一時金でも受け取れる?収入保障保険の保険金受取方法と税金について
万が一のことがあった場合、遺された家族の生活費として毎月保険金を受け取ることができるのが「収入保障保険」です。
死亡時に一括で保険金が支払われる定期保険と比べるとあまりなじみがないかもしれませんが、収入保障保険には保険金の受け取り方を後から変更することができるというメリットがあります。
今回は、収入保障保険の受取方法と、それに関する税金についてお話しします。
収入保障保険の保険金受取方法は?
収入保障保険は、被保険者が死亡・高度障害で保険金を受け取ることになった場合に保険金を受け取ることができます。
収入保障保険は本来、その名の通り「収入を保障する」ことを想定して作られており、毎月決まった額の給付を受けることができます。
そのため、団体信用生命保険の代わりに、住宅ローンの返済に備えて加入する人もいます。
ただ、収入保障保険は、保険金を受け取るときの遺族の状況を考慮して、保険金の受取方法を変更することができるようになっています。
その受け取り方は、「年金形式」、「全額一括」、「一部一括」の3種類に大きく分けることができます。
受け取り方は「年金方式」「全額一括」「一部一括」の3種類
収入保障保険の通常の受取方法は、「年金形式」です。
保険契約するときに決めた月払給付額・受取期間に応じて、毎月、保険金が支払われます。
「全額一括」は、被保険者が死亡した場合などに、保険金を一時金として一括で受け取る方法です。
「一部一括」は、年金形式と一括受取を混ぜたもので、「最初に一部を一時金で受け取り、残りを分割で受け取る」、「年金形式で受け取っていて、途中で残りの分を一括で受け取る」といった方法があります。
それぞれのメリット・デメリットを簡単にまとめました。
受取方法 | メリット | デメリット・注意点 |
年金形式 | ・当初の契約通りの保険金を受け取ることができる | |
全額一括 | ・定期保険のように、保険金を一括で受け取ることができる ・大学の学費など、一時的に出費が大きくなるタイミングなどに活用できる | ・受け取ることができる金額が年金形式より少なくなる |
一部一括 | ・途中で残りの保険金を一括で受け取ることができる ・一時的に出費が大きくなるタイミングなどに活用できる | ・一時金で受け取る部分については年金形式で受取るより金額が少なくなる ・一時金で受け取ることができるルールは、保険会社ごとに異なるため、注意が必要 |
保険は、保険金を支払うまでの間に資産運用をしています。
そのため、一時金として予定(年金形式の場合)よりも早く保険金を受け取る場合には、その期間に応じて運用で増える予定だった分を差し引かれます。
[macth url=”https://www.money-book.jp/8014″]
受け取り方法で異なる保険金にかかる税金について
収入保障保険を受け取るときにかかる税金の仕組みは、やや複雑です。
詳細までは理解できなくても構いませんが、おおまかな仕組みだけでも理解しておいてください。
契約者・被保険者・保険金受取人の組み合わせと、保険金の受取を「年金形式で受け取る」か「一括で受け取る」かで変わります。
パターン | 契約者 | 被保険者 | 保険金 受取人 | 年金形式で受け取り | 一括受け取り |
① | A | A | B | 1年目:相続税 2年目以降:所得税(雑所得) | 相続税 |
② | A | B | A | 所得税(雑所得) | 所得税(一時所得) |
③ | A | B | C | 贈与税(1年目とそれ以降に分けて課税される) | 贈与税 |
一括受取の場合にかかる税金
一括受け取りの場合は、通常の生命保険と同じ税金がかかります。
パターン①契約者と被保険者が同じであり、保険金受取人が違う人である場合
契約者と被保険者が同じ場合は、Aさんの死亡によってBさんが保険金を受け取るため、相続税となります。
パターン②契約者と受取人が同じであり、被保険者が違う人である場合
契約者と保険金受取人が同じ場合は、受け取る保険金の元になる保険料をAさん自身が支払っているため、所得税がかかります。なお、一括で受け取る場合は「一時所得」という扱いになります。
パターン③契約者、被保険者、受取人が全部違う人である場合
契約者・被保険者・保険金受取人がバラバラの場合は、贈与税の対象となります.
①②と比べると非常に高額の税金がかかるので、このタイプの契約は避けるべきです。
年金方式で受取る場合にかかる税金
パターン①契約者と被保険者が同じであり、保険金受取人が違う人である場合
保険金受給1年目に「保険金を一時金として一括で全額受け取ったと仮定した場合」の相続税が課税されます。
2年目以降は「保険金を一括で受取った場合よりも多くなる部分」について一定のルールで所得税が課税されます。
パターン②の契約者と受取人が同じであり、被保険者が違う人である
公的年金を受け取る場合と同じ雑所得扱いとなり、所得税が課税されます。
パターン③契約者、被保険者、受取人が全部違う人である場合
保険金受給1年目に「保険金を一時金として一括で全額受け取ったと仮定した場合」の贈与税が課税されます。
2年目以降は「保険金を一括で受取った場合よりも多くなる部分」について一定のルールで贈与税が課税されます。
詳しい計算方法は非常に難しいので、仕組みだけの理解で充分でしょう(※)。
なお、2年目以降の課税額は、階段状に増加していく仕組みになっています。
イメージとしては、前半は20万円より小さい金額に対して、後半はそれより大きい金額、という課税金額になります。
※詳しい計算方法は、国税庁のホームページに掲載されています。
相続税がかかるパターンではどのように税金がかかるのか
では、収入保障保険に加入するパターンで最も多い①で、どのように税金がかかるかを少し具体的に説明します。
次の例で、保険金を年金形式で受け取る場合の税金の計算方法です。
「月額10万円を20年間」受け取れるとします。
年金形式で受取った場合の受取総額では2,400万円ですが、一時金形式として一括で受け取ると2,000万円になるとします。
1年目(年金受け取り開始時)の税金
まず、1年目は「一括で受け取った場合の金額」が相続税の課税対象となります。
つまり、相続財産として2,000万円加算されます。
金額としては大きいですが、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を控除した分だけが課税対象額になるうえ、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引かれるので、税金の負担は小さくなります。
※法定相続人が妻と子の2人だった場合
生命保険の非課税枠 500万円×2=1000万円
相続税の基礎控除 3000万円+600万円×2=4200万円
被相続人がそれなりに大きな資産を保有していたのでなければ、相続税がかからないケースの方が多いでしょう。
2年目以降の税金
2年目以降は、一括で受け取るよりも増える部分、つまり400万円(2,400万円-2,000万円)に対して受取期間にわたって所得税(雑所得)が課税されます。
その課税対象の金額が毎年少しずつ増えていき、2年目から20年目までの課税対象金額の合計が400万円になります。
具体的な課税対象額は複雑で、20年間の課税対象総額は400万円ですが、単純に400万円を20年間で均等に割るということではありません。
受け取る保険金の内、課税部分の割合が徐々に増えるように変わっていくのです。
とはいうものの、毎年受け取る120万円(10万円×12か月)にかかる所得税はほんの少しだけになります。
実は、2010年7月よりも前は税制が異なっており、二重課税されていました。
相続時に2,400万円が課税対象となり、翌年以降受け取る120万円全体にも所得税がかかっていました。
現在は、この問題は解消されているため、収入保障保険はとても使い勝手のある保険になっているのです。
まとめ
- 収入保障保険には、さまざまな受け取り方がある。
- 年金形式で受け取るとき、はじめに相続税がかかり、その後に少しずつ所得税がかかる。
- 二重課税は解消されているので、使い勝手が上がっている。