重複保障に注意!意外に広い災害特約(医療保険)の保障範囲

過去医療保険を契約していて、ふと保険証券を見ていると気がつかないうちについている特約も多いものです。自分にもそういう経験はあります。

災害特約(災害疾病特約・災害入院特約など)は広く日常の不慮の事故に備えた特約として価値はありますが、似たような保障(補償)の保険とすでに契約していないかは点検してみる価値があります。

災害疾病特約の特徴

災害疾病特約のカバーするものは、交通事故や転倒などこれから例を挙げながら説明しますが、実に身近なものも含まれます。

災害の範囲は「不慮の事故」

災害と聞くと震災などの自然災害をイメージしますし、災害医療という言葉もあり、災害医療体制のもとで受けた診療が対象の特約にも思えます。

しかし、災害疾病特約や災害入院特約の災害とはそれだけではありません。

日常生活における不慮の事故・ケガによるものは、全て対象となります。

ところで、この「不慮の事故」とはどのようなものでしょうか?急激・偶発的・外来性の3要件を満たすものになります。

    急激:不可避で事故からすぐ治療が必要な状態になった状況
    偶発的:あらかじめ予測できないもの
    外来性:負傷がもともと持っていた体質によらないこと

なお、建設作業員・アスリートなどケガの多い職業についていると、災害特約をつけられない可能性もあります。

不慮の事故にあてはまるもの・あてはまらないもの

交通事故の被害:
急激・偶発的・外来性3要件を満たしますので、一般的には不慮の事故にあてはまります。

ただし持病の発作で事故が起きた場合などは、外来性要件を満たしませんのであてはまりません。

飲酒運転による事故:
飲酒して事故を起こすのは偶発的とは言えないので、不慮の事故にあてはまりません。

転倒:
これも一般的には不慮の事故にあてはまります。

自傷・自殺:
自分で傷つけることを計画していて偶発的とは言えないので、不慮の事故にあてはまりません。

喧嘩:
ケガが予想される行為ですので、不慮の事故にはあてはまりません。

普段から泳げなくて溺水する:
これは自分の能力により起きたことで外来性の要件にあてはまらないので、不慮の事故にはあてはまりません。

地震の場合は原則対象外ですが

災害特約という名前とは裏腹に、震災や戦争のような大規模な天変地異の場合、保険金は支払われないものと、多くの保険会社は契約約款で規定しています。

これは多くの支払対象者が現れるため、保険会社の財務状況が大きく悪化し倒産リスクが出てくるからです。

ただし、人道的観点から例外的に支払いを行う場合もあります。東日本大震災の場合は、災害特約の給付金に関しては多くの保険会社は支払いました。

保障のつけ方は通常の疾病保障に上乗せ

通常の疾病保障は、不慮の事故・ケガによることを問いません。疾病入院給付金であれば、いわゆる病気で入院した際には支払われます。

災害特約付きの医療保険では、疾病入院給付金を日額5,000円、災害入院給付金を日額5,000円というように決めます。

不慮の事故で入院した場合は、両方合わせて日額10,000円もらえます。

災害特約の保険料は比較的安く、一例をあげれば通常の疾病保障が年19,000円であれば、災害特約は年3,500円程度です。

気づかずについているなら外すことも検討を

災害特約つき医療保険に加入するのは、医療保険・傷害保険の両方を契約するのに近い状況です。

不慮の事故に備えた保険には、いわゆる傷害保険以外にも、例えば自動車保険には人身傷害保険・搭乗者傷害保険といったものがあります。

これらの保険は、契約者以外にも契約者の親族も補償対象(被保険者)になっていることもあります(詳細は後述します)。

自分もしくは親族がそのような保険を契約しているなら、災害特約が本当に必要か検討する必要があります。

災害特約と保障(補償)範囲が重複する傷害保険

ここでは、災害特約と保障(補償)範囲が重複すると思われる傷害保険その他について、どのような保障(補償)がされるのかを具体的に見ていきたいと思います。

傷害保険は不慮の事故に備える保険

傷害保険は、保険金がもらえる要件は災害特約と同じで、不慮の事故に遭ったということになります。

その結果として死亡した際にも、基本的には保険金はおります。

