がかかることになります。

例えば、所得税・住民税ともに課税所得にかかる税率が10%であれば、所得税額で9,700円、住民税額で7,500円の合計17,200円が還付されることになります。

ただし、所得税の税率がいくらになるかによって、還付額が変わります。

できるだけ多く還付が受けられるようにするには?

還付を受けられるなら、できるだけ多くの還付を受けられるようにしたいところです。そこで、前述の「家族が加入している保険」を活用した方法をお教えします。

正社員とパートなどのように夫婦で収入額に差があると、所得税率にも差があるかもしれません。

その場合は、税率が高い方(所得金額が大きい方)でまとめて生命保険料控除を受けるようにしましょう。

税率が高い分だけ、還付額も大きくなります。

ただし、その場合には、本当に還付額が多くなるのかをきちんと計算してからにしてください。2人分の保険料を合計した結果、控除の上限に達してしまって還付が増えないという場合もあります。

まとめ

  • 会社員は年末調整で還付が受けられる
  • 自営業者は確定申告で還付が受けられる
  • 確定申告し忘れていても、還付申告をすることができる
  • 家族の保険料をまとめて申告すれば、還付額が増えることも
計算がややこしいですけど、お金が返ってくるならがんばれそうです!
還付制度を活用して、払いすぎている税金をちゃんと返してもらうんじゃぞ。

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