また傷害保険の金額は、医療保険の災害特約と同様に定額で給付されます。

死亡保険金や後遺傷害保険金は1回あたりの金額を決めますが、入院給付金や通院給付金は医療保険と似たような形で日額を決めます。

いわば不慮の事故に特化した医療保険が、傷害保険です。

保障(補償)範囲が限定されているので、役に立たないのではないかという見方は強いです。

ただ医療保険の場合、健康状態によっては加入できなかったり、保険料が引き上げられたりします。

また年齢・性別ごとに保険料設定がされており、通院給付の保障が必ずしもされるわけではないという欠点もあります。

傷害保険は健康状態・年齢・性別差がなく、通院給付型も多い点が医療保険にないメリットとなります。

どちらかというと、前述の建設作業員やアスリートなどケガの多い職業についていた場合に、保険料が高くなる傾向にはあります。

自動車保険や自転車保険も不慮の事故に備える保険

最近では自転車の運転にも保険をという風潮になり、自転車保険も普及しています。

例えばAU損保の自転車保険「Bycle」がありますが、これは交通事故(自動車その他の車両乗車事故・駅構内の事故や、車両火災も含む)に備えた傷害保険です。

「Bycle Best」になると補償範囲が広くなり、いわゆる傷害保険に近くなります。

なお、両者とも賠償責任に備えた個人賠償責任特約もつけられます。

自動車保険・海外旅行保険なども傷害保険の機能を持ちます。

自動車保険の傷害補償は幅広く、人身傷害保険・搭乗者傷害保険・無保険車傷害保険といった様々なタイプの傷害保険がつきます。

この3つの保険は補償の仕方が異なっており、人身傷害保険・無保険車傷害保険は実際の損害額分だけ(上限はありますが)おりる実損補償型の保険です。

人身傷害保険

人身傷害保険は、交通事故の過失割合に関わらず、治療費・休業補償・慰謝料分だけ保険金が支払われるというものです。契約した際の被保険者の他、配偶者や同居親族も対象になります。

無保険車傷害保険

無保険車傷害保険は、交通事故の相手車両が対人賠償保険に加入しておらず、十分な損害賠償を受けられなかった場合に、契約した車に搭乗していた人に治療費・休業補償・慰謝料分だけ保険金が支払われるというものです。ただし、後遺障害が残るか死亡した場合にのみおります。

搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険は定額給付型の保険で、人身傷害保険・無保険車傷害保険といっしょにもらうこともできます。

搭乗者傷害保険は、交通事故が起きた際に、契約した車に搭乗していた全員に定額の保険金がおりるというものです。

災害特約と自転車保険・自動車保険は一見関係ないように見えるけど、補償内容は重複しているところもあります。

医療保険の災害特約は定額給付型なので、これらの傷害保険とともにもらうことができますが、実損補償型の保険で間に合うのであれば不要ではないでしょうか?

思わぬところで保障(補償)は重複…確認を

災害特約の他、似たような保障(補償)の保険を紹介してまいりましたが、災害特約という名前から想像がつかない保険の保障(補償)が重複しています。

特に自動車保険の場合で損害額補償の保険(特約)がついている場合は、それだけで足りるのでは?と思うようなこともあります。

人身傷害保険や無保険車傷害保険がある場合には搭乗者傷害保険は不要、という意見もありますが、医療保険の災害特約も似たような定額給付型保障であるため、搭乗者傷害保険だけでなく災害特約も見直しの余地があります。

災害特約の保障内容自体は一概に否定できませんが、保障(補償)の重複は見直しの対象とすべきです。

自分の加入している保険は、生命保険・損害保険を問わず広く保障(補償)内容を確認してみるとよいでしょう。

執筆者

石谷 彰彦
石谷 彰彦ファイナンシャルプランナー

保険代理店を兼ねる会計事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じファイナンシャル・プランナーの資格を取得。保険・年金・労務・税金関係を中心にライティングを行う。


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